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終わらない一日

「離れるって...この案件から手を引くって事か?」


真っ先に尋ねたのは速水だった。


「言葉足らずだったわね。私は外部の者に援助を申し込みに行くのよ。」


「決して放り投げだす訳じゃない。」


「援助って誰に?」


「私達を呼びつけた国王によ。」


「確かに...リディニアは王国の物だし、援助を申し込めば応じてくれそうだけど。」


「以前の恩恵、”恋の病”の最も恐ろしい所は意図せずとも無差別かつ広範囲に発揮する、という点よ。」


「時間と共に広がるそれは、本当に”病”そのものだわ。」


「最初は数十cmのパーソナルエリアに似たそれは、次第に許容範囲を伸ばしていき。」


「ついには都市一つを丸飲みしたわ。」


「そして、さらに恐ろしいのは都市一つ、という概算ですら役に立たないかもしれない、という点。」


「ここから離れた王城ですら、その毒牙にかかっている可能性があった。」


「でも今は...幸か不幸か恩恵は変化し、感染は止まった。」


「であれば、十全の状態で交渉に望む事が出来るわ。」


「王国は、持っている情報だとあの塔を物理的に破壊出来る兵器を保有しているのよ。」


「あの塔を破壊って...あそこの人間が大勢死ぬ事になるぞ...。」


それだけで収まるだろうか。

建築物、というスケールした超越しつつあるバベルの塔。


崩壊すれば、リディニアという都市の地形が変わるのではないだろうか。


「ええ、わかっているわ。だから、これは打つ手が無くなった際のの最後の策よ。」


「最後の策...。そうなってしまった時の為に、ビーチュさんはここを離れるんですね。」


「そういうこと。一番はその手を使わない事だけどね。」


「あ、そうだ。月宮さん、先ほどの恩恵の話に戻るけど。」


「前提条件は全盲である事なのだけかしら?」


「これは、推測が多分に入っちゃうけど...”恋の病”に嵌まっていたって条件も添えるべきだと思う。」


「なるほど...正解のようね。」


「え?正解って...え?」


「私の恩恵で調べたのよ。気にしないで。」


「今のエレナの恩恵は、かつての自身の恩恵にかかっていて、かつ全盲である者を支配する効果ね。」


「”恋の病”の長所であった無差別性を取り除いて、支配を磐石にしたって感じね。」


「何か腑に落ちない顔をしてますね?」


咲の顔を覗き込むと、リンネはそう言った。


「今のを聞いて思ったのだけど。」


「”恋の病”、と現在の恩恵”隻眼の王”って、互いの長所と短所を入れ換えた互換物だなって。」


「いや、むしろ”恋の病”の方が強力だったまであるわ。」


「治せるって弱点はあるけど、恒久的なものでないし...私みたいに効かないって体質も勘定に入れるほど大きな数じゃない。」


「目が見えない者っていう条件...これって、元の数が限定されるし、増やすにしても視力を奪いでもしないと無意味よ。」


「エレナに視界を奪われても尚信奉するって、狂信者と呼ばれてもおかしくないわ。ある意味信仰の度合いは増加するけど。」


「選別やふるい落し...それらを経た結果、支配が強くなったのか、支配が強いから全盲しか残らないのか、それはわからない。」


「でも、所詮は人間よ。支配が強いから、例え命を捨てる命令を受け入れたとしても転移者(速水俊一)には勝てない。」


「それでも、今の恩恵(”隻眼の王”)で確実に出来ない事がかつての恩恵(”恋の病”)ではあと一歩まで差し迫った。」


「エレナがビーチュを餌にした目的は速水の無力化だった、彼女だって”不屈の男”の脅威はわかっていたはず。」


「そうね、言われてみれば...”隻眼の王”は条件も対象も効果も弱体化しているわ。」


「...話によると、エレナは速水の無力化を失敗、月宮さんに恩恵を看破されて追い詰められた所で、恩恵を鞍替えしたのよね?」


「無力化と言っても、恐らく”恋の病”で速水俊一を掌握することが目的だったんでしょう。」


「じゃあ、あのタイミングで鞍替えしたのは脅威を知っていながら、掌握する事を諦めたって言うことになるわ。」


「掌握ではない、別の無力化への道に切り替えたって事?」


「現状の情報だと”隻眼の王”じゃ、物理的に無力化するしか無いわ。それだと月宮さんのいう通り、俊一に信者の歯が立つ訳ないから無謀ね。」


ビーチュによるこの発言によって、四人の考えは一致した。


「”隻眼の王”で終わりじゃない。もう一度恩恵が変化する可能性がある。」


「もしかするとあまり時間は無いのかも。」


「今エレナは狂信者という障壁だけを当てにした状態よ。近づいても殴れば壊せる。」


「でも、再び恩恵が変わった後に近付けるという保証は無いわ。」


「今なら...まだ間に合う。流石に一日に二回も襲われるとは思わないでしょ...。」


「マルテの剣だってある。例えまだ知らない効果が”隻眼の王”にあっても、この近くに入る限りは安全よ。」




「フェティマ教を潰すのは、今なのかもしれないな。」














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