4: 町へ
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「………………」
「…なるほど、少しわかってきた」
ノインが魔物と戦い、自身の魔法を理解していく毎にルカが頭を抱え、眉間に皺を寄せることが増えた。
………戦ってもいないのに疲れた…
そう思いながらもノインに問いかけるように会話を繋げるところにルカの面倒見の良さが現れる。
「………なにが分かったんだ?」
「とりあえず、使える魔法について。
こっちの能力だけはよく分からないままだけど」
と、ふわふわと体を浮かせながら話す。
「そうか」
もう驚かない…いちいち驚いているとキリがない。
これまでノインは襲い来る魔物を様々な属性魔法で倒して来た。そのどれもが初級魔法だったが、威力がおかしかった。
「ルカ、どしたの?」
「…なんでもない」
ルカは頭を抱えながらも考えることを諦めた。必要であれば追求すべきだが、今のルカにとってはノインのことを深く知る必要は特にない。その時が来たら確認すればいいし、知らなくても何も問題はないのだから。
「疲れたなら少し休む?」
「いや、今は先を進もう」
「んー…あ、それなら!」
くいっ!ふわっ…
「!!?……おい…」
「ん、これで少しは休めるでしょ?」
得意気に話すノインの横に宙に浮いたルカがいた。
「自分以外も浮かせられるのか…」
「そうみたい」
「……みたいって………」
「でも、自分を浮かせる以上に疲れそう」
さすがに浮いたことなんて無いから驚いた…
「…助かるが、疲れるならやめとけ。無理するな」
「ん、まだ大丈夫」
「そうか」
「ね、町まであとどのくらい?」
「もうすぐ森を抜ける、すぐに町が見えてくる」
もう少しで町…!どんなとこだろう
「あ、そうだノイン」
「ん?」
「町では飛ぶなよ、、森を抜けたら飛ぶな」
「え……」
「お前のその能力は特殊すぎる…」
「………そうだね」
「そろそろ降ろせ」
「ん」
「……ありがとな」
ルカの言葉に、にこりと綺麗に微笑むノイン。
その顔はノインの年齢にそぐわない表情だった。
「…見えてきたな」
森の終わりと共に大きな塀に囲まれた町が姿を現した。門まではもう少し距離がある。
「わ……」
目を大きく開いて固まっているノインに問いかける。
「どうした?」
「………町、おっきいね」
「まぁ、王都だからな」
「王都………」
ノインから表情が消え、その歩みも止まった。
「…で、あそこの門兵に……、、?…ノイン?」
それに気づいたルカも歩みを止めた。
なんだ………?
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『て …を…………が…………の………だ!』
頭の中で名も知らぬ黒髪の男がなにかを言った瞬間、ノインは刺すような視線で門兵を睨みつけた。その表情は森でのノインとは異なり酷く冷たいものだった。
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「……?……イン?おい、ノイン!」
「!!?………ルカ……?」
「どうした?」
「な、んでもない……」
すぅ…はぁー!ゆっくりと深呼吸した。
「……………。そうか、行くぞ」
「ん」
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気になることはあるが、今は町へと進むことを優先した2人は王都の門に向かって歩き出した。
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ルカは面倒見のいい性格。
話すのは苦手、基本は口出しせずに見守るタイプ。