被害者が加害者で
ちょっとだけホントの話を混ぜて書いたホラー。
この冬、一人の男が自ら命を断った。
「あの子のために、最善だと思ったんだ」
電話口で、彼はそう言い残していた。
死因は自殺。規模の小さな通夜と葬式が、ひっそりと執り行われた。
「この、泥棒」
「会社のカネを返せ」
僧侶の読経の合間に、ヒソヒソと、そんな声が聞こえてくる。
「絶対返すって。あの子は言ってたんだ」
彼は、生前そう言っていた。
「あの子って、誰だよ?」
「ネットで知り合ったんだけど、すごく良い子なんだ。若いのに謙虚で、苦労人でさ」
「会ったことはあるのか?」
「まだないよ。忙しいみたいだし。でも、そのうち会いたいな」
「チャット友達くらいならいいけど、気を付けろよ」
俺は、そうやって警告したつもりだった。
「あの子を助けられるのは、俺しかいないんだ。カネ、貸してくれ」
「無理だ。どう考えてもロマンス詐欺だろ」
彼は、どんどん深みにハマっていった。
「この、分からず屋。友達の縁を切るっ」
「金を貸さないだけで、友達をやめるのか。……そうか、残念だな」
もう、助けようがなかった。
だが、「絶対返すって言ってたから」という理由で、
会社のカネに手を出すのは、違うだろう。
「どうしよう、あの子と連絡が取れない」
「だから言っただろう。俺はもう知らん」
「俺は悪くない。絶対返すって言ってたもん」
「……『もん』とか言ってる場合じゃない。子供かよ」
「カネを返せなくて、会社をクビになった。退職金を没収されても、まだ足りない」
「業務上横領で刑務所に放り込まれなかっただけ、まだマシな会社だ」
「……今までありがとう。じゃあな、親友」
「おい、待て。早まるな」
それが、最後の電話だった。
「あの子を助けたい」という正義感を焚きつけられた暴走が、アイツを犯罪者にし、死に追いやったのだろう。
悪にはブレーキがあるが、正義には、それがない。
(おしまい)
ロマンス詐欺の女性にすら、見捨てられた私ですが。
投資関係の電話もね……事実確認をか優先させたら、電話切られたし。
まぁ「ヒマつぶし」で相手しただけなんだけど。
距離をとってアウトボクシングに持ち込むと、詐欺師は弱いみたいですね。
いや、普通の営業担当の場合は、ブチギレるんだけどさ。
つくづく営業の人と相性が悪い。




