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④ 紛糾する会議

 「二日連続で集まってもらって悪いが、時期が差し迫ってる問題だからさっさと片付けよう」

意外にも、臨時に会議を行うことへのブーイングはなかった。“バレンタインデー”というユニークな議題だからかもしれない。ただ、生徒会の役員はそれぞれの部活でも役職を持っていることが多く、臨時の会議であるため欠席者は多かった。

「来ない人からは、来てる人だけで決めちゃっていいって言われてるから」

塔哉はそう言って、ホワイトボードを眺めた。

「きのう挙がった意見は、〈バレンタインデーを入試翌日にずらすと用意がきつい〉ってことと、〈ホワイトデーを卒業式の日にしてしまうと渡すチャンスがない可能性がある〉ってことだな。他に意見は?」

「そうだ、今日聞いた話なんだけど」

放送委員長が手を挙げた。

「卒業式の前日、3年生は卒業前特別プログラムでデイキャンプだって」

「デイキャンプ?」

佐津紀が聞き返した。

「ほら、3年主任の安藤先生が張り切っちゃったやつ」

“絵にかいたような”という枕詞付きで熱血タイプの安藤先生は、卒業生の最後の思い出にと学校創立以来初めての卒業遠足を企画し、校長や教頭を説き伏せて実施にこぎつけた。行先は十六国平(じゅうろっこくだいら)のキャンプ場で、バーベキューやオリエンテーリングが予定されている。

「ということは、さらに狭い期間内にバレンタインデーとホワイトデーを置かなきゃならなくなるのか」

塔哉が頭を抱えた。

「男には、それだけ早く心を決めてもらわないといけないことになるね」

佐津紀はそういいながら、ちらりと塔哉を見た。

「そうだよなぁ。それって可能なのかな……そうだ、有水はどうだった?」

「い、いや……僕は――」

「結論として両想いだったから悩む必要はなかった?」

放送委員長がにやけている。

「ええ、まあ、その……」

「もうちょっとしゃきっとしなよ。曖昧な返事じゃなくてさ、彼女と居る時もそんな受け答えをしてるわけじゃないでしょ?」

「うぅ……」

「ちょっと、いじめすぎじゃない?」

放送委員長を止めているはずの保健委員長もなんだか楽しそうだ。


 「……どういうことだよ」

有水の話題で盛り上がっているのを見ている図書委員長は明らかに不機嫌だ。

「今はそんな個人の恋愛話なんて関係ないだろ。なんでいつの間にかバレンタインの日を変えるってことになってるんだよ。昨日も言っただろ? 生徒会でそんなことするのはおかしいって」

また重苦しい空気になる。

「そうだ、昨日ヒビさんが言ってた少子化の話はなんなんですか?」

有水の一言で少し空気が和らぎ、何人かがホッとした表情になる。

「あれはな、どっかの誰かに揚げ足取られて中断してしまったが――」

佐津紀がいたずらっぽい笑みを浮かべている。

「――つまり、バレンタインデーが入試と被ったりして中学生の恋愛のきっかけが潰されることを防げば、もしかするとその二人が将来……ってことも有りうるだろ?」

「「無い無い……」」

保健委員長と環境委員長はあきれ顔だ。

「そんな漫画みたいな話、あると思うの?」

「日比田はそんなこと期待――あ!」

環境委員長は気付いたようだ。放送委員長も大きくうなずく。

「|塔哉の場合は(、、、、、、)十分にありうる。というか、無きゃ困る。だよね、佐津紀ちゃん?」

「なんで私に話を振るんですか!」

「ムキになる佐津紀ちゃんもかわいいよね、日比田?」

「どうでもいい。俺に振るな!」

 「だけどよぉ」

図書委員長が発言するのは、大抵会議がいい雰囲気で盛り上がっている時だ。環境委員長はあからさまに迷惑そうな顔をする。彼女の目は「オタクに発言権はない」と言わんばかりだ。

「少子化対策ってことは結局『さっさと結婚して××しろ』ってことだろ?」


「「「……っ!」」」


図書委員長は度々爆弾発言をする。伏字になったということは……わかりますね? 放送委員長だけは笑っている。

「自分に縁がないからってひがむなよ」

「そんなんじゃねぇよ!」

図書委員長は大きな音を立てて立ち上がった。放送委員長が軽い気持ちで言った言葉が彼を怒らせてしまったのだ。


「第一俺は、ちゃんと2月14日にチョコをもらう予定があるんだよ!」

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