『 トゥーリ : はじめての手紙1 』
アネモネの章1 ~ ミヤコワスレの章1の間の手紙
セツナ → トゥーリ
ネタバレがありますので、本編がまだの方はご注意ください。
私の一日のはじまりは、クッカが入れてくれるお茶ではじまる。
寝ぼける事はないけれど、今までは時間の感覚というものがなかったから
慣れるまで少し時間がかかってしまった。
セツと出逢った日を境にガラッと変わってしまった私の生活は以前とは比べ物にならないぐらい
穏やかな時間が流れていて、今はセツに頼まれて作っている薬草園の手入れをしている
クッカを眺めていた。
私はこれといってすることもないので、一日のほとんどをクッカのお仕事を眺めているか
クッカとお話しているかなのだけど
今の状況になれてくると私も何かしたいと思い始めてしまう。
何かが満たされると……その次の何か
そういうことを望んではいけないと思っているのに、考えてしまう私はなんて欲深いんだろうか。
セツが私の為に置いていってくれた本も全部読んでしまっていた。
久しぶりに手に取る紙の感覚にしばらく表紙をなでたり、本をパラパラっとめくってみたり。
本の続きが気になるのに、読んでしまうと終わってしまうという
複雑な葛藤と戦う事になったのも久しぶりだった。
読み終わったあとは、物語の余韻に浸りながらも
この続きはもう読めないんだという切なさに胸が痛くなったり。
本というのは、物語の中の話を楽しむだけでなく
その途中途中でも様々な感情を揺り起こしてくれるような気がする。
私は本を読むのがとても好きだったので、セツがトゥーリは本は読むのかな? っと
聞いてくれたときは思わず自分の立場も忘れて頷いてしまった。
私の反応に、嬉しそうに笑っていたセツの顔が思い浮かぶ。
セツはなぜあんなにも喜んでいたのだろう……。
クッカが可愛い声で、可愛い歌を歌いながら薬草のお世話をしている姿は
とても微笑ましくてそれと同時に私も何か手伝う事が出来ればいいのにっと思ってしまう。
ふっと何かが光っているような気がして後ろを振り向くと
机の上の魔法陣が光っていた、目を細めて机の上を見つめていると
光がスーッと引いていった後の魔法陣の上には手紙が一通乗っていた。
クッカも魔法陣が光っている事に気がついたのか、こちらに走ってくる。
「ご主人様からお手紙ですか?」
「そうみたい」
「クッカもお手紙ほしいのですよ」
クッカが私の手紙を見て少し拗ねたような声を出す。
その時、クッカの机の魔法陣が光だし光が収まった時には同じように手紙がおかれていた。
私は内心、クッカにも手紙がきてよかったと息をつく。私だけに手紙きて、クッカに来ないのは
やっぱり可哀相だから。
「よかったね、クッカにもお手紙が届いたわ」
「わーい、クッカにもお手紙きたのですよ~!」
自分の机の上に届いた手紙を嬉しそうに手に取るクッカ。
その様子を微笑ましくおもい、自然と口元が緩む。
ふっと、クッカは文字が読めるのかしらっと思い、クッカに文字が読めるのか聞くと
「クッカは精霊文字なら読めるのですよ~」
クッカに薬草の種とか薬草の苗が届くときにメモ用紙みたいなものが
何時も一緒に添えられていた事に気がつく。
クッカはそれを読んでいたという事は、そのメモは精霊文字で書かれていたのだろう。
ここに幽閉される前は
精霊文字も習っていたのだけれど中途半端で終わってしまっている。
セツに少し教えてもらおうかしら?……。
ん……クッカも読めるならクッカに教えてもらってもいいのよね……。
そんな事を考えながら、私もセツから届いた手紙を手に取ってみる。
クッカはもう夢中で読んでいる。顔はとても幸せそうに笑っていた。
私も封筒に視線を落とす。
几帳面に封蝋で閉じられている封筒には何もかかれてはいなかったけど。
かすかに花の香りがする。不思議に思いながら封筒を裏返してみたりするけれど
香りが何処から来るのかはわからなかった。
封筒を開けようと思うのに、指が動かない……。
セツからの手紙に何が書かれているのか少し怖い。
私に対してとても強い感情を見せたセツ……。
手紙も同様に激しい感情がぶつけられているとしたら
私はセツにどう返事をしていいのかわからなかったから。
私は……どうしたいのだろう?
セツから手紙が来た事は純粋に嬉しい。
私の事を忘れずに居てくれた、手紙を送るという約束を守ってくれた
嬉しいのに……セツからの手紙を読むのが怖いなんて……。
複雑な胸中を押し隠すように、封筒の封を切り便箋を出す。
二つ折りにされた便箋を開くと、とても秀麗な文字が目に飛び込んできた。
” …… 親愛なる、トゥーリへ ……”
そうはじまる手紙に、私はひとつ深呼吸をし読み進めるのだった。
読んでいただきありがとうございます。