表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/32

その6

 銀行員


 夜、雨森はキャンプファイヤーの様子をぼんやり眺めていた。

 燃やしているのは丸太ではなかった。紙の束だ。ビル五階分くらいまでに積み上げられたソレはよく燃えた。暗闇は払拭され、雨森家があかるく照らし出されていた。火の粉がただよい、キャンプファイヤーの一角がくずれる。それでも雨森は動じなかった。たしかこれって犯罪になるんだよなと、どうでもよさそうに考えただけだった。

「本当によかったの?」

 いつの間にか隣に来た物忌みが尋ねた。

「しかたないよ。こんなにいっぱいあったら盗まれちゃうかもだし。もしそうなったら、資金を凍結している意味がなくなっちゃうからね」

「そのことじゃなくてさ」

「え?」

「こんなふうに矢面にたって戦うことにして、本当によかったのかなって」

 雨森は少し考えてから言った。

「だから、きみは僕に銀行員の本当の能力を教えてくれなかったのかい」

「本当の能力って?」

「いいんだよ。僕だって、自分の力だけで一つの銀行の資金を凍結できるなんて思ってない。これが銀行員の能力なんでしょ?」

 物忌みは黙ってしまった。

 彼女は雨森と同じように、ぼんやりとキャンプファイヤーの炎を見上げた。そのまま雨森に視線をやらずに言った。

「行使条件は、銀行員のすべての資産の破棄。それと、顕現した町に銀行員が在職していること。後者は別として、前者の条件はちょっと厳しすぎるよね」

「どうして?」

「だって……」

 黙りこむ二人。バチバチと火花が散る音が闇夜に響いた。雨森がキャンプファイヤーを見ながら言った。

「ねえ、手をつなぎたいんだけど」

「どうして?」

「きみのことが好きだから……みたいな?」

「嘘でしょ?」

「嘘じゃない……みたいな?」

「断崖絶壁なのに?」

「関係ない」

 物忌みは黙って雨森の手を握った。

 二人は紙でつくられた櫓が炎につつまれ、崩れおちるのを見た。火の粉が盛大に飛び散り、花火のように夜空にあがった。


 雨森は夢をみていた。

 物忌みと手をつないで一緒に歩いている夢だ。まるで恋人どうしみたいだった。雨森は大統領である姉に勝利して、物忌みと結ばれた。でへへ、と雨森は笑う。これからよろしく頼むよ、と彼は言う。しかし、彼女は返事をしない。どうしたんだろう。雨森は物忌みの肩に手をかける。振り向いた彼女は物忌みではなく、殺人鬼の神父だった。

「ひ」

「あ、おとなしくしてくださいね」

 暗闇、自分のベットの中、そこで雨森は馬乗りされていた。にこにこした笑顔が頭上にある。神父はロザリオ型のナイフを握っていて、それを雨森の首筋に突きつけていた。ぎらりと暗闇の中で光るナイフに、雨森は恐怖を感じた。

「これから、あなた方を連行します」

 神父の背後には、捕らえられた物忌みとジャンヌが並んでいた。

「どういうことですか?」

「株主総会ですよ」

「え?」

「第二回臨時株主総会です」



 幻覚放送


女「さて、第二回臨時株主総会のお知らせです」

オ「期日は明日午前6時。日も昇らない朝っぱらだわさ。これ以上待てないって判断ね」

女「議題は取得条項付株式の強制取得に関して。ぶっちゃければ、銀行員の幻覚町住民資格を剥奪することの是非に関してですね。それでは、明日が正念場です。みなさま、はりきって参りましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ