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Leben   作者: 流羽
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5: お願い

「あ、ルカさん、お疲れさまです!

今日も早いお帰りですね!」


門兵の1人がルカに声をかける。


「あぁ、今日の討伐もすぐ終わった」


「さすがですね!まぁこの辺だとルカさんが苦戦するような魔物はいないですから当たり前のことですけど、あ…でも最近は、、………あれ?そちらは?ルカさんのお連れ様ですか?はじめましてですね」


おそらく門兵はルカしか見えていなかったのだろう。門兵としてそれはどうなのかと思ってしまうほどの緩い仕事ぶりに、ここに来たばかりのノインでさえ不安を覚える。


「……はじめまして…」


ルカの後ろから顔を覗かせるように挨拶したノイン。その顔は少し引きつっているようだ。


「いやールカさん、こんな美しい方とどこで出会ったんですか?これまで多くの人がこの門を潜って行くのを見てきましたが、その中の誰よりも美しいと思います!お名前を聞いてもいいですか?いいですよね!お美しいお嬢さん、私の名前はサムと言います。お嬢さんのお名前は?」


明るい門兵サムの勢いが怖い…


「………こいつたぶん男だぞ…。森で魔物討伐中に会ったから王都まで一緒に来ただけだ」


「え!?男…!?えぇ…!!」


「…ね…ねぇルカ、この人、というかこの町?大丈夫なの?」


ノインが少し困ったようにルカに問いかける。

門兵なら男でも女でもまず警戒するべきでは?いや、これは作戦なのか?あえてこの態度をとって相手を油断させて探りを入れているのか??


「あぁこの門兵はともかく…他のやつらは真面目に仕事してるから町中は安全なはずだ」


…”はず”って……ここ王都だよね?いいの?そんなんで…

ノインの思う門兵のイメージと目の前の門兵があまりにかけ離れすぎていることと、ルカのてきとうな返事のせいで不安しかない。とりあえず「この門兵は」という言葉からサムのこれは通常運転で、素が残念なのだろう…という結論に至った。


「ん、わかった…。サム、俺のことはノインって呼んで。美しいと褒めてくれたところ悪いけど、残念ながら俺は男だよ、よろしくね」


「そんな……!こんなに美しい人が男だなんて……詐欺だぁぁぁあああ!!!ねぇノインちゃん?嘘だよね?嘘だと言って……!」


「俺は男だ」


「あぁぁぁぁぁァァァァァァァ………!」


「はぁ………。もういいか?行くぞ」


眉間に皺を寄せたルカが一声かけて進んでいく。ノインもそれに続いて歩き出した。


「ぁぁぁァァァァァァァァ………!!」

「おいサムうるせぇぞ!仕事しろ!!」

「こりゃしばらく使いもんにならねぇな…」

「誰だよ、サム壊しやがったのは……!」


小さくなっていく門兵達のやり取りを背に感じながら、ノインはルカの後ろをついて行く。


「ねぇ、どこに向かってるの?」


「ギルド。依頼完了の報告をしに」


「(ギルドか、ちょうどいい)…ねぇルカ」


「なんだ?」


「ギルドに行ったら、俺も冒険者になれる?」


「…冒険者になりたいのか?」


「ん。俺、特にやることも無いし、お金も無いし、記憶も無いし…冒険者として旅をしてたら俺のことを知ってる人に会えるかもしれないし」


そういえばこいつ、なぜか森にいたって言ってたな。なに聞いても知らないって言うし、自分の魔法のことでさえ…………


「そうか…確かにギルドで登録すれば誰でも冒険者になれるし、高ランクになれば生活も苦じゃない。お前の言うように旅をするつもりなら、ギルドカードは身分証の代わりにもなるから冒険者登録しといた方がいいかもな」


「でしょ?…だからさ、ルカにお願いがあるの」


「………お願い?」


ルカの眉間に皺が寄る。


「そ、お願い」


基本的にルカはめんどくさい事はしたくない。だが、面倒見の良さからか、めんどくさい事に巻き込まれることは多い。そのためノインの”お願い”に対してもルカは慎重になる。


「………なんだ?まずは聞いてやる」


「ん、あのね、、俺に冒険者を教えて」


「………冒険者を………教える………?」


「そ、俺冒険者について何も分からないから…」


「ギルドでの登録から依頼の受け方、報告の仕方とかをひととおり教えればいいのか?」


「ん」


「そういうのはギルドの職員が教えてくれるはずだが…」


「そなの?…でも現場のことをよく知ってる先輩冒険者に聞いた方が分かりやすそうだし、現場で使える知識を得られそうな気もする」


何も知らないと言いながら、冒険者を知るには1番良い方法を見つけている…。知らない森にいたことや記憶の無い自分に対しても特に慌てることなく落ち着いて行動していたこと、自分のチカラを魔物との実戦で試した度胸、時折子供っぽい部分が垣間見えるものの、基本的に落ち着いていて冷静な判断をするノインと名乗る青年。ルカが興味を持つには十分だった。つまるところ、めんどくさいという感情よりも謎だらけの不思議な青年への興味が勝ったのだ。


「まぁギルド職員が教えてくれるのは基本的なことだけだからな………わかった、教えてやる。まずはそこのギルドで登録するぞ」


「やた!ありがとルカ」

2人はギルドの中へと入っていった。

꒰ঌ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼໒꒱



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