「魔法の地図」
男は旅に出た。
世界一の宝を求めて。
彼は絶対に宝を見つけられると信じていた。
「魔法の地図」と呼ばれるその魔具は、手にした者にとっての「宝」のありかを示すというものだった。
すべてを投げ捨てて男は旅に出た。
妻を捨て、子供を捨て、村を捨て。
何十年も「宝」を探し続けた。
そして…
男は「魔法の地図」の解読に成功し、地図の示す場所へとやってきた。
「魔法の地図」は示していたのだ。
彼の村を、彼の家を。
「ああ…!」
男はその場に膝をついた。
何十年も旅を続け、何もかもを捨てて辿り着いた先、それが目の前にあった。
誰も住んでいない彼の家だ。
妻もいない、子供もいない。
聞けば、彼が旅に出て数年の後、流行病にかかり家の者は皆亡くなったという。
「ああ…!」
慟哭。
何もかも喪失してしまった悲しみが胸の奥からこみ上げてくる。
失ってしまってから、失ってしまったことに気づいてから、男は失ったものの大きさに気づいてしまった。
「宝」ははじめからそこにあったのだ。
男は自分の愚かさを嘆いた。悔やんだ。後悔した。
男の目から大粒の涙が流れ落ちる。
大きな空虚。
大きな喪失。
男はすべてを失った。
「ああ…!」
男の涙が「魔法の地図」へと流れ落ちる。
するとどうだろう。
地図が光を放った。
光が全てを包み込む。
そして…
「お父さん本当に旅に出るの?」
唐突に、問いかける声があった。
男が目を上げると、そこには悲しそうな顔で自分を見つめる子供の姿があった。
男は思い出した。
これは、男が「宝」を求めて旅に出た、まさにその日だった。
子供の後ろには、愛する妻の姿。心配そうな顔でこちらを見つめている。
なんということだろう。
男は嘆いた。
家族はこんなにも自分のことを心配し、愛してくれていたというのに、それをかえりみず旅に出てしまった愚かな自分。
しかし、今は違う。
男は手に持っていた「魔法の地図」をくしゃりと握りつぶした。
もうこんなものは必要ない。
男は「宝」を手に入れた。
そう、それははじめからそこにあったのだ。
彼が旅に出て数年の後、流行病にかかり家の者は皆亡くなった。
心の片隅に、未来の出来事が蘇ってきた。
そんなことはさせない!
男は心の中で叫ぶ。
どんなことがあっても、俺は家族を守りぬくんだ。
男の瞳には、強い決心の光があった。
何よりも大切なもの、それは家族だと思います。




