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⑥ ベタ甘カップル?!

 最初に我に返ったのは塔哉だった。

「い、今のはなんだったんだ?」

急に生徒会室がざわざわとし始めた。逆に放送委員長が混乱している。

「僕がなんか言ったの?」

「覚えてるところまで言ってみて」

保健委員長に言われて、少し上を向きながら記憶をたどっていった。

「まず、バレンタインデーは恋する乙女のためにある。それから塔哉と佐津紀ちゃん、有水君たちみたいなベタ甘カップルのためにある……」

「なんで俺と佐津紀が“ベタ甘カップル”なんだよ!」

生徒会室が大爆笑に包まれた。

「う~ん、“ベタ甘”とは少し違ったかなあ」

「おかしいのは“カップル”のほうだ!」

「じゃあ、“ベタ甘”は認めるわけ?」

「そうじゃなくて……」

放送委員長はどうにも食えない奴だと、塔哉は改めて感じた。

「それなら訂正するよ。“ベタ甘カップル”は有水君たちで――」

「ちょっ……」

有水は反論できない。

「――塔哉と佐津紀ちゃんは……えっと、これがいいや。“ベタ甘になってほしいカップル”」

「なってほしくない!」

「「なってほしいよ!」」

塔哉の抵抗も空しく、保健委員長と環境委員長に押し切られてしまった形になる。

「佐津紀ちゃんだってベタ甘になってほしい、っていうかなりたいでしょ?」

放送委員長の攻撃は止まらない。いきなり話を振られた佐津紀は一層顔を赤くして、しどろもどろになりながらなんとか返した。

「ふぇ、え、あ、あの、わわわ、私たちは、ただの生徒会長と副会長……」

段々と声が小さく、そして悲しげな顔になっていく。自分で言っていることがあまりに残酷で切ないということに気付いたのだろう。

「それから――」

放送委員長がさらに記憶をたどる。

「――そうだ、キモオタが入る余地はないって言ったんだ」

「「「それで?」」」

そこからが重要、と言わんばかりに揃って身を乗り出す。


「それからなんか言った?」


一同、昔のコントよろしく一斉に腕を滑らせた。やはり、放送委員長は無意識に図書委員長をいじめていたのだ。

「で、気付いたらこの人が机に伏せて泣いていると。え、何? 僕がキモオタとか言っちゃったからいけないの? でもそんなこと言われ慣れてるでしょ? どうしてなの?」

内容が内容だけに説明できる者はおらず、塔哉は若干乱暴に採決に移った。

「じゃあ、今年のバレンタインデーは2月22日、ホワイトデーは3月6日でいいな。異議のある者は?」

体育委員長が居眠りをしているのと、図書委員長が泣いているので棄権が2名。他全ての役員は賛成したので、反対は0名。

 放送委員長のおかげで図書委員長が戦意喪失し、スムーズに採決できた。これはいいことなのか……? 塔哉は若干後ろめたさを感じつつも解散を指示し、佐津紀は顧問に提出するための書類作成を始めた。

 そんな二人を見ていたかんなが、ふと思い出したように立ち止った。

「式の日取りが決まったら、教えてくださいね!」

再び大爆笑である。

「えっと……なんの式だかさっぱり……そ、卒業式なら知ってるけどな」

「う~んと、成人式は一緒に行こうね、かんな!」

「葬式の予定は立ってないぞ」

「反比例の式はワイイコールエックス分の……」

かんなが何を言いたいのか分かっていながらも順番にボケをかます二人。二人は本当にお似合いだと、誰もが思った。しかし、かんなの口から発せられたのは、誰もが予想した“式”ではなかった。

「もちろん、――式のことです」

聞き慣れない言葉なので、一瞬シンとなった。

「だから、銀婚式の日取りが決まったら、教えてください」

「はぁ?」

塔哉は拍子抜けという感じだが、佐津紀には意味が分かった。さらに顔を赤くする。

「銀婚式って、結婚25周年の? なんで、そんな……」


「あ、でもその前に結婚式ですね!」


「「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」


かんなの言葉を遮ろうと奇声をあげる二人を置いて、他の委員たちはそそくさと生徒会室を去った。

「邪魔になっちゃうといけないからね」

「後は夫婦に任せれば」

「あたしたちは帰ろう帰ろう」

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