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第2話 世界の滅亡

 長い年月が過ぎ、ナノマシンによる管理と支配はもはや全ての事象に行き渡り、人類はその力に完全に依存していた。もはや人々の生活は、ナノマシンが提供する無限の資源と快楽によって支えられていた。しかし、そんな世界にも終わりが訪れようとしていた。


 地球上の生命は、突如として来襲した脅威によって危機に瀕していた。それは、巨大な隕石の衝突によるものだった。直径数百キロに及ぶその隕石は、大西洋に落下し、衝撃波を引き起こした。その衝突の瞬間、大陸は崩れ、海は波高く立ち上がった。すべての物理法則を無視するかのように、隕石が引き起こした地殻変動は、地球全体に影響を及ぼした。


 隕石が衝突した地点では、地球の表面が引き裂かれ、まるで薄皮が剥がれるように地殻が剥ぎ取られていった。大気が吹き飛ばされ、地表からは猛烈な熱が放射され、数千キロ先までその影響が広がった。海や大陸、そしてすべての生命が無意味に吹き飛ばされ、地球は一瞬にして生物が存在し得ない惑星へと変貌してしまった。


 その衝突の後、隕石の衝撃波と熱で地殻が膨張し、大気中に膨大な量の火山灰や蒸気が放出された。これが成層圏を越えて宇宙にまで達し、地球の周囲を覆い尽くした。その結果、温度は急激に上昇し、地球は数日も経たないうちに生物が生きていけない環境へと変わった。


 だが、そんな絶望的な状況でも、ナノマシンによる管理は続いていた。128の研究所とそこに勤務する管理者たちは、災害の影響を受けずに生き残ることができた。ナノマシンの神にも等しい能力は、微細な調整を行い、地球上のわずかな範囲を守ることを可能にした。人類が完全に滅びても、彼らだけは地球上に残ることができた。


 しかし、ナノマシンの完璧な支配には限界があった。隕石の衝突による破壊的なエネルギーの前では、そのシステムも完全には機能しなかった。管理者たちは、かつて人類を守るためにその力を利用していたが、今回の災害にはどうしても手を打つことができなかった。


 世界各国の政府は、ナノマシンの管理権限を持っていたものの、その管理権限が強力すぎて、逆に有効な手段を講じることを許さなかった。相互監視システムが、どの機関もナノマシンを自由に操作できないようにしていたのだ。政府は個々の国を守ることに焦点を当て、ナノマシンを私的に使用することを防ぐために、隔離された状態で管理されていた。結果として、どんなに急いで対策を講じても、隕石が地球に衝突するのを防ぐことはできなかった。


 管理者たちは、隕石の衝突に備えて様々な対策を講じようとしたが、ナノマシンが抱える制限により、それらの計画は次々と阻止されていった。例えば、地下に避難場所を設けたり、強力なシェルターを作成するための試みが行われたが、相互監視システムがそれを許さなかった。管理者たちが取るべき最善の手段は、ただ「生存する範囲を確保すること」だった。


 地球規模の災害の前に、もはや逃れる方法は無かった。隕石が地球に衝突し、その瞬間に全てのものが崩れ去った後、管理者たちはただひとつの決断を下した。それは、生物再生のために地中深くに隔離することだった。すべての遺伝子情報と、再生に必要なナノマシンを深層に保管し、その後の生物再生のために準備を整えることだけが、残された希望だった。


 そして、ナノマシンはその管理能力を駆使して、絶望的な状況の中で最善の方法を取ることとなった。かつての栄光を誇った地球は、もはや生きた証を持つことなく、広大な荒野に変わり果てていた。


 その瞬間、管理者たちの中には、何かが崩れ始める音が響いた。人類が生き残るための最終的な手段が講じられ、しかしそれが成功するかどうかは、誰にもわからなかった。

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