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アナリー・ルチアータ 洗面器を洗う 04
※過度な期待はしないでください
僕がベッドに座り直し、掛け布団を体に巻くように直した頃。
アナリーが左手に持っていた洗剤液は、ちょろちょろと床板へ吸い込まれていた。こぼれた音で器が傾いているのがわかったアナリーは、すぐに器を水平に戻す。洗剤液がこぼれた床板と、器の中に残った少ない洗剤液を交互に見て、アナリーはため息をついた。
「あ~、サイカチとムクロジも高いのにー……」
がっくりと肩を落としながら、部屋の中央にあるテーブルへ器を置く。ことり……という器を置く音が奥ゆかしい。僕ならガンッ! といらだちを押し付けているかもしれない。
ここがどこなのか一刻も早く知りたかったのだが、そんな質問をするような雰囲気ではなくなった。
【次回】
アナリー・ルチアータ 洗面器を洗う 05