止まない雨
その日は、朝からずっと雨が降り続いていた。
昨日の天気予報では、晴れだと言っていたから、洗濯物を干しっぱなしにしていた私は、起きた直後から、洗濯物の取り込みに追われていた。
ひと段落してニュースを見てみると、どこもかしこも雨が降っているらしい。
それも、突然の豪雨だそうだ。
なぜ突如として雨が降り始めたのかは、全く分からない。
ニュースで騒いでいるだけだ。
「さて、どうしてかな」
声が部屋の中から聞こえてくる。
ぎょっとして振り向くと、燕尾服にシルクハットの男性が立っていた。
「この雨は、我々が降らしたのですよ」
「なぜ…というか、一体、どうやって……」
「鍵をかけていても、我々には意味をもたないものでね。お嬢さん」
パチンとウインクをされるが、全く心ひかれない。
ここまで惹かれないのも珍しいほどだ。
「さて、この雨は、我々の世界を見せないために、必要なのだよ」
「貴方達の世界…?」
「さよう。この世界と並行して存在している世界のことだ。数千年に一度、歳差運動によって接所する瞬間がある。それを見せてはいけないために、このような処置が必要になったのだ」
「そんな瞬間が……」
「ああ、だからだ。これも、神の計画の一部だしな」
その言葉の真意を聞く前に、その人はいなくなった。
後は、外で轟々と降り続いている雨の音が残された。