3:続・召喚呪文について考えてみる
では、次の条件を考えてみます。
②召喚対象の同意を経て召喚される
召喚士にとって、召喚対象たる魔王なり天使なり竜なり悪魔なりは「自分に何らかの力を与えてくれる便利な相手」であるわけですが、いくつか条件を付加しないと対応がしょっぱくなる可能性が高い。
②-1召喚対象が24時間365日対応できる場合。
人間のスペックで考えるのがそもそもおかしい。悪魔なら不眠不休で対応できるはず、という前提を採用した場合。
かつ、その悪魔なりなんなりは初めからセールスマン的な契約/売買行為を日常業務とする存在の場合、話はとても早くなります。
召喚士が「ちょっと〇〇さんお願いできますか、頼みたいことがあるんで」と言われたら「せやな。応じるかどうかは条件次第や。対価として何を支払える?」
うん、スムーズ。
いきなりわけわからんところへ召喚されてキレられるという心配がない。
そもそも召喚されるのが嫌なら応じなければいいだけですし。
②-2召喚対象が24時間365日対応してくれない場合。
「すまんのう。召喚に応じたいんじゃが今は繁忙期でなー。1カ月後なら呼び出しに応じれるわ」
これ。
偉い人になればなるほどアポイントメントを取らないといけないのと一緒。あるいは、人気の料理店。予約がないと入れないところがこれ。よくよく考えてみたら、”〇〇ほどの魔王を召喚するとなると特定の星が特定の場所に来る時刻じゃないと不可能”という星占術が合理的だったんや!って話ですよ。アレは召喚対象の手すきの時間を狙うためのアポイントメントをとる儀式だったんですよすごい。
となると、ここからさらに先
②-2-1召喚対象の予約がいっぱいで対応できるリソースがない場合。
神様とか魔王とかルシフェル他の熾天使とか、要するに「唯一無二の力の持ち主」である場合、会社でいうと社長なりCEOなりを呼びつける行為に相当するわけで、「お前の立場で俺を呼びつけられると思ってるのか?」「そんな報酬の準備でなめてんのか?」「個人からのご依頼は現在受け付けておりません」ってなるのが普通。
召喚士のレベルが低いと召喚呪文の成功率が低い、という現象、元をたどるとこういう理由かもしれませんね。
まず、下っ端を召喚して”取引実績”を作る。かつ、つつがなく契約を満了させて召喚対象から好印象をもらう。口コミ評価っすな。あの召喚士は星5対応だったぜ、支払いよくて発注条件も常識的……で、その実績から悪魔の上層部に顔を売ってより大きな取引に……と。
具体例として、「ぽっと出のフリーランス召喚士よりは、何百年も昔から存在している宗教団体所属の神父召喚士の方が高位の存在を召喚しやすい」となるわけです。
上位魔族「ああ、〇〇宗教団体の息がかかってる奴からの召喚か。実績と信頼があるから応じてやるわ」これ。
あるいは「祖先から代々伝わるマジックアイテムを使うことで召喚できる」とかね。召喚される側にしてみれば信頼の証なわけですよ。あの一族なら大丈夫、と。
②-2-2召喚対象の予約に余裕があるが、それでも何らかの理由で対応してくれない場合。
相手側は即応体制がある。でも来ない。どうしてだろう。そう、つながらないのである。
「魔力が届かない場所にいるため、召喚魔法に失敗しました」これ。
あるいは、「召喚するためには何らかのエネルギーがいる」という場合。
異世界から天使なり神様まり魔王なりを呼び寄せるわけです。
仮にそれが星から星への物理的な移動だとしたら、どのくらいの距離を一瞬で詰めることになるのか?
何万光年? 何十万光年? これ、原子力発電所で作れるエネルギーで賄えるかどうかという膨大なエネルギーが必要になるのではないでしょうか。
あるいは、異次元の空間を開き、維持し、指定対象をこちらへ運ぶというケースでも、それなりのエネルギーが必要になります。
加えてどちらも、座標を特定し経路を適切に選択し……という技術が必要となる。
「魔法でちょちょいとやりました、細かいことは知らない」でもいいのですが、その分のリアリティを減じることは否めないわけです。
召喚魔法で呼べる対象の魔力、質量、距離、もろもろ勘案すると「このくらいの召喚士の魔力だとこのくらいまでの存在しか呼べないよね」という限界がどこかにあるはずです。
それが召喚士のレベルを表す指標だとすると、「熟練の召喚士にしか大魔王は呼べない」という理由が、ああなるほどとなる。
さて、余談として。ここで召喚魔法の危険性について思い浮かぶわけです。
すなわち、召喚しようとした相手から逆に召喚されることもあるかもしれない。
魔王「おう、俺を呼びつけるなんて不遜なやっちゃ。てめーがこいや」
そう、異世界転移である。
チートスキルなど望むべくもない。応答を一つ間違えればしばき倒される地獄へようこそ。それが召喚魔法。お偉いさんを呼び寄せるんですからそのくらいのリスクは抱えることになるよね、と。
というわけで、「召喚魔法は慎重に」とか「禁忌だから絶対にするな」と言い伝えられる理由はこんなところじゃないかと思います。ご意見や別の視点あればご感想に記入ください。