トラウマ
会社の社内報におすすめの本の紹介という欄があって、自分にもそれが回ってきたことがある。
自分は太宰治の「斜陽」が好きなので、それについてのコメントを素直に、言いたいことをそのまま書いたのだが、今思うと「またやってしまった……」という感が強い。
こういう場では自分の好きな本ではなく、誰もが気軽に読めるようなものを選ぶべきだったとか、そうでなくとももっと文面を抑えて書くべきだったとか、いろいろ後悔するところがある。いちおう何度も何度も読み返して、これくらいなら言ってもいいだろうと自分で判断した文面であったし、総務の人からも特に何か言われることもなかったので、たぶん大丈夫だったんだろうとは思うが、いまだに思い出してはあの時のことをあれこれ悩んだりする。
高校時代、小論文の練習で、担当の教師から「勘違いしてるんじゃねえかな」と言われたことがあって、その一言がずっと心に残っている。気持ちが昂ると、自分は場にそぐわない文章を書いてしまうんじゃないかという恐れがずっと胸の中にある。
大人になるとその場その場に合わせて自分の役割を自覚し、自我を抑えなければならない。だが、そういうことはとても窮屈に感じるし、自分にはできないことだと感じる。インターネットの世界は匿名なので、自分もこの通り好きなように書かせてもらっているが、現実の空気というか窮屈さというか、そういうものが皆無であるとは言えないような気がする。もっと素直に、心の声を発信している世界がどこかにないのだろうかと、最近よく思う。