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「蒼穹のファスナー」

 この世界は閉じられている。

 小さい頃は気にしていなかったが、大きくなるにつれてだんだんと違和感を感じるようになってきた。

 時々出会う旅人、彼らの話を聞いている限り、この世界にはどうやら「壁」というものが存在しているらしい。

 それらの話を聞いているうちに、私の中の違和感はだんだんと大きくなってきた。

 

 世界の「外」はいったいどうなっているのだろうか。


 初めは小さな疑問だった。

 しかし、それはやがて大きなしこりとなって私の心の中に存在するようになった。


 それからどれだけの月日が経っただろう。

 私はついに、旅立つことにした。


 旅立ちの当日、親戚だけでなく近所の人までが私を見送ってくれた。

 泣き出す兄弟、じっと押し黙ったままの父、私をぎゅっと抱きしめる母。

 私はすべての気持ちを押し殺して旅に出た。


 全ては世界のすべてを知るため、世界の果てを目指すためだ。


 どれだけの月日が流れただろう。

 長い長い旅路だった。


 やがて、私はたどり着いた。

 見上げても果ての見えない「壁」だ。

 それはあまり硬くなく、弾力を持っていた。ほのかに白く、柔らかな光が差し込んでいるようだった。

 左右を見ても、「壁」がどれだけ続いているのか想像もできない。


 私はついに「世界の果て」にたどり着いたのだ。


 しかし、私の目的は果てにたどり着くことではない。その向こう側、世界の果ての向こう側に行くことなのだ。


 その時、私の頭上で声がした。

 それがはっきりとした言葉なのかは分からない。

 それは、私の知らない言語だった。

 しかし、意味を持って発声されてることは分かる。


 私は空を見上げる。

 今まで何度も見上げていた空。


 それが今、ぱっくりと割れていた。


 なんということだろう。

 私は言葉を失った。

 私が今まで見上げていた空、その空がさらに色鮮やかに切り取られている。


 否、空が割れたというべきか、空が切り取られたというべきか。

 そこから見える蒼穹、そして白い綿のようなもの。


 その時だった。

 私の頭上に影が差す。

 それは空を覆わんばかりの巨大な怪物だった。

 それは二本の足と、二本の腕を持っていた。

 とにかく大きい。その腕のひとすくいで、私たちの村をまるごと持ち上げることができそうなほどだ。

 その巨大な腕がだんだんと私に近づいてくる。

 風が唸った、大地が揺れた。


 ついに、その腕が、指が私をつまみ上げる。


 ああ、私の運命はこんなものなのか。


 私は観念した。

 だんだんと持ち上げられていく私の体。世界が見える。

 なんと小さい世界だろうか。

 そして、なんとすがらしい世界だっただろうか。


 私は、世界の果てに辿りついた。

 

 願わくば、この世界が平和であらんことを、この怪物が私の村に行かないことを願うばかりだ。




「ロンよりショウコ」



ロン「どうしだんだい。早く作業しないと怒られちゃうよ」



ショウコ「だって、ビニールハウスの中暑いんですもの」


ロン「これだけ晴天だと、気持ちがいいくらいじゃないか」


ショウコ「そうですけどね。あっ!」


ロン「どうしたんだい」


ショウコ「見てください。ダンゴムシですよ」


ロン「入り口のところにいるね」


ショウコ「こんなところにいたら、人に踏まれてしまいますよ」


ロン「わざわざどかせるなんて、やさしいね」


ショウコ「生き物は大切にしないとですよ。それにしても…」


ロン「ん?どうしたの?」


ショウコ「ダンゴムシからはこのビニールハウスはどう見えるんですかね」

「蒼穹のファフナー」ってアニメがありますが、この話とは一切関係はございません。

なんとなく「空にあるファスナー」ってイメージで書きました。

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