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サリエラ地上に立つ!?

おっちょこちょいの天使サリエラは大天使ミカエル様に日本へ行って修行してこいと追い出され、もとい、旅に出されてしまいました。地上に降り立ったサリエラですが、さてこれからどうしようかと公園のベンチに座りひなたぼっこをしながらママさんたちの井戸端会議に耳を傾けていたら、、、

「はぁ」


わたしは、ため息をついた。


わたしは、どこにでもあるような午後の公園で、OLのお姉さんのような格好をしてベンチに座っている。


子供達が遊んでいて、母親たちが井戸端会議にいそしんでいる。


わたしこと、サリエラは天使である。背中からは白い羽が生えているし、頭の上には光る輪っかが浮かんでいる。


「はぁ、ここが日本かあ」


二つ目のため息をついて、ひとりごちる。


もちろん、周りの人々からは普通のOLに見られるように偽装している。地味目のグレーのタイトスカートに白いブラウス、ブルー系のニットを肩からはおっていて、羽と輪っかは見えないようにしている。


わたしの本当の姿は普通の人には見えないのだ。そう、普通の人には。


「あの」


と、高校生と思しき女の子が声をかけてくる。


あー、ナンパかなあ?ナンパだよね。わたし可愛いし。女子高校生がOLをナンパなんてするんだっけ?いーや、きっとナンパだ、そうにちがいない、とわたしは心の中で思いながら。


「なんでしょう?」


とにっこり笑って返す。


「お姉さん、それコスプレですか?」


え?どう言う事?わたし、OLに見えない?OLのコスプレしてる変な人ってこと?


「そ、それは、どういう、、、」


女子高校生はわたしの笑顔に顔を赤くしてドギマギしながら。


「え、と。その羽とか頭の上の輪っかとか、どうなってるんですか?」


と聞いてくるではありませんか!


「えっ!うそ!ほんと?キミ、これが見えるの?」


彼女は、きょとんとした表情で小首をかしげながら返事をする。髪は後ろで三つ編みにして右肩から前に流していて、つやつやしてとてもキレイ。黒縁メガネをかけていて、ん、なんか美形。


「あ、はい?見えて?ますけど。なんか、すごい本物っぽいですね。」


なんてことだろう。わたしたち天使の真の姿が見える人間もいるとは知っていたが、それは百万人に一人くらい。まず、そこいらで出会うようなことはないはずなのだ。美形とか言ってる場合じゃないよね、これ。


「えーと、ああ、はい。コスプレです。」


でも、そう言うしかないよよね。だって、だって、はいわたくしは天使でございます、なんて言っちゃうわけにもいかないし。まあ、絶対に言っちゃいけないってことでもないんだけど。言ったって、普通は信用されないし。


「えー!すごいですね!まるで本物みたいです。どうなってるんです?これ?ちょっと触ってみてもいいですか?」


さすが女子高校生、遠慮がない。そう言いながら、すでに右手がわたしの羽に向かって伸ばされている。


「あっ、ちょっちょっと、そこは。ひっん。待って、さわっちゃダメ。」


あ、びっくりしてる。それはそうだよね。コスプレのはずの羽にさわったらOLのお姉さんが変な声を出すんだから。あれ?これってほとんどただの変態さんでは?


「ご、ごめんなさい。勝手にさわっちゃダメでした?」


「ううん、そうじゃないんだけど。これにさわられると変な感じがして、、、」


女子高校生は大きな目をさらに大きく見開いて。


「と、いう設定なんですか?」


うーん、そうだよなあ。そう取るしかないよなぁ。なんか、いきなり変態設定のコスプレお姉さんになってしまった。


「そ、そうなのよ。そういう設定なの。ほほほ。」


あ、なんか引いてる。それは引くよなあ。コスプレの羽にさわったら変な声をだしちゃうOLって危なすぎないか。


「そ、そうなんですね。実はわたしも少しコスプレをたしなむものですので。よく出来てるなぁと。」


そうかあ、本物のコスプレイヤーさんだったのか。このコ。


「あ、わたしは萩原まゆっていいます。」


お、礼儀正しいじゃない。名乗られたら、名乗り返すのが武士というもの、いや、天使だけど。


「ご丁寧にどうも。わたしは伊藤紗理奈よ。」


と、サリエラと似たような名前を事前に用意しておいたので、名乗ることにする。せっかく、わたしたち天使の真の姿を見ることが出来る人間と出会えたのだし、仲良くなっておいた方がいいわよね。


「その、輪っかの方ってどうなってるんです?宙に浮いているように見えるんですけど。」


ぎくり。そうだった、羽はともかく輪っかの方は見た目でヤバい。天使の光輪っていう正式名称もあるんだけど、天使の輪っかの方が通りはいいわよね。これが浮いてるのって、人間的には明らかにおかしいわけで。


「えーと、これは、ほら、あれよ、あれ。超電導磁石!リニアモーターカーってあるでしょ。あれと同じ原理で浮いてるのよ。ほほほ。」


あー、だめだ、適当な理屈をこねてみたけど、リアリティがなさすぎる。いやいや、そもそも天使がここにいるって事自体リアリティなんてないんだけど。いえ、リアルですが、なにか?


「ふーん、よく出来てるんですね。すごいなぁ。」


今度はさわらず、手を出さずにしげしげと見つめている。あ、なんか顔が近い、近い。うわ、まつ毛長いなこのコ。唇もピンク色でぷるぷるしてるし。


「そ、そうなのよ。自信作なんだから。すごいでしょ。」


まゆちゃんは、へーとかむーとか言いながら、しげしげと輪っかを見ている。あん、そんなに見ないで。


「紗理奈さん。」


「は、はい。なんでしょう?」


あら、ちょっと急にきりっとした口調になったわよ。どうしたのかしら。


「紗理奈さんは、本当の、本物の天使ですよね?」


えー!どうしてそういうこと言うかな?ちょっと、ちょっと、どうして分かっちゃったの?わたしが超伝導とかリニアとかわけのわからないことを言ったのがダメだった?


「えーと、えーと、えーと。て、天使?わたしが?」


わあ、もう、そんなに見つめないでよ!じーっと熱い視線がわたしの輪っかと羽に向けられてる。


「ほほほ。そんなに可愛らしいかしら?わたし?」


ちょっとわざとらしくシナを作ってみせたりして。いやだ、天使みたいに可愛いのかしらわたしって、もう。そりゃあ、天使だものね。え、そういう意味じゃない?


「可愛らしいかどうかというか。そうですね、これ、本物ですよね?」


あ、さわっちゃダメだって。まゆちゃんがわたしの羽をさわさわしてくる。あ、ダメえ。


「あたたかい。それに、筋肉?がありますよね。微妙に動いてるし。」


「それに、本当に感じてません?設定じゃなくて?」


うーん、これはもうバレちゃった?バレちゃいけないんだけど、見えちゃうコには仕方ないのよね。


「あの、まゆちゃんは、こういうのよく見えたりするの?」


まゆちゃんがメガネの奥からじーっとこちらを見つめてくる。


「こういうの?って天使の羽とかですか?そうですね、天使は初めて見ましたけど、なんかいろいろ生えてたり出てきたりとかはありますね。」


あー、もう、そういういろいろ見えちゃうコなのね。これはもう仕方ない。


「はい、そうですね。わたしは天使です。」


そう聞いたまゆちゃんの表情がぱぁっと明るくなる。すっごく楽しそう。


「おー!本当の、本物の天使!すごい!」


だから、そんなにさわっちゃダメだって!まじでヤバいです。それ以上はダメえ。


「ちょっと待って、待って。さわるのはおしまい。」


「あれ、設定じゃないんですか?ひょっとして?」


はい、そうです。設定じゃありませんね。とっても感じちゃうんです。だからさわっちゃダメなんです。


「あはは、設定ってことにしときましょうか。ははは。」


「ははは。なるほど。設定ですね。わかります。」


あー、もう笑われちゃった。だって、だって、仕方ないじゃない。


「まゆちゃん、このことはここだけの秘密ってことで。ね?」


まゆちゃんはにっこり笑って、くるりと回り、こちらを見つめながら言った。


「そうですね。二人だけの秘密、いいですね。設定ってことで。」


「あ、はい。そうしていただけると。」


なんかまだ羽にさわりたそうだ。たぶん、すきをみせたらさわってくるやつだ。セクハラだ。外から見ると、こっちがセクハラしてるっぽいけど。


「それで、天使さんはこんなところでなにをしてるんですか?」


あら、いいことを聞いてくるわね。そう、大事なことはなにをなすべきかよね。ただ単にベンチに座ってひなたぼっこしながら、ママさんミーティングに聞き耳を立てたりしていたわけじゃないのよ。


「よくぞ聞いてくれました!実はわたしは天界の大天使ミカエル様から日本へ行って修行してこいと追い出され、、、もとい、旅に出されたところでして。」


まゆちゃんは真面目な顔でふむふむと聞いてくれてる。


「まずは、生活の拠点を確保して、手当たり次第に人々の人生に関与して、神の御威光を示すのが目標なのです。」


「生活の拠点?」


「そう、生活の拠点。」


「神の御威光?」


「そう、神の御威光。」


なんか、自分で言っておいてなんだけど、身も蓋もないよね。これ。生活の拠点ってなに?だってだって、天使だって寝るところは必要だし、お風呂も入りたいし、トイレもきれいな方がいいし。


え?天使がトイレに行くのかって?そんな昭和のアイドルじゃあるまいし、トイレにだって行きますわよ。ほほほ。


「それは、つまり、まず不動産屋さんに行くってことでいいですか?」


そうそう、それよそれ。不動産屋さん。っていうのよね。アパートだかマンションだかを借りるか、家を買っちゃうかしないと住むところがないわけだから。


「お金って持ってるんですか?」


まあ、天使がお金を持ってるかなんて、それは心配しちゃうわよね。神様もカエサルのものはカエサルに返しなさいなんて言ってたわけだし、天界にお金なんて持っていけないことになってるからね。でも、大丈夫。


「ふふふ、路銀はちゃんともらってあるわよ。」


ほら、ここにちゃんとミカエル様からもらってきた路銀が。


「ろ、路銀?」


「そう、路銀。ほら、これ」


「ど、ドル?」


「、、、ドル?」


もう!どうしてドルなの!日本へ行けって言われて来たのに、どうしてドルを持たせるのよ!


「それだと、そのままじゃ使えませんね。」


ご指摘の通りでございます。ここはアメリカではないし、東南アジアでもないので、ドルをそのまま使えない。日本ってそのへん不便なのよね。


「あの、両替します?」


「きゃあ!両替してくれるの?」


わーい、助かった。これで万事解決。えーと1ドルが今はいくらなんだっけ?


「いえ、わたしは両替出来ないですよ。銀行へ行って両替しましょう。」


あら、そうなのね。まあ、そりゃそうか。高校生が大金を持っているわけはないし、両替出来ても数千円とか一万円がせいぜいよね。


地上に降り立った天使サリエラと見えちゃう女子高校生まゆちゃんの出会いが波乱を生み出す!?かもしれません。二人の出会いが幸多からんことを祈りつつ、次回は部屋を借りれるといいですね。

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