絵のなかの殺意
するなら早めにしていこう。
二枚の絵が並んでいる。一枚は赤い傘を持った女の子が、歩いている。もう一枚はその女の子が教室で、机に向かって勉強している。私は知っている、絵に描かれた彼女を。どうしてこのシーンを描いたのか、知りたかった。だけどもう、聞けない。
「ねぇ、」
ある朝の日、まちが静かにまだ眠っている時、この絵は日向野交流館の玄関先に置かれていた。
「よければ、まちのために使ってください。」
そう書かれた手紙と五百万円が入った封筒がこの絵と一緒に置かれていた。
「朝、交流館の前にこの封筒が置かれていました、この絵と一緒に。」と日向野交流館で働く事務員は、それを市役所に届けた。お金は市役所の人間に回収されたが、その手紙と、絵は回収されなかった。事務員は、とても立派な絵だから交流館に飾ろう、と言った。
その朝のことだった。
「続いてのニュースです。昨日、西日向野市にある住宅街で女子高生が殺されているのが発見されました。死因はナイフのような鋭利な刃物で腹部を刺されたことによる、失血死とされています。現在も犯人は捕まっておらず、警察は行方を追っています。続いてのニュースです。きょう明け方、西日向野交流館に・・・・・・・・・・・・・」
夏休み明け、学校に行った時、彼女が亡くなったと聞いた。今朝のニュースがあの子のことを言っているなんて信じられなかった。刃物で男に殺されたと聞かされた。彼女の席には、花瓶に入った黄色のフリージアが置かれていた。水は少なかった。
今朝のニュースがふと蘇る。死因、ナイフ、失血死、テレビで聞いた言葉を思い出す。
黄色のフリージアのように彼女は無邪気で、天真爛漫な子だった。話しているとこちらまでもが元気になれる、そんな子だった。あの花は彼女の性格や雰囲気を思って置かれたのだろうか。私は許せなかった。犯人と、会いたい、と思った。
私は、始業式の放課後、花瓶に入っている花と水を変えた。
学校の近くにあるお花屋さんで白いスノードロップを買って、花瓶に挿した。
その後、私は犯人の元へ行った。誰が彼女を殺したのか、目星はついていた。
その道中、私は刺された。胸を一突きだった。痛みはなかった。
二枚の絵が並んでいる。一枚は赤い傘をさし歩いている女の子の後ろに、私がいる。
もう一枚は、教室で机に向かって勉強をしている女の子を、後ろから私が見ている。
あの子を殺した犯人は、分かっていた。あいつは、私があの子を見ていることを、知っていた。恨むような目線で見ていることを。だから、私があの子を殺す前に、殺したのだろうか。あの子が他人の手によって、汚されてしまう前に、自分であの子を汚したかったのだろうか。
「ねぇ、あなた、あの子のストーカーでしょ?」と、聞こうと、思っていたのになぁ、
と、私は二枚の絵を見ながら、今日も思う。
始業式の朝に花瓶が置かれていた。
ニュースが入ったのは今日の早朝だったのに。しかも、置かれたばかりのはずの花瓶には、水が少なかった。
誰が花瓶を置いたのでしょうか。




