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刹那の風  作者: 緑青
カルセオラリアの章以降の話
3/3

『 トゥーリ : 好きの種類 』

アネモネ1 ~ ミヤコワスレ1の間の手紙


ネタバレがありますので、本編がまだの方はご注意ください。

" …… 親愛なる、トゥーリへ ……"


そうはじまる手紙に、少しの不安と少しの喜びを胸に秘めて

セツからの手紙を読み始める。


"僕とアルトは、クットの国からリペイドの国へ移動したよ…… "


からはじまるセツの手紙は、あのとても濃い2日間が想像できないぐらい

穏やかな手紙だった。セツが優しい人だという事はわかっているけれど


私に見せた感情とこの手紙の文章のギャップが少し不思議だった。


-……どちらが本当のセツかしら?


セツの手紙はとても面白おかしく書かれていて、1つの冒険物語を

読んでいるような気持ちにさせてくれる。


特にセツが、アルトのぬいぐるみに話しかけた話は

思わず声を出して笑ってしまうほどだった。


セツとアルトが楽しく旅をしている様子が目に浮かぶようで

知らない間に顔が緩んでいくような気がする。


"今は、アルトの依頼で知り合った獣人族の老人の家で下宿しているんだ

しばらくこの国に留まって僕は僕で依頼を受けてお金を貯めることにするよ

トゥーリ……大好きだよ、また手紙を書くね  - セツナ - "


最後の文章は私への気持ちが綴られていたけれど

怖いと感じる事も無く、純粋にその言葉が嬉しいと感じる事ができたことに

ホッとする……。


-……。


セツがここを発ってから、自分の気持ちをぐるぐると考えていたけれど

結局答えは今もでていない。私のセツに対する気持ちがいったい何なのか(・・・・)


私は寂しさゆえにセツを求めたのかもしれない……。

私のセツに対する気持ちは……アルトと一緒なのかもしれない。


そう……恋だと思ったはじめての感情は本当は違うものなのではないか。


ただ……家族が欲しかっただけなんじゃないだろうか……。

独りで死ぬのが怖いから……恋だと錯覚(・・)したんじゃないか


でもそれは違うと心が否定する。私の気持ちはセツが好きだと泣いている。

名前を呼んで欲しいと、声が聞きたいと……。


だけど、抱かれてもいいと思えるほどの好きが恋だと言うのならば。

私の気持ちはいったいなんなんだろう?


好きの違いがわからない、私の気持ちは何処に分類されるのだろう……。

早く答えを出したいと……出さなければと焦る気持ちが私を追い詰めていく。


『僕のことが好き?』とセツに聞かれたら……私はどう答えていいのか

きっとわからないと思うから……。


-……。


時間がたてばたつほど……わからなくなっていくのだから困ってしまう。

そして、早くてもセツとそういう関係になるのは2年後なのだからと

自分の心を宥め深く考える事をやめてしまう。


-……それに。


セツから貰った手紙にチラリと視線を落とす。気になる箇所が1つ……。

リペイドの国までの道程は、あと1人同行者がいたと書かれてあった……。


森で魔物に襲われていて、死にそうになっていたところを助けた人を

国に送り届ける為に、クットからリペイドの国へ行く事になったらしい。


-……。


-……一緒に旅をした人はどういう人なのかしら。


セツの手紙には同行者としか書かれていなかったから少し気になってしまう。


セツとアルトが送り届けるという事は

1人では自分の国に戻れないという事よね?


それってやっぱり……。


-……女の人なのかな。


-……。


セツの手紙を眺めていると

クッカがトゥーリ様、眉間にしわが出来ているのですっと言い私の顔をじっと眺めている。


-……気になる。


同行者が女性なのか、男性なのかとても気になってしまう。

女性と決まったわけではないわ、非力な男性も居るのだし……。

もしかしたら子供かもしれないし……と心の中で答えを探そうとする。


セツからの手紙を何度も読み返し、何か手がかりになるものがないかと

探してみるけれど……何度読んでも見つからないものは見つからないのだ。


-……同行者のお名前ぐらい入れておいてくれてもいいのに。


なんて少し逆恨みっぽい事を考えてしまう。

セツからもらった便箋を机の上に取り出しお返事を書こうとするけれど。


どう書けばいいのか悩んでしまう。

同行者の事をさりげなく聞いてみようかなっとか……。


でも、せっかく穏やかな手紙をくれているのに寝た子を起こすことになるような

文章は書きたくない……。それはきっと私が困ってしまう。


自分の余りにも身勝手な考え方に……たまらずクッカに話しかける。


「自分の身勝手を治す方法はないかしら?」


私の問いかけにきょとんとした顔を向けて


「女とは身勝手なものなのですよ」


クッカがわかったようなことを言い、その様子がとても可愛らしくて

私の中にある妙な気持ちが少し霧散してしまう。


クッカと話しているうちに、女性でも男性でもいいかなっと思い。

私は無難な返事をセツに返したのだった。







読んでいただきありがとうございます。

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