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未来の色  作者: 月光の詩
7/11

未来の視点:0日目:遅刻

「おはよう」

 私は、先程の失態を隠すよう、明るく振舞い満面の笑みで挨拶をする。が、

「よっ! お前今、扉にめり込んだだろ?」

 目の前に現れた少年は、私の失態を暴露した。

 クラスにいた全員の視線が私に集まった気がする。

 ……耕一君。なんで?

 なんで知ってるの? なんで言っちゃうの? しかも、そんな大きな声で。

 蘇る恥ずかしさ。顔が熱を帯びていく。

「白ちゃん〜お顔が真っ赤だよ〜」

 図星。

 耕一君に続いたのは、どこか間の抜けたような可愛い声。紗枝ちゃんだ。

 そしてその言葉は、火に油を注いだかの如く、私の顔を大火事にした。

「紗枝、いじめちゃダメだよ」

 横で見ていた幸恵さんが紗枝ちゃんを制する。

 でも、今の言葉も堪えるんですが……。

「皆さん!未来さんがかわいそうですわ」

 集まってきた友人達を見て、呆れ顔でいう葉子さん。

 私は、恥ずかしさが頂点に達して、半ば自棄になる。こうなったら、弁解しないとやってられません!

 恥の上塗りをしないと決めた心はあっさりと吹き飛んでしまった。

「……だって、だって、扉が閉じてるんだもん!」

 そう、全てはこの扉が、この扉がいけないの! 扉が閉じてるから!

 私は眉を吊り上げ扉を睨む。

「……」

 何も反応が無い。突っ込みすら無い。

 我に返って周りを見渡すと、皆は黙って『ウンウン』と頷いていた。


「はいはい、早く席に着く!」

 聞こえてきたのは、張りのある元気な声。

「ほら、そこ、遅刻扱いにするよ?」

 声の持ち主は、間髪入れずに職権を振りかざす。

 みんなが、慌てて席に向かう。

 中でも、席から遠く離れていた耕一君の表情は、必死の一言。

 しかし、麻衣子先生。毎度ながら、生徒を掌握する手腕には脱帽します。

 麻衣子先生は、私達高学年部の担任教師。

 整えられたショートカットの髪と、清潔感を感じる服装は、まさに聖職者。

 長身でスタイルも良く、何より、その明るさと人懐っこい所がみんなから好かれている。

 一言で言うと良い先生。


「よーし、チャッチャと出席取るよー! で、誰がいない?」

 私は、転向初日、この言葉を聞いて呆気に取られた。

 今、麻衣子先生がやろうとしている事は、まさに言葉そのまま。生徒に誰がいないか聞くというもの。

 先生曰く、生徒の自主性を尊重した画期的かつ、スピーディーな出席取りとの事。

 ……うん、早いよね。点呼とか時代遅れと言わんばかりの荒業。

 でも、それは……。

「先生、勇治がいません」

 声を上げたのは耕一君。

 彼は、迷う事無く、仲間の名前を挙げたのだ。

「ほぅ、勇治か……うん、確かにいないな」

 先生は周りを見渡す仕草をすると、二回大きく頷いた。 

『ガラッ!』

「セーフ!」

 と、その時、荒々しく開け放たれた扉の音。続いて、声がした。

 振り向くと、そこには勇治君の姿。

 たった今、仲間によって名を挙げられてしまった者がそこにいた。

「セーフ、だろ?」

『……』

 一瞬の沈黙。先生のジャッジに皆の期待が集まっているようだ。

「……コホン」

「アウトォ!」

 一呼吸置き、言い放たれたのは、非情な言葉。

 ……そう、この出席取りは、時として仲間を売る。

 もし、誰も勇治君の名を挙げていなかったら『セーフ』とコールされていたはず。

 先生は、生徒の心に忠実なのだ。

 それはそうと、右手に拳を作り、高々と掲げながら宣言する先生の姿は、とても凛々しい。

 私はこれを見て、麻衣子先生のファンになりました。


「マジかよぉ」

 判定を聞き、肩を落とす勇治君。

「お、勇治。今期四回目の遅刻じゃないか」

 先生は日誌に目を通し、勇治君の遅刻回数を公表する。

 しかも、ものすごく意地悪そうな口調で。

 ……しかし先生、間違いなく、楽しんでますね。

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