魔法使いのパーティー
魔法使い社会の合コンパーティーです。
一瞬で、パーティー会場に着いた。長尾は唖然としている。
「大丈夫。時間も遡ったから、誰も、気付いてない。ずっと、ここにいたって思わるはずや」
我に返った長尾が、笑いながら言った。
「じゃあ、腹ごしらえでもしますか?何か食べるものを取って来ましょう」
「悪いけど、側にいてくれへん?」
「?」
「今日は、周りの悪口がすごいんや。あなたといると、緑池にいるみたいで安心するから」
「私で良ければ」長尾がふわりと笑って言った。「思っていたより、ずっと素敵な方だった。会いに来て良かった」
パーティーは、立食式になっていた。
二人並んで食べ物を置いてあるテーブルへ進むと、周りの人々が目を見張った。私が小西や中島以外の魔法使いと一緒なのを見たことがないのだ。
長尾が食べ物を取り分けて私の皿に入れてくれた。周囲の視線に息苦しさを感じながら、私達たちは窓際に進んだ。
明らかに、魔女達は小西が私じゃなく静香を選んだことに快哉を上げている。
パーフェクトか何だか知らないけど、後から来てあの二人と仲良くなっちゃって図々しいったらありゃしない。いい気味だわ。と、心の中で大喜びするのが分かった。
中島は、静香一筋だから、私なんか相手にしない。私が中島に寄りつかないなら、今がチャンスだ。と、しきりに中島に色目を使っていた。
魔法使いの男達は、小西も中島も私の相手じゃないのが分かったのだ。さりげなく、こっちに近づいて来る。
魔女達の悪意と魔法使いの下心が読めるのだ。惨めで、苦しかった。
私は、頭を振って、全ての思惑を無視することにした。座右の銘は『マイペース』だ。
「会いに来て良かったって、あなた、どっかから来たん?」
「ええ。遠いところから参りました。あなたに助けが必要なとき、あなたの側にいられるように」
「予知能力があるん?」
「いいえ。そんな力はありません。知っている者から聞いただけです」
ふいに腕を掴まれた。
きっかり二秒後、電流が流れて火花が散った。
もう少し間髪を入れずに電流が流れる方がいいかもしれない。電圧も、もう少し上げた方がいい。 設定を変えよう。設定方法は……っと。
壮絶な殺気を感じて振り返ると、小西が睨んでいた。彼のおかげで貴重な実験データが取れたのだ。ありがとう。と、言っておこう。
小西は電気ショックを受けた手をさすりながら文句を言った。
「ったた……お前、まだ、あの魔法解除してないのか?さっさと解除しろ!危なくて、手も掴めない」
「別にいいやない。触んなきゃいいんやから」
「あのな。お前にちょっとでも触ったら、ビリビリって来るんだぞ。こっちの身になってみろ」
「あんたが彼氏なら相談に乗る。でも、あんたは彼氏でも何でもないんやから、触らんよう気ぃ付けてくれたらいいんや」
小西が顔を歪めて言い募った。
「お前、俺に喧嘩売ってるのか?」
「ううん。事実言うてるだけ」
小西は、面白くなさそうにため息をついて、話題を変えた。
「綾乃、お前、この男前のお兄さんと良い感じで、何やってるんだ?」
「何って?ご飯食べてる」
小西は、何怒ってるんだろう?
確かに、電気ショックは痛かったかも知れない。でも、これは、私の計画の中で重要な役割を担っているのだ。このシステムを強化させることが、今の私の最重要課題だ。
「あのな。お前の担当は、薫だ。見ろ、お前が放ったらかしにしたせいで、あいつ、女の子に無茶苦茶されてる」
「なんで、そんな理屈になるん?」
何で、私が怒られなくちゃならないんだ?つくづく、無茶な男だ。
「俺とシズ、お前が薫と一緒になると、上手く行くんだ。分かるだろう?」
分かるわけないだろうが。馬鹿!
「私は、あんた達に言うたはずや。どっちも選ばんって」
「薫が可哀想だろ?」
「何で?」
「あいつ、お前が好きなんだ」
「でも、カは、シズが一番好きなんや。可哀想やて言うなら、あんたのせいや。私のせいやない」
小西がものすごい形相で睨み付けて叫んだ。
「だいたい、こんな初歩的な魔法しか使えないヤツなんか相手にするんじゃない!お前はパーフェクトだ!」
「放っといてんか!あんたには関係ない。私の話や。ト。あんた、佐藤さんみたいなこと言うんやね。だったら、私も言わせてもらう」
負けずに睨み返して叫んだ。
「高々四色の魔法使い風情が、偉そうに指図するんじゃねえ!私は七色や!」
絶句した小西にピシャリと言い放った。
「不愉快や。帰る!」
長尾に向かって手を差し伸べた。
「長尾くん。行こ」
長尾がおずおずと手を伸ばす。その手を掴んで、そのまま緑池へテレポテーションした。
小西の馬鹿さ加減に対し、長尾が紳士で素敵です。