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2:召喚呪文について考えてみる

 魔王。悪魔。魔族。

 ファンタジー世界にほぼ必ず出てきます。


 ラスボスとして設定している作品もありますが、便利なマジックアイテムみたく召喚呪文で呼び寄せて何らかの契約を……となる作品もわりとある。で、この魔族の皆様方、召喚された場合はお約束として「対価」を要求するわけです。身体の一部とか召喚者にとって大切なものとか魂とか。


 なぜででしょう?

 なぜ、召喚された彼らは対価を要求するのでしょうか?


 というわけで、今回は「召喚される側の事情」を考え、「召喚魔法が成功または失敗する要因」について記載していきます。仮に「自由自在に召喚できる場合、召喚する側とされる側にどういうリスクがあるか?」についても考察していきます。



 中二病たけなわなりし我々は、召喚魔法となるとそれはもうものすんごい相手を召喚したくなるわけです。

 大魔王とか熾天使ルシフェルとか竜王バハムートとか。

 召喚には魔法陣やら儀式やら呪文やら魔力やらが必要……と、なんかすごい感じを出すツールには事欠かないわけですけども、召喚される側ってどういう状態なんでしょうか?

 今回は召喚魔法の失敗と成功要因について掘り下げてみます。


 ①召喚対象の意志に関係なく召喚される

 ②召喚対象の同意を経て召喚される


 大別するとこのどちらかになるのではないかと。


 ①は異世界転生タイプとでも申しましょうか。「お前を殺してでもこの世界へ呼び寄せる」という荒っぽいやり方。召喚対象の都合など一切考えない。


 仕事をしていようが

 ベッドで寝ていようが

 お風呂に入っていようが

 つがいと交尾していようが

 食事をとっていようが

 大きな怪我を負ってオペ室で手術されていようが


”それらの都合を一切省みることなく召喚される”というシチュエーション。


 ちょっと想像してみるとかなり酷いというか、「召喚された瞬間に、自分を呼び寄せた馬鹿相手にキレる」という状況が多いと思います。


 初対面の術者「よく来てくれた。俺の為に戦ってくれ」

 大魔王@全裸で妻を抱いていたところを呼び出された「いや、てめー誰だよ。何でおめーの為に戦わなくちゃいかんのや」


 どっちも困りますねこれ。怒りますね。私なら怒る。まあベッドで交尾している場合でなくても、くつろいで漫画読んでる最中に見知らぬ異世界に呼ばれて見知らぬ相手から「ちょっと俺のために命がけで働いてくれませんかねヘヘヘ」なんてのたまわれたらイラっとしませんか?


 呼び出された大魔王なり天使なり竜なり、暴れませんかね?


 というわけで、この①相手の意志を無関係に強制的に召喚する場合、以下の要素を満たさないと厳しい。



 ①-1「召喚対象が戦闘可能な常態である」


 これから呼ぶ相手が、瀕死の重傷を負ってる状態で呼び寄せてもお互い困りますし。断食とか交尾の最中とかでも困りますね。ろくに戦えるわけがない。



 ①-2「召喚対象がこちらの話を聞く状態になるよう配慮する」


 常識。

 いくら緊急事態だとしても、朝の3時に職場の社長に電話をかけてたたき起こす社員はそうそういない。始業時間になってからかける。そういう常識的な配慮。


 すなわち、「召喚対象が今何をしているか知る」「交尾とか睡眠とか激務とかでないかチェックする」「機嫌が悪い状態を避ける」からの、「相手の欲しいものを把握しておく」


 魔王なり天使なり竜なりを勝手に呼び出した後、何か交渉できるような物を用意せずして、「ちょっと戦ってくださいよへらへら」って言われたら怒られます。交渉材料は術者の魂とか魔力とかお金とか正義の心とかなんでも構いませんが、とにかく召喚していただいた超VIPさんが欲しいと思うものを差し出さないと殺られるのは召喚者でしょう。コミュニケーション力も必要となります。


 相手を呼びつけ、交渉し、契約してようやく使役できる。

 そう考えると、「悪魔を召喚しするときは召喚の魔法陣から絶対に出るな」は非常に合理的な設定かと思います。

 召喚した時点で召喚する相手がどういう状態か(イライラしているのか、いないのか)わかりませんし。


 ①-3 「召喚対象を強制的に従わせる力を持つ」


 一番てっとり早いのがコレ。完璧な作戦っすねー。ただ一つ、不可能であるということに目をつぶれば。

 いやさ、召喚士さん、アンタ自分じゃどうにもならない事態を打開するために魔王なり竜なり天使なりを召喚するわけですよね?

 召喚対象が召喚士さんに従わせられるような力を持つなら、召喚士さん自身が戦えばよくなくない?

 この場合で説得力を持つシチュエーションは、ソロモン王の指輪みたいに超絶便利なマジックアイテムを用意することですね。

 しかし理不尽ですね。例えば人間さんが本人の意志に反する形で異世界召喚されて、召喚した相手が持つマジックアイテムで強制的に絶対服従、生殺与奪の権を握られてやられたい放題に使いまわされたら……ああ、怒りますね。

 宗教の経典にある悪魔の復讐エピソード、よくよく考えてみるとそういう当たり前の報復なのかもしれません。


 余談:召喚呪文の危険性


「生存可能な環境下へ」「五体満足な状態で召喚される」「召喚先で与えられたミッションは達成可能である」「帰還できる」


 これらの条件がない場合、召喚された生物にとって召喚とは”死”を意味します。


「生存可能な環境下ではない」酸素がないと生きられない生物が、深海や宇宙空間へ召喚されたら?

「五体満足な状態で召喚される」脊椎だけ召喚されたら? 心臓だけ召喚されたら? 脳ミソだけ召喚されたら?

「召喚先で与えられたミッションは達成可能である」魔王が召喚されて戦えと言われた相手が大魔王だったら?

「帰還できる」おう、召喚士。俺の元いた場所へどう帰すんじゃ教えろや。


 視点を変えれば、召喚魔法そのものを即死攻撃魔法として使うことができますね。

 殺害したい相手を生きられない場所へ召喚したり、臓器だけ部分的に召喚したり、ヤバイ生物が跋扈する場所へ召喚したり、あるいは未来に召喚して過去や現在の脅威を取り除いたり。


 さて、次。


 ②召喚対象の同意を経て召喚される


 この場合の考察は次回に。



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