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Leben 休載  作者: 流羽
3/7

2 : お試し

「行くぞ、街はこっちだ」

町に向かって歩き出した2人

「ねぇ、ルカはなんで森に居たの?」


しばらく無言のまま歩いていたが、先程目覚めたばかりのノインには知らないことが多すぎるため、情報収集のためにも聞いてみることにした。


「依頼を受けて魔物狩りに」

「依頼?」

「あぁ、冒険者だからな」

「……冒険者?」


ほんとに何も知らないんだな………

ルカの眉間に皺が寄る。

「拠点を持たず各地で好きに活動するやつらのこと、ギルド登録さえしたら、どこのギルドでも依頼を受けることができてその報酬で生活できる」


「なるほど」

冒険者……か……いいね…

初めて聞く冒険者という言葉、そしてその仕組みも気に入ったノインは次の質問を投げかける。


「さっきルカが倒してた魔物…ルカには弱すぎない?」

「………確かに…物足りなかったな」

「だよね、もっと強い魔物の討伐依頼とかないの?」

「ある」

「なんでそっち受けなかったの?」


誰もが抱くであろうその疑問は至極真っ当だ。なぜなら先ほど見たルカの剣の一振は魔物をいとも簡単に一刀両断にする程だったからだ。


「今日は近場の気分だっただけ」

「気分?」

「そ、気分」

「ふーん」

「基本はランクに合わせた依頼を受けるんだが、たまにその時の気分で下の依頼も受ける」


ただの気分だった…。深い意味は特に無く、ただその時の気分で依頼を選んだ結果、物足りない状況に陥っていただけだった。分かっていただろうに、なぜ受けたんだ…という疑問も浮かんだが、”そういう気分だった”なら仕方が無い…。ノインは次の質問を投げかけることにした。


「ランクがあるんだ」

「ああ」

「ルカは?ランク」

「A」

「今回の依頼のランクは?」

「…………D」


正直、そのランクの差がどれくらいあるのかは分からないが、それでも分かる気がしたノインは少し困ったような表情で同調することにした。


「なるほどね……それは物足りなさそう」

「………まぁ…近場の依頼はこんなもんだな」

「そうなんだ…、…!?」


突然、一部の葉が揺れた。

その方向をじっと見つめて身構えるノイン。


………反応が早い、慣れているのか……?

ノインの反応に感心しながらも、そっと剣の柄に手を添えるルカ。


「魔物だ」

先ほどルカが倒していた程度の魔物ならきっと倒せるだろう…と判断したノインは…あることを試すために討伐を引き受けることにした。


「…ねぇ、俺やってもいい?」

「できるのか?」


ノインの発言に対して、思わず浮かんだ言葉を口にしてしまった。決して、彼を弱いと判断したわけではないが、これまでの会話から何も分かってなさそうなノインを戦わせてもいいものかと思ってしまったルカ。

そんなルカの心情に気づいたのか、ノインは即答した。


「たぶん大丈夫」

「……」

「魔法は使えるし…やってみたい」


正直ノインの実力は見てみたい。

それに、なにかあっても助ければいい…

ほんの少しだけ考え、ルカはノインの希望を飲む。


「…………任せた」

「ん」


姿を現した狼のような魔物。

ノインは少しのあいだ宙を眺め、何かを思いついたように笑った、その瞬間、………パキ…キ…!パキン……!


魔物に向けた手がくいっと上に返されたと思ったら、敵を囲うように大きな氷が出現した!


……氷の属性魔法…

魔物を凍らせずに周りを囲っただけ。

遊んでるのか……?ルカはその戦闘を黙って見ている。


グルルルル…!

ガゥ!!


逃げ場を失った魔物はノインに向かって飛びかかってくる


「……おっと…!」


ふわりと軽々しく空へと避けるノイン。

美ししく光る銀髪がさらりと舞った。


………浮けるのはずるいよな………

ルカは軽くため息をつく。


氷に囲まれた魔物の攻撃は、宙に浮いたノインに届くことはなく、何もできなくなってしまった。


グルルルル…!!!


狼の魔物の攻撃をひらひらと避け続けるノインの戦闘を見かねたルカがため息混じりに声をかける。


「…………で?どうするんだ?」

「んー、避ける練習もできると思ったんだけど…そろそろ他も試そうかな」

「……試す?」

「ん」


再びノインが魔物に手をかざすとくいっと数回、手首を返した。


グルルル……ゴポ……!

最初に水が魔物を包んだ。


……水…?


それに続くように、風が魔物の周りを包んで体を浮かせ、雷の刃が四方から魔物に向かって飛んでいった。


……!?………は??


ギャン……!!

魔物は黒く焼け焦げ、強く地面に叩きつけられた。


「………もう少しいろいろ試したかった…」


宙に浮いたまま呟くノインと、頭を抱えて考え込むルカ。


……今、何属性使った?氷、水、風、雷………

4属性を使いこなす魔法使いなんてそう居ないぞ…

しかも無詠唱………王都どころか世界中探しているかどうか………


「…………ルカ?」

ふわりとルカの頭上から除き込むノイン。

「!!?」

「どしたの?」


眉間に皺を寄せたルカが深くため息を吐く。

……はぁぁぁ………考えても埒が明かない…

いまは考えるだけ無駄だな。


「ノイン…」

「ん?」

「お前、何属性の魔法を使えるんだ?」

「………知らない」


やっぱりか……


「試したいって言ってたのは、何属性使えるかってことか?」

「ん。実際に戦闘に使える魔法がどのくらいあるのか……かな」

「………で。さっきの4属性が全部か?」

「いや、まだある……と思う」


……あるのか……薄々そんな気はしていたが…

ルカは再び頭を抱えた。


「他の魔物も俺がやっていい?」

「……ああ、好きにしろ」

「ん」

そんな会話をしながら森を進み、魔物に遭遇する度にノインは魔法で軽々相手を倒し、ルカを驚かせた。

「………………」

「…なるほど、少しわかってきた」


ノインが魔物と戦い、自身の魔法を理解していく毎にルカが頭を抱え、眉間に皺を寄せることが増えた。

………戦ってもいないのに疲れた…

そう思いながらもノインに問いかけるように会話を繋げるところにルカの面倒見の良さが現れる。

「………なにが分かったんだ?」


「とりあえず、使える魔法について。こっちの能力だけはよく分からないままだけど」

と、ふわふわと体を浮かせながら話す。


「そうか」

もう驚かない…いちいち驚いているとキリがない。

これまでノインは襲い来る魔物を様々な属性魔法で倒して来た。そのどれもが初級魔法だったが、威力がおかしかった。


「ルカ、どしたの?」


「…なんでもない」

ルカは頭を抱えながらも考えることを諦めた。必要であれば追求すべきだが、今のルカにとってはノインのことを深く知る必要は特にない。その時が来たら確認すればいいし、知らなくても何も問題はないのだから。


「疲れたなら少し休む?」

「いや、今は先を進もう」

「んー…あ、それなら」


くいっ!ふわっ…

「!!?……おい…」

「ん、これで少しは休めるでしょ?」


得意気に話すノインの横に宙に浮いたルカがいた。

「自分以外も浮かせられるのか…」

「そうみたい」

「……みたいって………」

「でも、自分を浮かせる以上に疲れそう」


さすがに浮いたことなんて無いから驚いた…

「…助かるが、疲れるならやめとけ。無理するな」


「ん、まだ大丈夫」

「そうか」

ルカにとっては楽できる上に不都合なことは全くないため、ノインの好きにさせることにした。


「ね、町まであとどのくらい?」

「もうすぐ森を抜ける、この道をまっすぐ進めばすぐに町が見えてくるはずだ」


もう少しで町…!どんなとこだろうか…

ノインは逸る気持ちを抑えつつ、ルカの示した道を突き進む。


「あ、そうだノイン」

「ん?」

「町では飛ぶなよ、、森を抜けたら飛ぶな」

「え……」


ルカからの唐突な言葉に思わず言葉が詰まったノイン。ルカはその様子を見て、すぐに理由を述べた。


「お前のその能力は特殊すぎる…。目立ちたいならともかく、そうでないなら止めとくべきだ」

「………そうだね」


ノインはほんの少し前に目覚め、能力を理解したばかり。そんなノインからしたら、もっと飛んでみたい…という感情が表に出てきてもおかしくはない。なぜなら、今のノインには記憶がない、何も知らない子供のような感覚になってしまうのは至極当然のことであった。


だが、ルカの言うことも理解できる。それは思い出せない記憶の彼方で培われてきたものなのか…言葉や思考、理性などは一人前だった。そのため、ルカの言葉にも素直に納得することができた。

「そろそろ降ろせ」

「ん」

「……ありがとな」


ルカの言葉に、にこりと綺麗に微笑むノイン。

その表情はとても大人びた表情(もの)に見えた。


「…見えてきたな」

森の終わりと共に大きな塀に囲まれた町が姿を現した。門まではもう少し距離がある。


「わ……」

目を大きく開いて固まっているノインに問いかける。

「どうした?」

「………町、おっきいね」

「まぁ、王都だからな」

「王都………」

ノインから表情が消え、その歩みも止まった。

「…で、あそこの門兵に……、、?…ノイン?」

それに気づいたルカも歩みを止めた。

なんだ………?

『て …を…………が…………の………だ!』

頭の中で名も知らぬ黒髪の男がなにかを言った瞬間、ノインは刺すような視線で門兵を睨みつけた。その表情は森でのノインとは異なり酷く冷たいものだった。

「……?……イン?おい、ノイン!」

「!!?………ルカ……?」

「どうした?」

「な、んでもない……」

すぅ…はぁー!ゆっくりと深呼吸した。

「……………。そうか、行くぞ」

「ん」

気になることはあるが、今は町へと進むことを優先した2人は王都の門に向かって歩き出した。


꒰ঌ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼໒꒱


ルカ、がんばれ…と思うほど

彼を驚かせることが増えて来ました。

驚くことはまだあるよ、がんばれ……!

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