表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/55

「魔法の地図」

 男は旅に出た。

 世界一の宝を求めて。

 彼は絶対に宝を見つけられると信じていた。

 「魔法の地図」と呼ばれるその魔具は、手にした者にとっての「宝」のありかを示すというものだった。

 すべてを投げ捨てて男は旅に出た。

 妻を捨て、子供を捨て、村を捨て。

 何十年も「宝」を探し続けた。


 そして…

 

 男は「魔法の地図」の解読に成功し、地図の示す場所へとやってきた。

 「魔法の地図」は示していたのだ。

 彼の村を、彼の家を。


「ああ…!」


 男はその場に膝をついた。

 何十年も旅を続け、何もかもを捨てて辿り着いた先、それが目の前にあった。

 誰も住んでいない彼の家だ。

 妻もいない、子供もいない。

 聞けば、彼が旅に出て数年の後、流行病にかかり家の者は皆亡くなったという。


「ああ…!」


 慟哭。

 何もかも喪失してしまった悲しみが胸の奥からこみ上げてくる。

 失ってしまってから、失ってしまったことに気づいてから、男は失ったものの大きさに気づいてしまった。

 「宝」ははじめからそこにあったのだ。

 男は自分の愚かさを嘆いた。悔やんだ。後悔した。


 男の目から大粒の涙が流れ落ちる。


 大きな空虚。

 大きな喪失。


 男はすべてを失った。


「ああ…!」


 男の涙が「魔法の地図」へと流れ落ちる。


 するとどうだろう。

 地図が光を放った。

 光が全てを包み込む。


 そして… 


「お父さん本当に旅に出るの?」

 唐突に、問いかける声があった。

 男が目を上げると、そこには悲しそうな顔で自分を見つめる子供の姿があった。

 男は思い出した。

 これは、男が「宝」を求めて旅に出た、まさにその日だった。

 子供の後ろには、愛する妻の姿。心配そうな顔でこちらを見つめている。


 なんということだろう。


 男は嘆いた。

 家族はこんなにも自分のことを心配し、愛してくれていたというのに、それをかえりみず旅に出てしまった愚かな自分。


 しかし、今は違う。


 男は手に持っていた「魔法の地図」をくしゃりと握りつぶした。

 もうこんなものは必要ない。

 男は「宝」を手に入れた。

 そう、それははじめからそこにあったのだ。


 彼が旅に出て数年の後、流行病にかかり家の者は皆亡くなった。


 心の片隅に、未来の出来事が蘇ってきた。


 そんなことはさせない!


 男は心の中で叫ぶ。


 どんなことがあっても、俺は家族を守りぬくんだ。

 男の瞳には、強い決心の光があった。

何よりも大切なもの、それは家族だと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ