公募
少し前に、三年間いじくりまわしていた小説を太宰治賞に送った。
一月末に障害者枠での職場体験があり、本当にもうそろそろ仕事をすることになるかもしれないと思い、思い切って応募することにした。ただ、個人的に納得のいく出来の作品ではなかった。おそらくこれは落ちるだろう。そんな気がしながらも、自分が気付いていない魅力がこの作品の中にあるのかもしれないなどと、希望的観測からの僅かな可能性を信じて、郵便局から速達で送ってもらった。
ぎりぎり五十枚に届くような短いもので、キャラクター設定は希薄であり人物に深みはなく、物語展開も粗雑なものだったと思う。それでも、もうこれ以上いじくりまわしても先が見えない気がした。早く手放してしまいたかった。三年前はもの凄い作品が出来そうだと一人燃えていたものが、結局中途半端な不出来なものになってしまったという、どろどろしたやりきれなさが残った。
元々自分には創造性とかアイデア力というものがなく、完全に(とは言い切れないかもしれないが)フィクションの世界を描く、小説を書くという作業が、自分には不向きなのではないかと思うようになった。現実を、それ以上に輝かしいものに進化させる方法が、自分にはまだわからない。現実は現実のままでしか書けない。フィクションのなかで生み出される苦しみはすべて作り物。つまり嘘。それをどうやって現実以上に価値のあるものへと昇華させればいいのか。どうやってリアリティを持たせればいいのか。その辺はもう才能の領域なのだろうか。生きた嘘を書くことができない。小説家としての絶対条件、それが満たせない。
三月頃に一次選考の結果が出るだろう。落ちていたら、少し小説から距離を置く生活になるかもしれない。とりあえず今は結果を待つしかない。




