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第七章 決着、株式を取得したほうが勝利する。その1


 第七章 決着、株式を取得したほうが勝利する。



 教会には有象無象がはびこっていた。

 彼らは顔色が悪く、目玉だけがギョロっと浮きでていた。体はやせ細っており、ひょろひょろして動きも鈍い。しかし、その瞳に浮かぶ憎悪だけは本物だった。老いも若きも関係なく、男女の性別すら超越して、有象無象たちは憎んでいた。飢えの感情はかくも激しく燃えあがるものなのだ。憎しみ、憎しみ。無数のギョロギョロ目玉が壇上の雨森に向けられていた。

 雨森は教会をぐるっと見渡してから、不適に笑ってみせた。兄と同じように覚悟を決めたからには、この状況に対して謝罪をすることは許されない。資金の流れを止めるということはこういうことだ。戦争行為なのだ。僕が彼らの飢えをつくった。それは変わらない事実で、釈明してはいけないことだった。

「よくがんばったわね」

 壇上の大統領が雨森に対して言う。

 彼女は、慈愛に満ちた女神のような笑みで続けた。

「貴方だけでここまでやれるとは思ってなかったわ」

「ええと、お楽しみはこれからなんですけどね」

「あら、貴方も言うようになったわね」

「だってそうでしょ?」

 ここで雨森は兄を模倣して両手を水平に伸ばした。

 コケティッシュな様子は彼にとてもよく似合っていて、どこか魅力的ですらあった。

「この状況はまだまだ続くんだ。銀行員の包囲網は完璧だよ。姉さんが負けを認めるまで、ありとあらゆる資金は姉さんサイドに流れない」

「それはどうかしら」

 大統領が勝利を確信している様子で言った。

「貴方は30分もしないうちに負けるのよ」


 *


 どういうことだ、と雨森は疑問に思う。

 確かに、現在の状況はピンチだ。

 教会は完全に包囲されている。壇上には殺人鬼のニコニコした笑みもある。さらには、物忌みとジャンヌは縄で縛られてイスに座らされていた。これではどうしようもない。第一回臨時株主総会のときのように、奴隷たちの隙をついての脱出をすることはできないだろう。しかし、それはあくまでも雨森が絶対絶命であるに過ぎなかった。

「言っておくけど、姉さん」

 雨森が昆虫のようなしぶとさで言った。

「僕らを殺したところで無駄だよ。銀行員の能力はそのまま残る。暴力で僕らを圧倒しようとも、この状況はなにも変わらない。ずっとこのままだ。奴隷さんたちはやせ細って餓死する。あと、1週間ってところかな? あまり時間は残されていない。だからよく聞いてほしい。いいかい、負けたのは姉さんなんだよ」

 雨森の言葉に、大統領は満面の笑みを浮かべるばかりだった。子供のイタズラを見守る母親のような表情を浮かべるだけで、勝利への確信は変わらないようだ。

「確認しておきましょう」

 大統領が続けた。

「貴方がつくった株式会社GENKAKUだものね。定款をつくったのも貴方だもの。その創設者に聞くのが一番良いわよね」

「なにを聞きたいの?」

 大統領は勝ち誇って言った。

「株式会社GENKAKUの株主資格と、幻覚町の住人資格の関係について」

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