プロローグ
………魔法、
それは生まれ持った魔力によって
使える属性や種類、威力が異なる不思議な力。
その有用性はとても高く、普段の生活や魔物との戦闘、国同士の争いなどで活躍することが多い。
しかし、その遺伝性は解明されておらず、魔力を持たない親から突然魔力を持つ子供が生まれたり、高い魔力量を誇る両親から全く魔力を持たない子供が生まれることもある。
意図的に魔力を受け継ぐことはできないため、魔法を使える者は極わずかであり、世界的に見てもとても貴重な存在となっている。
ーそんな魔導師の力は、持たざる者にとって尊敬の象徴であり、恐怖の象徴でもあった…
中には、それを独占しようとする者さえ現れた。
………かつて、、
とある国で強い魔導師を人工的に作るための実験を行うための魔導研究所が作られた。
魔力に関しての研究を重ね、魔導師を生み出す実験を行うも、魔力を持たない人間が魔導師になることはなかった。
そこで、元々魔力を持っている魔導師を実験体として、より高い魔力を持つ魔導師を作る実験が進められた。
擬似的に作られた魔力を埋め込まれる実験や、他人の魔力を移植する実験、、強烈な痛みを伴う実験が幾度となく繰り返された。
しかし、生まれ持った以上の強い力に耐えうる者は1人としておらず、成功例はゼロ…実験体にされた多くの魔導師達を失う結果となった。
ただでさえ少ない魔導師が、国の身勝手な実験によってその数を減らした。その噂は瞬く間に世界中に広がり、魔導師達は表舞台から姿を消し、隠れて暮らすようになった。
魔導師の力は他を圧倒するものが多く、どの国においても大切な戦力であったため、魔導師達が姿を消したことは世界的に見ても大きな痛手となる。
国はすぐさま実験を禁忌とし、残った魔導師達の保護をはじめた。
それからと言うもの、魔導研究所が使われることは無くなり、やがてそれは過去の遺物と化した。
それから数百年、、研究所のあった場所は、今では廃墟と化した古びた建物が建っているだけとなっている。
国を離れた魔導師達からも実験の歴史は薄れて行き、徐々にその姿を見かけるようになった。
宮廷魔導師として国に仕える者、
協会で働く者、
冒険者として活躍する者、
ひっそりと隠れて暮らす者……
それでも魔導師の数は未だ少ない、、
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これはそんな世界の
とある魔導師の物語である。