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吉岡綾乃は最強の魔法をかけた  作者: 椿 雅香
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静香の決断

静香が動き出します。

Ⅲ 静香の決断

 

 静香が、わざわざ小西を寄こしてくれたのだ。いい加減、サボってばかりもいられない。久しぶりにパーティーに出掛けた。

 今日の集まりは、下宿して大学や専門学校へ行っている若者が夏休みに帰省するのを見込んで、高校生や地域で就職した者も集めて同窓会をするという名目だった。

 温泉旅館の大広間を借り切って、一大パーティーといおうか、大規模な合コンといおうか、魔法使いの長老達は馬鹿馬鹿しいことを考えるものだ。

 以前は、魔法のクラスでパートナーを選ぶように、と言われていた。学校で相手を見つけられない者にこんな合コンまがいの同窓会を企画してくっつけようとするのだ。魔法使いの人口が先細りになっているので、長老達も必死なのだ。

 前に、静香が長老と直接話をした時、昔は、お見合いもしないで、「この人と結婚しなさい」と言うと、黙って結婚したものなのに、近頃の若者は、やれ、波長が合わない、趣味が合わない、顔が気に入らない、と、うるさくてかなわん、と、ぼやいていたそうだ。


 会場に着くと、みんなの態度がおかしかった。何となく、私を馬鹿にしたような感じで、同情するような目つきで見るのだ。気の合わない連中に至っては、いい気味だと言わんばかりの目つきだ。私の知らないところで、何かがあった。と直感した。

 手近な人の心を読んで、愕然とした。

 静香がついに結論を出して、小西を選んだのだ。昨日の晩、小西親子が静香の家に呼ばれて、正式な申込みがあったらしい。

 静香を巡っての中島と小西の争いは、魔法使い社会では結構有名だった。長老は、能力の高い者同士の結婚を奨励していて、若い世代では最優秀の個体である静香に、男としては最優秀の中島や小西と結婚して欲しいとの思惑だったのだ。

 魔女として優秀であるばかりでなく、滅多にない美女である静香が、どっちを選ぶか、魔法使い社会ではワイドショーばりに興味津々で見られていた。

 下馬評では、中島じゃないかという説が多かった。彼は、容姿端麗、信じられないような男前だ。しかも、絵に描いたような真面目な優等生なのだ。静香さま一筋だと専らの評判だが、私のことも気遣ってくれる優しさもある得難い人だ。

 小西は中島の従兄弟で、容貌やスタイルなんかはよく似ている。でも、藍の力のせいだろう。いつも、皮肉っぽい笑いを浮かべていて、ちょっと不良っぽい感じがする。

 だが、私が、松村という少女に緑の魔力を授けて大問題になった時、トラブルを恐れた先生が彼女を別のクラスに転校させた。そのとき、さりげなく支えてくれたのは、小西だった。先生の指示で私が龍のタツヤと別れた後、タツヤを四百三十年前の緑池に連れて行ってくれたし、その後の様子を見に行ってくれたりもした。結構優しいところもあったのだ。


 何となく静香が中島を選ぶと思っていた私には、ちょっと意外だった。

 小西は、半ば静香を諦めかけていて、私とデートしている時も、静香のことを考える時間が減っていた。最近、少しずつ心のガードを外してくれるようになっていて、あいつが静香のことを諦められるなら、選んでも良いかも知れない、と思ったりした。

 静香の決断で、三人の力関係が大きく動いた。

 まるで、危うい三角形の周りを回る惑星のように、私は自分の無力を感じた。私の安定は、この三角形に係っていたのだ。この三角形が崩壊すると、私は糸の切れた凧だ。一体、どこへ行くのだろう。

 会場には、集団が二つ。

 一つは、静香と小西を真ん中にして、二人を祝福する人々の群れ。静香と小西が腕を絡ませて、幸せそうに輝いている。

 もう一つは、静香が小西を選んだことであぶれてしまった中島を中心とする魔女の集団。しきりに中島に秋波を送り、関心を惹こうとしていた。

 どちらの集団も、あまりにも私とかけ離れていて、足がすくんだ。

 こんな時、以前だったら、小西が気遣ってくれた。でも、静香が小西を選んだのだ。もう、彼を頼れない。

 だいたい、今まで、他人に助けてもらうことしか考えて来なかった自分が悪いのだ。ゆっくり深呼吸して、会場を抜け出した。


三角関係の側にいる綾乃は、とことん迷惑します。

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