7:不死者について考えてみる
いわゆるゾンビに代表されるようなアンデッド、はまた別に考察してみるとして。吸血鬼やノスフェラトゥ、あるいは地獄にいる悪魔、天使、神、それに魔王。これらについて考察してみます。
不死身の魔物、不死身の聖者。ファンタジー世界にありきたりな設定ながら、ワクワクする存在です。
ところで、いつも不思議に思うんですけれども、中ボスやらラスボスクラスが言うあのお決まりの台詞。
「我が一撃を耐えきるとは、数百年ぶりだ」
これの派生とか、結構ありますよね。お約束というか。ちょっと前にアニメ放送やっていたゲゲゲの鬼太郎でもありました。変身したバッグベアードさん。「この姿を見せるのは数百年ぶりだ」とか。
……何で?
いや、何で数百年なの? 不死者なのに?
そろいもそろって、そういうお約束の台詞言う連中って数百年ぶりとかせいぜい数千年ぶりとかで、何で数千万年ぶりとか数億年ぶりとかじゃないの?
貴様ら不死者ちゃうの? それでたった数百年? カスみたいな短い時間じゃないの? からくりサーカスでもありましたよね。「たかが数百年程度の無敵で何を誇るのか」っていう台詞。不可思議とか那由多とかかっ飛ばす奴出てこないの何で?(魔法少女プリティベル最終話で出ましたけので、探せばありますけれども)
神話、あるいは宇宙に関する物理学の根源的問題として設定されるんですけれども、「始まりがある存在は終わりがある」というお約束があります。宇宙もそうですね。いろんな仮説があるなかで、実は宇宙とは始まりも終わりもないのではないか、ゆえに無限に存在し続けるのではないか、という考え方もあります。
不死って、どのくらい不死なの?
例えば寿命数百歳の魔物さん。村人Aとかレベル10代くらいの魔術師パーティにとっては不死身の化け物となるでしょうけれども、核兵器を持った米軍空母機動部隊にとってはボタン1つで蒸発させられる程度の”不死”でしかないのでは、と。
まあ、戦闘力の話はさておきましょう。
寿命数百年、または寿命数千年を誇る人間を超越した魔物さんがいたとして。
彼らの目には、寿命数百万年の魔物さんはどう映るでしょうか?
「あの方にとってみれば、自分など雑魚同然……」となると思います。そして寿命数百万年の存在にも上がいるかもしれない。”いつかは死ぬ”という属性を抱える限り、この寿命の長さによるヒエラルキーは上には上がいるわけです。
まとめると、不死者というのは次の①か②のどちらかになります。
①人間の視点からそう見えるだけ、あるいは箔をつけるためなどの理由から不死と呼ばれたり名乗っているだけで、実際には不死身ではない。
②寿命および死という概念を超越した不死者であり、何をどうしようが絶対に死なない。数百億年生きるし、たとえ宇宙が滅びても存在し続ける。
そして、普通の作品においては、キャラクターという表現で人格を与えられて記述される不死者というのは全て①になるのではないかと。神と呼ばれる存在も含めて。何故かというと、②は人格を持った存在になった時点で、”変化する”という属性から逃れられなくなってしまうからです。もっとも、人鬼@むこうぶちのように徹底して思考を描かない場合は別ですが。
さらに、①、②のうち、①のような”なんちゃって不死者”がいる世界においては、次のことが導かれます。
③ ①で設定した不死者を超える不死性を持ったキャラクターを作ることができる。
魔王を倒したと思ったら大魔王が現れた、みたいなお約束ですね。
寿命数百年ごときのぺーぺー不死者にとって、寿命数千万年の不死者はまさに「桁が違う存在」であるわけです。また寿命数千万年の不死者にとっては、寿命数十億年の不死者は桁違いな存在とりなります。しかしこの寿命の長さは、必ずしも強さを表すとは限らない。
例えば地球なんか安定して数十億年も惑星の形状を保ったままです。一方、太陽の数百倍となるような巨大な恒星は、”でかければでかいほど寿命が短い”という特性を持ちます。自重で圧壊してしまうわけですな。恒星レベル、天文学的スケールで考えると、強さと寿命ははあまり関係がない。
ではどうして、一般的にファンタジー世界で「寿命が長いことを示唆する台詞」あるいは「〇〇という経験は何百年ぶりだという台詞」が、強さのマウントを取るフレーズとなっているんでしょうか?
これは、確率論的な話になります。
「強い奴は死ににくい」⇒死ぬ確率が低いので、結果的に長生きしやすい。
「強い奴は〇〇という経験をしにくい」⇒攻撃を防がれる、本気を出すなどの機会に遭遇しにくいので、結果的に何百年ぶりとかの体験になる。
なので、「どういう危険性のある世界で生きてきたのか?」ということも示唆しているわけですね。例えば核シェルター並みの防御力を誇るダンジョンの最奥で、自分らを庇護する部下たちに囲まれて、のんべんだらりと長寿命なだけで君臨する魔王様がいたら。
「人間と話すのは数百年ぶりだ」とかなりませんか、と。
単なるひきこもりやんけ。
いやさ、「安全な場所にぬくぬく引きこもっているだけで結果的に不死者扱いされた長寿命の種族」って、いると思うんですよ。強くもなんともないのに伝説だけが独り歩きしてるような奴。
そして、そういう奴らの生存戦略って、ジョセフ・ジョースター、あるいは無惨様の必勝法かもしれない。
やばくなったら「逃げる」
ようは、自分の敵対者、自分を殺し得る存在がいなくなりゃいいわけです。それは寿命の差を利用するが一番確実で、かつ逃げ続けることができればリスクが最も少ないやり方でもあります。
不死者にとって、自分を殺し得るイベントをもたらす外敵が出る確率が非常に低いから不死者をやれているわけです。例えば勇者がぽこじゃが産まれる世界となって、「産まれてから10歳までの生存確率が5%で、40を迎えるまでに100%死ぬ不死者」なんていません。定義が崩壊します。だから、”生き残るべくして生き残る”という何らかのギミックが彼らにはある。ただし、絶対の不死ではない。ならば、不死者の上にはさらに不死性の高い存在がいる。あるいは、理論上作ることができる。神話なんかそういう話がてんこもりですしね。
次以降でそのあたり、「不死者を殺すにはどういう条件が要るか?」を考えたいと思います。




