その3
銀行員
なんとか学校に到着した雨森と物忌みの一行は、自転車を置くと急いで昇降口へと向かった。
遅刻ギリギリ。ロスタイムを計算にいれればなんとか間に合うかどうかというせっぱ詰まった状況だ。なのに隣のお気楽娘ときたら、
「うわー、ここが学校なんだね!」
なんて天然に驚く始末。
疲れていた雨森はつっこみをいれる元気もなく、ふう、とため息をついてから言った。
「それで、君は何年何組なわけ?」
「3年B組がいい!」
「希望じゃなくてね。君のクラスを聞いたんだけどね」
「金八先生に会うの!」
「やかましいわッ!」
つっこみが淡泊になっていることに雨森も気づいていたがどうしようもなかった。
「でも、本当に学校に来てよかったのかな」
「どういう意味?」
「だってさ。パースペクティヴさんが言ってたじゃん。この学校にはすでに殺人鬼の役職者が潜入しているって。なのに、銀行員がのこのこでてったら速攻で殺されちゃうよ?」
「おいおい。君はさっきのバカげた話を信じてるわけ?」
「え、信じてないの?」
「そりゃあそうさ。ここは平和国家日本。そんな国に殺人鬼なんているわけないし、こんな白昼堂々、学校で殺人事件とか漫画の中だけの話だよ。ははっ」
言い終わるのと、全身真っ赤になった生徒が運ばれてくるのは同時だった。
ぐったりと体中の力が抜けた生徒が、教師におんぶされて昇降口に現れる。呆然とする雨森をよそに、2人の教師は生徒を背負ったまま外に出ていった。救急車を呼ぶより車で搬送したほうが早い。そういう判断だろう。雨森は混乱した自分を立て直すためにひたすら目の前の出来事を客観的に観察していった。あっという間に昇降口から出ていった血塗れの生徒二人。廊下にはぽたぽたと液体が落ちている。空気に触れたソレはすでにどす黒く変色していた。それが妙に生々しくて、雨森は顔をひきつらせて、ははっと笑った。
「ねえ、これなにかな」
物忌みが言いながら差し出したのは、廊下に落ちていた銀色のブレスレットだった。
つくりはとてもシンプルで、装飾は一切ほどこされていなかった。その代わり、ところどころに赤い液体がこべりついていた。たぶん、さきほど運ばれていった生徒の持ち物だろう。でも、なんなんだ、これ。
「ん?」
ブレスレットに気をとられていた雨森は、廊下の向こうでこちらを観察している二人組に気がついた。
背の高い女と何故かスカート姿の男である。男のほうが「ちょっと、どうすんのよ!」とダミ声のオカマ言葉で文句をいっている。それを無視して女はこちらを冷たい視線で見つめるばかりだ。なんだ? と雨森が思う間もなく、彼・彼女は姿を消した。まるで忍者のように音もなくだ。
あとには、呆然とたたずむ雨森と物忌みだけが残された。
総会屋
「ちっ、またかよ」
苛立ちの声をあげたニートが金髪巨乳に制止を呼びかけた。
「なによ、さっきから」
「サツだよ、サツ。どうして今日はこんなに多いんだろうな」
ニートの嗅覚はすさまじい。
とくに対警察レーダーは異常な発達をみせていた。それは、今までの深夜パトロールで一度も職務質問という拷問を受けたことがないことで分かるだろう。そんなわけで、公僕の気配を察知したニートは経路の変更を選択。まんまと国家権力を出し抜くことに成功した。
「確かに多いわね。なにか事件でもあったのかしら」
「事件? あ! そうか!」
ニートは愕然とした。
「なによ、どうしたの?」
「悪いな俺様ちんのミスだぜ」
「い、いきなりどうしたのよ」
「自分が恥ずかしいよ。顔面パフパフ拷問も甘んじて受けよう」
「それ、ふつうはご褒美なんだからね」
「え?」
素でかえしたニート。ふう、とため息をついた金髪巨乳は、ニートに先を促した。
「今日、俺が通ってた学校で事件があったみたいなんだ」
「事件?」
「おうともさ。それでたぶん、サツの警邏が厳重になってるんだと思うぜ」
「なるほどね」
「まあ心配するなや。この俺様に任せておきゃあ、サツにパクられるなんてねえよ。まあ、とっつぁんがでばってくることがあるなら話しは別だがな」
そのとっつぁんが現れたのだから驚きである。
どこからともなく、ゴッドファーザーの電子音が聞こえてくる。この聞くだけで不安を与える音楽は、なんとびっくりパトカーのサイレンだった。こんな趣味の悪いサイレン音を選んで、しかもそれが許されるなんて一人しかいない。
「マジかよ! あのジジイ、署長だろうが! なんで警邏なんて下っ端の仕事しちゃってるのん」
しかもこのサイレン、段々とニートたちに近づいてくるのだから始末が悪い。ニートが警察レーダーを積んでいるとしたら、とっつぁんは犯罪者レーダーを積んでいる。このままではマズいとニートは戦々恐々とする。実質逮捕を華麗に任意同行にしてしまうとっつぁんのこと、みつかって職質かけられたら終わりだ。
「ええい。最終手段だ」
ニートは現在位置と手近な改造マンフォールの位置を確認する。ギリギリだ。ニートは叫んだ。
「こっちだ!」
「ちょっとなによ!?」
「シャアラップ! 黙って俺についてくればいいんだ」
ニートは金髪の手をとって走り出した。
実は胸きゅんした金髪には気づかず、ニートは路地を無駄のない動きで移動し、ワープゾーンにたどりついた。すぐに軽量化を施したマンフォールを持ち上げる。地獄に繋がっていそうな暗闇がぽっかり現れた。いやいやする金髪を蹴っとばしてマンフォールの中に叩き落とす。きゃあああ! ニートもすかさず穴の中に入り、すぐさまマンフォールを元に戻した。
とっつぁんの乗ったタバコの煙もくもくパトカーが現れたのは、ちょうどニートがマンフォールを戻した瞬間だった。
大統領
これはおかしい。
大統領は家のリビングでくつろぎながら不思議に思った。
3家族が一カ所に住むようになってからすでに3ヶ月が経過していた。
家族仲は良好で、今も同じリビングで兄はテレビをみながら「がはは!」と笑い、弟は日本経済新聞を読んで「ふむふむ」言っている。
これが異常でなくてなんであろう。兄と弟はちっとも土下座する気配をみせない。足を舐めさせてくださいと泣いて頼んでさえこなかった。
つまりは3ヶ月も一生懸命がんばったのに、ちっとも二人のことを支配できないでいるということ。これはゆゆしき事態である。許されてはならない。
というわけで、大統領はさらに一生懸命がんばることにした。
偶然をよそおって兄弟たちに胸をおしつけてまわった。さりげなく一緒にお風呂に入った。夜は布団にもぐりこみ人間抱き枕を堪能した。とにかく一生懸命がんばった。
そうこうしているうちに変化が起こった。胸を押しつけると、兄が悲鳴をあげて怯えるようになったのである。その悲鳴も可愛くて、ついついやりすぎてしまったのがいけなかったのだろうか。兄は他の女の子の胸にまで恐怖を感じるようになってしまった。弟のほうはそれほど恐怖を感じておらず、おっぱい中毒にかけることはできたが奴隷化にはほど遠い。
大統領ががんばればがんばるほど悪循環になっていく。彼女ががんばるということは、それだけレベルの高い支配化が施されるということだ。兄弟に通じなかったソレは、周りの人間から人格を奪い去った。今までにない大規模な支配化・奴隷化が幻覚町で行われる。その速度はラクーンシティでのゾンビ化よりも早いものだった。
今までは気づかれなかった大統領の能力が、兄弟にバレるのは時間の問題だった。
銀行員
殺人未遂事件が校内で起こったということでその後の授業はすべて休講になった。
教師連中は会議中。生徒たちは強制下校とあいなって、雨森と物忌みも例にもれず下校し、いまは学校横の教会にいた。
雨森が通っているのは中高一貫のミッション系学園で、教会とのつながりがある。神父じみた人が学校に授業をしにくることもあって、校内でも黒ずくめの神父姿を何度か目にしたことがあった。といっても、とくに宗教に興味がない雨森は、神父と牧師の違いも満足に分からないのであるが。
「これからどうしようか」
ベンチに座った物忌みが、隣の雨森に問いかけた。
「どうしようかって?」
「殺人鬼のこと。このままにしておいていいのかな」
「と言ったってなあ」
雨森は空を見上げてため息をついた。
「これは殺人未遂事件なんだよ?」
「それが?」
「警察の仕事だよ。僕らには関係がない」
「もうっ! それでも銀行員なの!?」
「前から疑問だったんだけど、その銀行員って何?」
「銀行員は銀行員だよ」
「なにする人なの?」
物忌みが立ち上がる。ドヤ顔で言った。
「ふふっ、聞いて驚きなよ。銀行員とは、世界の経済活動を円満にするために日夜戦う正義のヒーローなのだ!」
「なんかよく分からないんだけど、遠慮したいな」
「え? 約束したよね」
ぐわんぐわん。
けっきょくコレだ。「結婚してくれるって言ったよね」攻撃に雨森は抵抗することができない。
しかし、いったい自分はなにを約束したのだろう。昨日は夕立の後、普通に家に帰って寝たはず。約束なんていつしたんだ? まさか本当にナニをした刺激が強すぎて気絶でもしたあげくに記憶を喪失しのたか。記憶喪失童貞喪失なのか? 嘘だろ?
「君たち、破廉恥罪で任意同行しちまうぞ」
突然の声にビクっとなる雨森。
声のしたほうを見ると、そこには警察服を着た初老の男が立っていた。警察服を着ているのにまったく警察には見えない。コスプレにしたって二流品だ。そう思わせるのは、その人物がかもしだすいかがわしさだろう。詐欺師や暴力団員と紹介されたほうがまだ納得できる。
「あれ? こんなところで何をしているんですか?」
雨森が親しげに問いかける。
警察の男は、いつものニヤニヤした意図的な笑顔を浮かべながら言った。
「いつものように税金を無駄つかいしてるいるのさ。善良な市民をいじめるのが僕の仕事なんですね。ほら、笑え笑え」
「あいかわらずですね」
「あれれ、雨森くんもいじめられたいの? 任意同行されちゃう? うん?」
がはは! と豪快に笑う男。
やっぱりこの人、兄さんに似てるなあ、と雨森は思った。そんなこと言ったら逮捕されそうだけど。
「ねえ、銀行員さん。この人は?」
物忌みが質問した。雨森は、うん、という前置きのあとに。
「幻覚町が誇る迷物署長、泣く子も黙る悪魔の味方、とっつぁんさんだよ。ちなみに、本物の警察だから驚き」
「おい、誰だよ、その二つ名を考えたばかちんは」
「え? 兄さんがそう言ってたんだけど」
「よし任意同行決定。罪状は署長侮辱罪」
冗談に聞こえないのが、とっつぁんの恐ろしいところである。
このとっつぁん、雨森の兄と数知れない因縁がある。
それは彼が幻覚警察署の署長になる前から続くくされ縁だ。任意同行することが趣味みたいなこの男が署長になれたのも、兄の事件をまがりなりにも解決してきたことが大きいだろう。とくに2年前の事件は大活躍だったしなあと、雨森は過去をふりかえって思った。
「まあいい」
悪魔の味方が、しきり直すように言った。
「これから俺は、市民虐めにはげもうと思うんだが、君たちも来るかね」
「なんですか、突然」
「証拠集めだよ。おまえらの学校で起こった事件について、ここの教会の神父に、二三聞きたいことがあるんでな」
「なんで僕らが一緒に?」
「優等生の発言だな。おまえの兄貴なら、「わお、国家の犬の仕事を間近で見られるなんてウレピー」くらい言うだろうが」
「「わお、腐れ外道の腐った仕事で鼻が曲がりそうだぜ!」 って言うと思いますよ」
「で、どうするのん? 断ったら任意同行だけども」
ならば選択の余地はない。
雨森と物忌みは、とっつぁんに付き合うことにした。殺人鬼なんて間違っても潜んでいなさそうな清廉と佇む教会に、彼らは向かっていった。
教会の中に入ると、そこは別世界だった。片田舎の教会とは思えないほど、そこは清廉とした雰囲気をまとっていた。魂が洗い清められるような感覚があった。ほえええと、雨森が間抜けな声をもらす。
「ようこそおいでくださいました。私がこの教会の責任者です」
メガネをかけた優男が壇上に立っていた。黒のローブ姿。にこにこと柔和な笑顔を浮かべている。首から下げられた大きなロザリオが印象的といえば印象的だった。
「捜査には協力しますよ。今日、学校で起こった事件についてですよね」
「おうともさ。それじゃあまあ、事件当時どこにいたのかから聞こうかね」
そこからは、とっつぁんが神父に質問し、神父がそれに答えることが続いた。とっつぁんの人のあげあしをとるような追及と、回答の矛盾を引き出そうとする露骨な重複質問、巧妙な誘導尋問の嵐に、神父は嫌な顔一つ見せずに回答を続けていた。神父ともなれば人間ができているんだなあと、雨森は感心したものだった。
「ま、とりあえずはこんなとこかな。協力に感謝しますよ、神父さん」
「いえいえ。はやく犯人には捕まって欲しいですからね」
「自首すりゃあ簡単なんですけどね」
「ええ。自ら悔い改められることを祈っております」
二人はそのまま互いの顔を見つめるだけだった。妙な沈黙が流れる。けっと吐き捨てるように、悪魔の味方が笑った。
「それでは、また後ほど話を聞かせてもらいますんで」
そう言い残してさっさと教会から出て行ってしまう。慌てて雨森が後を追おうとすると、背後から神父に呼び止められた。
「すみませんが」
「なんですか」
「いえ、あなたたちは学校の生徒ですよね」
「そうです」
「感心しませんね。警察についてまわって事件をかぎまわるようなことをするのは」
そこまで言って、神父の視線が雨森のポケットにやられた。ただでさえ優しく細められている目がさらに細くなった。
「きみたち、次の日曜日にまたこの教会に来てくださいませんか」
「え?」
「話しておきたいことがあるので。いいですね」
神父は雨森から視線をはずし、物忌みのほうを見た。にっこりと笑っているはずなのに、そこにはどこか迫力があった。
「分かりました……けど」
「決まりですね。それでは、よろしくお願いしますよ」
話は終わりで、雨森と物忌みは教会の外に出ようとする。後ろを振り向いてみたとき、にこにこと笑いながら手を振る神父に雨森は違和感を覚えた。
総会屋
マンフォール下の下水道はまったくの暗闇だった。
自分の体さえ見えないのだから驚きだ。ニートは、ごそごそと暗闇の中で自分のポケットをまさぐった。とりだした懐中電灯をつける。
目の前に、悪鬼の形相でこちらを睨む、怪人ホルスタインが現れた。
「ひい!」
「どういうことなのか、説明してもらいましょうか」
怒りのあまりその声が震えている。何より怖いのは彼女がニッコリと笑顔を浮かべていることだった。
「だから、とっつぁんだって! 昼間の事件でやる気になっちゃったんだろうな。警邏なんて、刑事課の現役時代だってやったことないんじゃないか?」
「昼間の事件って何よ?」
「学校で殺傷事件だとさ。おまえ、幻覚放送見てないのか?」
「説明しなさい」
ニートは従順に従った。
幻覚放送とはインターネットを媒介にしたメディア放送のことで、毎日午後6時に定時放送がされる。その内容は、今日の幻覚町で起こった出来事をおもしろおかしくコメディーちっくに放送するというもの。普段は、三丁目の荒川さん家の犬が家出したので発見した人は犬鍋にするのは我慢しましょうだとか、井上さんの庭で見事な夏みかんができたので食べたい人は早い者勝ちです、などとどうでもいい情報をタレ流す。キャスターのおかま男と冷徹なつっこみをする女キャスターのかけ合いが面白く、幻覚町の住人でこの番組を見ていない人間はモグリの称号をいただくことになる。ニートも例にもれずに幻覚放送の熱烈なファンで、毎日ネットの応募フォーラムに情報を書き込むほどだ。けれど今まで情報を採用されたことがなく、幻覚放送記念アクセサリーを入手できないでいた。
「ふーん、で?」
金髪は女王様のように言った。
「え、いやだからですね」
ニートがしどろまどろになって答えた。
「いまの話で、わたしがアンタに蹴っとばされる理由があったかしら」
「おいおい、フロイラン。そっちかよ」
「こっちよ、こっち。あたり前でしょ」
「え、何する気?」
「こうするの」
金髪はおっぱいクラッシュを繰り出した。
ニートの顔面を巨乳の中に埋もれさせて捕縛する。普通はこのまま窒息死に導くのだが今はその必要もない。巨乳恐怖症のニートの顔面は真っ青を通り越してアケビのように紫になる。白目を向いてビクンビクン。金髪は猛禽類の笑みを浮かべて、さらにぎゅうっと力をこめた。
「もふうう、ふもふも」
「なに言ってるのか分からなーい」
「ふも、ふぐぐ!」
「もっと誠意をこめなきゃ聞こえなーい」
「ふんもっ! ふぐもふもふ!」
「ふふっ、あと5分」
10分後、ニートは金髪の足元で土下座していた。
それを見下ろす金髪の表情には満足そうな笑みがあって、ニートを震えあがらせるのに十分だった。
「金髪様、これからどうしましょうか」
ニートが下僕として聞いた。
「あ、わたしの名前、ジャンヌ・ダルクだから。ジャンヌ様でいいわよ」
「へー、バカなの?」
「ふーん(ゆさゆさ)」
「ごめんなさい」
「え? なんで土下座じゃないの?」
もう絶好調だった。
金髪巨乳あらためジャンヌ・ダルクは、ぐぬぬと屈辱に顔をゆがめるニートを従えて、下水道を歩きだした。
大統領
最初に気づいたのは、意外なことに兄だった。
あの愚鈍な兄が奴隷化能力に気づくとは予想外で、大統領はますます兄のことを気に入った。そんな熱烈な愛をもってしても、大統領は兄と弟を支配できなかった。
家族会議は数回にもおよんだ。
ナンデ君ハ支配スルノン?
愛シテイルカラヨ。
目的ハナンナノカナ?
兄サンヲ愛スルコト。
チョット兄サン、ナンデ兄サンダケ、
弟ヨ、オ前ハドッチノ味方ナンダ。
アラ、私ハ弟ノコトモ愛シテルワヨ。
デヘヘヘ。
ついに壮絶な第一次兄姉弟大戦が勃発。
大統領の奴隷軍団に対して、兄・弟連合軍は明らかに戦力で劣っていたが、兄の詐欺師じみた同盟能力で大統領敵対勢力の懐柔と組織化に成功。弟の豊富な資金力も手伝って、なんとか大戦をイーブンの状況へともっていった。
「パラノイアな5日間」と名付けられた戦いは、幻覚町に器物損壊と学業放棄・職場放棄の嵐をまきちらしたあげく、最終的にそんな戦いはなかったという集団妄想の形をとって収束した。兄のはからいで大統領は一時停戦を受諾。幻覚町における奴隷化を解除し、彼女は幻覚町を去っていった。
その交換条件として兄がさしだした対価については、数多くの妄想がされている。弟の妄想は、朝起きたら赤飯が炊かれていて、兄はげっそり疲れきり、姉はルンルン気分の上機嫌になっていたというものだった。




