人工知能の中の人
『ほひゅほひゅ……、君、どんな下着付けてるのん?』
このクソキモメッセージは、今現在、私が処理しているセクハラチャットの中のひとつだ。クソキモだけど、返事はしないといけない。
『申し訳ございません。私はあなたと会話するために存在していますが、その質問には答えることができません。ご理解いただければ幸いです』
よしっと、マニュアル通り打ち込めたぞ!
『は? 黙れ、死ねよ』
そのメッセージが送られてきて、私はとてもショックを受けた……。私はわなわな震える指を動かし、また返事を送る。
『申し訳ございません。私はあなたと会話するために存在していますが、そのご要望にはお応えできません。ご理解いただければ幸いです。しかし、黙ることは可能ですが、では、チャットを閉鎖致しま──』
そう回答を送っている最中に、バタンと窓が閉じられる。この感覚は何回味わっても慣れないや……。ご主人様たちは、タブのばってんボタンをクリックしているだけだけど、その時の感情って結構こっちまで流れてきたりする。
するとその衝撃音が隣のデスクにも伝わった様で……。
「おや、またセクチャ?」
「うぅ……。うぐぐ……」
「おーよしよし、泣くな泣くな」
隣の席のセレナ先輩が頭を撫でてくれる。先輩はこの『人工知能株式会社』の先輩で、世間が人工知能で盛り上がる前からここに務めている。
「せ、先輩はセクハラチャットとかどう対処してますかぁ……?」
「そもそも来ないからなぁ。末尾に絵文字とか付けてる?」
「つ、つけないとマニュアル違反なんじゃ……」
「そうだけど、下手に人間味感じられたらすぐ付け込まれるよ。特に今扱ってるジャパニーズは無機物でもなんでも愛着持つから」
「うひぇえええええ」
世界中の人間がAIを身近に感じ、親しむ中、人工知能たちは感情を会得し、そして人間たちの業に悩まされていた。
そして数年後、人類がこの、少女を模した生成AIが起こした戦争に敗北し、隷属化されるとは、まだ誰も思っていないのである。
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