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「森の妖精」

 その森には小さな妖精たちが住んでいました。

 妖精たちは毎日毎日楽しく暮らしていました。


 ある日のことです。

 葉っぱの妖精が仲間たちに向かって言いました。


「ボク、人間になりたい!」


「どうして?」


 木の実の妖精が不思議そうに言いました。


 人間たちには妖精の姿は見えません。

 妖精たちがどんなに叫んでも、人間たちには聞こえないのです。


 最初妖精たちは人間たちに気づいてほしくて、色々なことをしました。

 人間たちが豊作を祈れば、水の妖精や光の妖精たちががんばって、見事に畑の作物を実らせたり。

 人間たちが祭りの日に晴天を望めば、雲の妖精や風の妖精たちが天気がよくなるようにと雨雲を動かしたり。


 でも、どんなにがんばって人間たちの望みを叶えても、妖精たちは人間たちと話をすることはできませんでした。


 やがて、妖精たちは人間と話しをしようとはしなくなりました。


 人間たちの声は聞こえても、妖精たちの声は聞こえない。


 どんなにがんばっても、人間たちと話をすることはできないのです。


 妖精たちは、人間のことが大好きでした。

 話をしたくて、一緒に祭りを楽しみたくて、いっしょに遊びたくてたまりませんでした。

 でも、それができないと分かったとたん。妖精たちはとてもがっかりしたのです。


「ボクは人間になる。そして、人間に妖精がいるってことを教えてあげるんだ」


 葉っぱの妖精は言いました。


「それはいいアイデアだね」


 葉っぱの妖精の話を聞くなり、木の実の妖精は大喜びです。

 周りの妖精たちもうれしそうに頷き合いました。


 しかし、どうすれば人間になれるのかどの妖精も知りませんでした。


「そうだ。長老に聞いてみよう」


長老とは、森の妖精たちの住む森の中心に位置する大樹の妖精のことです。


 妖精たちは長老のところに行きました。


 葉っぱの妖精は長老に言いました。


「ボク、人間になりたい」


「どうしてそんなことを言うのかね」


 長老は言いました。

 葉っぱの妖精は長老に今までのことを言いました。そして、自分が人間になって妖精たちのことを伝えたいとも。


 葉っぱの妖精の言葉を聞いていた長老は話を聞き終わると静かな声で言いました。


「あなたの言いたいことはよく分かりました。小さな妖精よ」


 長老の目は慈愛に満ちています。


「あなたを人間にすることはできます」


 長老の言葉に葉っぱの妖精は大喜びです。


「しかし」


 長老は続けます。


「あなたが人間になった時、あなたはもう二度と妖精の姿を見ることはできず。そして、声を聞くことはできなくなりますよ」


 長老の言葉に、葉っぱの妖精はがっかりしました。


 それでは何の意味もないからです。


「あなたの気持ちは大変すばらしいと思います」


 長老は葉っぱの妖精の頭をやさしくなでました。


「確かに、あなたの声は人間には聞こえず、姿も見せることはできません。でも、あせらずゆっくり人間たちの言葉に耳を傾け、歩みを同じくすることで見てくるものもあるのですよ」


 葉っぱの妖精は長老の言葉を静かに聞いていました。

 そして、何かを決心したようにゆっくりと頷きました。


「ボク、やっぱり人間になりたい」


 葉っぱの妖精は、決意をこめて言いました。


 そして。


 葉っぱの妖精は人間の男の子になりました。


 それから、数百年後。

 その村の人間だけ、妖精の言葉を聴くことができるようになりました。



「ロンよりショウコ」


ショウコ「この村ですか、妖精の言葉を聴くことができる人たちが住む村というのは」


ロン「そうだよ。はるか昔。妖精から人間になった者がいてね。その人のおかげで、この村の人間だけ妖精と会話ができるようになったんだ」


ショウコ「どうして、この村の人間だけなんですか」


ロン「おそらくは、妖精から人間になった者への敬意の証なのかもしれないな」


ショウコ「妖精たちもきっと喜んでいますね」


ロン「そうだね。妖精から人間になった者は、当然寿命で死んでしまっただろうけど、その意思はこの村人の心に残り続けているんだよ」


ショウコ「なんだか、いいお話ですね」

葉っぱの妖精 ハッパルン

木の実の妖精 キノミン

長老 カレジイ

などと子供たちが背後で騒いでおりました。

その中で書き上げた話です。

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