「カメラ」
そのカメラは、不可解な光景を映し出す不思議なカメラだった。
見た目は普通のフィルムカメラだった。もちろん、フタをあげればちゃんとフィルムを入れるふうになっていたし、レンズもカメラにも傷ひとつない。
しかし…
風景を写しているはずなのに、そこは両親の顔が写ったり。人物を撮っているはずなのに動物の写真が撮れたりした。
はじめは面白がっていろいろな物を撮影していたが、やがてそのカメラの持ち主はあることに気づいた。
このカメラは、撮影する者の「心の奥底」を映し出すカメラだということに…
そのことが分かってから、そのカメラは次々と持ち主が変わっていくことになる。
はじめは興味本位でカメラを手にしていた者も、やがては自分の心を映し出すカメラに嫌悪と恐怖を抱くようになってきたのだ。
どんなに紳士を気取っても、カメラを使えばその心の闇が映し出されてしまうからだ。
不思議なカメラは、やがて恐怖のカメラと呼ばれるようになった。
そして、新たな活用法として、犯罪者用のうそ発見器のような役割を果たすようになってきた。どんなに黙秘を続けても、カメラを持たせて写真を撮らせれば一瞬でそのうそが見抜かれてしまう。カメラは撮影者が忘れてしまっているようなことまで映し出すということも分かってきた。
しかし、誰もそのカメラを手にしようとはしなかった。
どんな人も、心の闇だけは見たくないものだから。
「ロンよりショウコ」
ショウコ「なんですか、それは」
ロン「カメラだよ。その撮影した者の心の中を覗き込む不思議なカメラ」
ショウコ「なんだか、嫌なカメラですね」
ロン「そう言わずに、試しに何か撮ってみなよ」
ショウコ「う~、分かりました。じゃあ、そこの桜を撮ります」
撮影後、現像。
ロン「う~ん、どれどれ。これは!」
ショウコ「どうしましたか。変なものが写っているんですか」
ロン「まあ、とりあえず見てみなよ」
ショウコ「こ、これは…」
ロン「桜餅だ…もしかして、桜を見て桜餅を連想したのかな…なんだかとってもおなかがすいているのかな」
ショウコ「私って…いったい」




