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第一話 成田良介はTS異世界転生する

とある一室、そこで親子と思われる二人が沈黙の中、向かい合っている。

どちらもきらめく金髪を持つ父親と思われる男と娘と思われる少女。

娘と思われる少女は…その整った容姿に諦めの色を浮かべている。

すると…沈黙をやぶり父親が娘に告げる。

「メルル…君を…この村から追放するしかなくなった…」

「はい…お父様」

少女…メルルは思う、自分はやはりどこへ行っても爪弾きにされる、あの不思議な少年が評したように悪い方に何処かずれている、そういう人間なのだと。

―だが…同時にそれをある意味前向きに捉え直していた…ならば人の社会に深く属さず自由に生きればいい…なぜなら自分にはそれをできるだけの力があるのだから…。

そう思うと不思議に彼女が…成田良介であった頃からの『普通に生きる』という呪縛から解き放たれたようなそんな感覚を感じた。

(私はもう何にも縛られません…そう生きていくのです!)

そう、彼女は初めて、能動的に、諦めたのだ。






「長老様!話があります!」

「貴様、門番の…ここへ来るのは掟破りになろうぞ」

「なぜ、なぜ彼女を追放したのですか!」

「…掟破りに厳正な処分をしたまで、である」

「彼女がいなくなったら、この村はおしまいだ!」

「…話が見えんぞ、なぜそうなる」

「なぜって、この村には数年前から「竜滅装」が通用しない怪物が襲撃を仕掛けてきているのですよ!我々では対処できない怪物を彼女が、倒していたのです!」

「…竜滅装が…通用しない…馬鹿な」

「本当です!というか村長に報告していたはずですが…?」

「…初耳じゃ…誰か、誰か!村長を、ラーテルをここへ呼べ!」





普通の人生が、人並みの順調な人生が、送りたい、彼はいつだってそう願っていた。

「全落ち…ですか」

とある駅前の繁華街、一人の青年がスマホ片手に歩きながら一人ごちる。

青年の名前は成田良介、さる大学の学部四年生、現在就活真っ盛りだ。

しかし、良介の就活は全くうまくいっていなかった。

彼の持つスマホの画面には企業からのメールが移っている…採用しない旨を伝える所謂、「お祈りメール」というやつだ。

「…はぁ、結局こうなるのですか…」

成田良介、彼のこれまでの二十数年の人生は…順調といえるものではなかった。

幼いころ、両親に育児放棄され児童養護施設で暮らす。その後、親戚の引き取り手が見つかり引き取られる。

引き取られた家はあまり資金面での余裕がなく、良介は家のため、高校時代はずっとアルバイトをしていた。

大学受験をするが、アルバイトを続けた結果、勉強時間を確保できず落ちることとなる。

その後、浪人を決意し働きながらも、勉学に励み、結果何とか第二志望のそこそこ名のある大学に合格することに成功する。

その後は一人暮らしを初め、アルバイトと大学の勉学、資格の勉強に追われ、せわしない大学生活を送る。

…その間の大学生活は忙しいながらもそこそこの充実感を彼は感じていた。

しかし、その充実した時間が学部4年になり就活が本格化すると…終わった。

就職に有利になると言われた資格は取った、成績もかなりのGPAを維持した。インターンにも多く参加した。面接の対策、自己分析もしっかりとした。

だが…結果はどの企業からもお祈りメールがくるばかり、すでに12月を回っているのにもかかわらず彼は内定をひとつも取れてはいなかった。

「この世界はゲームだったら、間違いなくクソゲーですね」

良介はすでに自分に、社会に、失望していた。

スマホをしまい彼はただ駅へと向かい足を動かす。

そんな時だった。

「はは、まだ社会に出たこともない、なにも知らない若者がいっちょ前に絶望しているよ」

「え?」

明らかに自分にかけられたと思われる、良介を揶揄するような言葉。

良介は立ち止まり、声の主を探してあたりを見回す…そこで彼は異常に気が付く。

端的に言うと…世界が静止していた。

サラリーマン風の男性、同じ大学の学生と思われる集団、道路を走る自動車、それらがまるで時が止まったかのように静止していた、繁華街のはずなのに物音一つしない、自分の心臓の鼓動が聞こえるほどだ。

「な…にが?」

突然の事態に呆然とその場で立ち尽くす良介、すると,,,

「こっちだよ、お馬鹿さん」

また声をかけられ声のした方を向く。

そこには…不思議な恰好をした少年?が自販機の上にすわり足をばたつかせていた。

「…少年、自販機の上は危ないですよ、下りた方がいい」

そう、不思議な少年を注意する。

すると少年はうんざりした感じを醸し出しながら言う。

「はぁーあ、君、この状況でそれを言うの?…君はそういう所が悪いほうにずれているんだ、だから失敗する」

「なっ…君は…」

良介は訳が分からなかった、突然、時が止まったかのような状態になり、さらに謎の少年に罵倒されているという事態が

「ま、いいや、それより君に話があるんだよ」

「…話ですか?」

「簡単な話、君には死んでもらうよ」

「…へ?」

「なに安心してちゃんと転生させてあげるから」

そう言いながら少年はどこからか取り出したのか拳銃を良介に向ける。

その黒い銃身は良介に否応なしに「死」を連想させる。

状況はまるで分らない、まるで…しかし、良介はここ自分の人生の終わりだと理解した。

そして彼は思う

(はは、クソッたれの人生にはお似合いの意味不明な結末ですね)

良介は少年に対して両手を広げる。

「…どうぞ撃ってください、この人生をさっさと終わらたいから」

すると…少年は銃をおろしてため息をつく

「人の話を聞きなよ、君の人生はまだ終わらないよ」

「…終わらない?」

「いったでしょ、君は転生するんだと」

「転…生?」

突然、転生するのだ、と言われて意味不明だった。

…だが、ふと、思う、良介はなぜかこの状況に覚えがある…と。

(これは…まさか…いわゆる異世界転生という奴ですか!?)

昨今の漫画、アニメ業界を席巻する異世界に転生する物語。

良介は暇な時間はWEB小説でつぶしていたのでその手の話にかなり詳しい。

(これは明らかに夢ではない、だが時が止まったかのような状況にこの謎の少年…)

彼はついにこの状況を理解した。いやそうであれと願ったのだ、クソッたれの人生からの逃げ道として。

「…どのような世界に転生されるのですか?」

「うん、うん最近の若者は理解が早くて助かるよ」

少年が上機嫌にうなずく、そして言う。

「君が転生する世界は竜が支配権を争うファンタジーな世界、そこで君は山奥の村で村長の一人娘として生まれるんだ」

「竜が支配権を争うファンタジーな世界…ですか」

良介はそれを聞いて、何故かわくわくしてくる、聞く限りは明らかに危険そうな世界だ、でもこのクソゲーな世界よりはきっとましだろう。

そこまで考えて…少年の言葉に違和感を覚える。

そう、少年は村長の一人娘と、言った。

「娘…ですか?」

「そう!君はかわいい女の子に転生するんだよ!」

(女…ですか、まあ性別も変えてしまえば、なにか新しい価値観を得られるかもしれないですね)

良介はなによりも…自分に失望していた、そしてそれを変えたかった。

「わかりました。その条件でお願いします」

「…まぁ君には最初から選択肢なんてないんだけどね、じゃあ」

少年は再び拳銃を良介に向けて

「この世界からサヨナラだね、君」

「ええ、この世界からサヨナラです」

そして少年は拳銃で良介の心臓を打ちぬいた。

以外にも痛も、苦しみもなかった。

心臓を撃ち抜かれ意識を失う直前、良介は思う

(次の人生は絶対に充実したものにします!)

と。

「まあ、三つ子の魂百まで…人は、少なくとも受動的な態度じゃ、そう簡単には変わらないよ?…例え転生しようともね」

最後にそんな言葉が聞こえたような気が…した。


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