太宰制覇(新潮文庫のです)
やっと新潮文庫から出ている太宰作品を読み終わりました。
高校の頃に「斜陽」を読み、そこから太宰作品をぽつぽつと読み続け七年目。やっと文庫制覇にたどり着きました。一人の作家をここまで読むのはたぶん初めてです。
ここまで来たら全集も読もうかと、実は昨日図書館に行って太宰全集をめくってみたのですが、四百ページ近い書簡集などを見ているとその気がなくなってしまいました。作品では「無間奈落」や「地主一代」などが残っているけど、まぁ初期の習作だからいいかと諦めてしまうことに……。
しかし、文庫こそ制覇したものの、太宰作品を読むモチベーションは最初の頃と比べてだいぶ下がってしまいました。
太宰の文章を読んでいると、雲をつかむようにあまり中身のない長文が続き、いったいどこに本音があるのか分からなくなります。自分はまっすぐにしか物を見ることができないので、煙に巻くようなあの長い文章から太宰の本音をつかみ取るというのが出来ず、結局何を言いたいのかよく分からなくなる。
最初のほうこそ、「人間失格」「斜陽」「燈籠」「きりぎりす」「饗応夫人」など、素晴らしい作品に出会い、太宰治が大好きだったけれど、文庫を全部読んでみると良いと感じるのはそれほど多くなく、むしろよくわからないものが多い。作品数が多いのでなかなか記憶にも残りづらく、これ読んだっけ? と思うものも少なくない。
作品によって合う合わないはあるとしても、「斜陽」であれだけの感動を与えられたからこそ、できる限り多くの作品を理解して読みたいと思うのですが、読めば読むほど太宰が遠ざかっていく気がして悲しい気持ちになります。




