ウエス切り
今日は母の手伝いをした。
もう使わない布団のシーツをはさみで切って、ぼろきれとして使えるようにする。結構な大きさがあって、指は疲れてくるし、だいいち面倒くさい。こんなものわざわざ再利用しないで、そのまま捨ててしまえばいいのにと思ったが、祖母の家で使うということだったので、そのまま最後まで続けた。
自分が切る時に、母は切るところのシワを手で伸ばしてくれた。さり気ない動作だが、そうしてもらえるととても切りやすい。頭では分かっていても、自分はなかなか他人にやってあげることができない。
そんなことを考えながら、そういえば会社でもウエスを切っていたことを思い出した。仕事がなくなって暇な時間ができると、テーブルの上に出してみんなで切っていくのだ。元の大きさのウエスは、サイズも形も不揃いで、自分はどこからはさみを入れていいのか分からず、切るのにとても時間がかかった。まごついている間に、隣で作業している人のところには折りたたまれたぼろきれがどんどん積み重なっていく。
会社にいた頃は大変だった。みんなテキパキと働いていた。四十代の肉体労働者の体力はすごいものだと思った。十キロ以上ある段ボールをひょいひょい持ち上げてパレットに積んでいく。自分も無我夢中で体を動かした。汗をかいてヘロヘロになっていた時のことが、まだ半年も経っていないのに懐かしく思えてくる。
当たり前になっていた生活が、ひどく恵まれているものに思える。優しい人ばかりだったけど、あんなところには戻りたくない。その思いは変わらない。ただ、もう汗をかくことがないのだと思うと、それはそれで空虚感のようなものを覚える。