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第1話 ナノマシンによる世界

 地球はかつて、無限の可能性を秘めた星だった。だが、今やその星はナノマシンに支配され、すべての生命が徹底的に管理されている。人類のほとんどは、目の前の現実に無関心で、ただ与えられる快楽と満足に依存していた。文明が衰退し、退廃が進んでいた。


 ナノマシンは、かつての人類の遺産であり、同時にその終焉を迎える運命を共にした。数世代前、技術的な進化の果てに登場したそれは、環境問題、食料危機、貧困など、人類が抱えていた課題を一瞬で解決した。ナノマシンは、人類が望むあらゆるものを生成し、瞬時にあらゆる問題を解決する能力を持っていた。それが、かつての人々を無力にし、今や世界を完全に支配している。


 世界のどこに行っても、ナノマシンは人々の生活を管理していた。食物、衣服、住居、健康、教育、娯楽、すべてはナノマシンが支配し、提供するものだった。人々はもはや自ら生産することを忘れ、ただナノマシンが与えるものに従うだけの存在となった。


 だが、この世界の支配者であるはずのナノマシンには、ある重大な制約があった。ナノマシンは、全ての人類を守り、管理する義務を負っているものの、絶対的な自由を持つわけではない。その運用には、厳格な相互監視システムが組み込まれており、そのシステムに従うことが最も重要視されていた。


 ナノマシンの管理者たちは、ほとんど神のような存在であるはずだったが、実際にはその権限も制限されていた。彼らは「管理者」と呼ばれ、ナノマシンの運用と人類の調整を担っていた。しかし、実際にはその手には制約が多く、自由に行動することはできなかった。例えば、ナノマシンが有益な結果を生み出しても、その使用方法が規定に反すれば、すぐにシステムによって修正され、元に戻される。


 管理者たちは、ナノマシンによって支配される世界を作り上げるために、地道に調整を行っていた。しかし、その調整をしている最中に、人類はますます無関心になり、快楽に溺れていった。その結果、一般の人々は、ナノマシンが持つ万能性に気づきながらも、それを当たり前のものとして受け入れ、依存するようになった。


 一部の人間たちは、ナノマシンの完全な支配を望んだが、政府はそれに対して「ナノマシンの万能性」を隠す方針を取った。彼らは、その力が一般市民に知れ渡ることで、社会が完全に崩壊することを恐れていたのだ。人々はその力に依存し、努力することなく生きるようになり、生産性が失われ、政府の指導力も徐々に低下していった。


 ナノマシンの管理下での生活が続く中、人類の関心は次第に無気力なものへと変わっていった。彼らの生活は、すべてナノマシンによってデザインされ、管理され、繰り返し同じものを享受するだけだった。退屈で、刺激のない日常が繰り返され、ついには何もかもが無意味に感じられるようになった。


 そんな中、管理者たちは現状を打破する方法を模索し続けていた。だが、相互監視システムの中で、どれだけ動こうともその枠を超えることはできなかった。ナノマシンが支配する世界で、管理者たちですら完全な自由を得ることができなかった。


 その矛盾した状況の中で、ひとりの管理者が人類の未来を見つめ直す時が来た。彼は、全ての事象がナノマシンによって管理される中で、ひとつの疑念を抱くようになった。それは「人類は、本当にこれで良いのか」という問いだった。


 しかし、この問いが生まれた瞬間から、何かが動き出した。その問いは、ナノマシンの中で何かを引き起こし始めるのだった。


 そして、地球は徐々に変化していく。何かが、全てを覆い尽くすような形で、目に見えない力によって迫っていた。


 管理者は、その変化に気づくことはなかった。しかし、その時、遠くの空で何かが動き出していた。地球を包み込むように、天体規模の危機が迫っていたのだ。それが、どんなものであるかを知る者はまだ誰もいなかった。


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