第一話:プロローグ
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「なんか楽しいことないかな~」
これは私の口癖だ。学校がつまらないわけでも、趣味がないわけでもない。ただ、何に対してもすぐに”飽きて”しまう性格ゆえに、熱が冷めてしまうとすぐに目新しいものを探す癖がついてしまっているのだ。
「…でさー、ってマイ? 聞いてる?」
(漫画は全部読んだし、録画した番組も今は観たいのはないし…。ウェブ小説でも読み漁るかぁ)
友達との会話の間でも、ついそんなことばかりが私の頭の中を支配している。
「ねえ、マイってば!」
「へ? あ、ごめんユキちゃん!えっと何の話だっけ?」
えへへ、と照れ笑いを浮かべながらなんとか誤魔化す。
「夏休みどこ行く?って、マイ。ほんとあんたって、たまにボーっとする時あるよね」
「そう?…かなぁ」
「そうそう、舞海って自分の世界に入るときあるある」
二人にそこまで言われると、きっとそうなのだろう。自分ではそんな変な子じゃないと思ってるから、なんだか癪だ。
「ま、詳しいことはまたメッセするわ! んじゃねマイ、コト」
いつのまにか三差路に到着したようで、雪姫が手を振りながら別れる。それぞれ別々の方向に家があるので、いつも二人とはこの場所で解散するのだ。
「ユキちゃんばいば~い!」
「じゃ、舞海も」
「うん!じゃあねコトちゃん!」
雪姫と琴羽を見送り、マイも帰路につく。母親にこれから帰ることをメッセしようと携帯を見たら、タイミング良く母親からスタンプが来ていたことに気がつく。
「HELP!!」
「HEY,WHAT’S UP??」
「SOI SO-SU GA TARINAI YOH!!」
「そい?」
「醬油」
「なる」
マイは方向を変え、スーパーへと寄ったのであった。
家に到着すると、まず目に入ったのは、謎の巨大な段ボール。
「ただいまー。お母さん、これなに? あとこれ、ソイソース」
箱には<NOVA PROJECT>と書かれている。
「なんか、ネットショップで懸賞?みたいなので当たったみたいで、ついさっき届いたのよ。ありがと」
出所に関しては特に興味がなかったので、ふーんと聞き流す。
「で、中身はなんなの?」
「最新のゲームみたいよ」
特に了解もなく勝手に開封する。こんなに気兼ねなくできるのは母にだけだ。
「本当は冷蔵庫とか洗濯機とか期待してたんだけどね~」
母も私がゲームにさほど興味がないのを知っていてか、テンションが低い。
「ゲームねぇ」
そう、生まれてこの方、ボードゲーム以外のゲームをろくにしたことがないマイだが、なんせ今は”楽しみ探しモード”である。ちょっとワクワクしている自分がいる。
「あんたそれ遊ぶなら自分の部屋持って行っちゃいなさい。あとご飯もうすぐだから、呼んだら降りてきなさいね」
は~い、と生返事をしながら筐体を自室へと運ぶ。なかなかに重い。
「え~っと。…<クラフト・オンライン>って読むのかな?」
箱を開けるとヘルメットらしきゴツイ本体が出てくる。充電ケーブルを刺し、ざっとマニュアルに目を通すも、書いてあることが意味不明すぎたのでそっと箱に戻した。
「ま、まずはやってみないことには始まらないよね!」
新しい空気清浄機を買ったくらいの軽いノリで、電源を入れる。も、起動音がするだけで特に何も変化が起きない。
「あ、そっか。被らないといけないのか」
ベッドに横になり、ヘッドセットを装着する。被る向きを間違えたのは言うまでもない。
気を取り直し、ちゃんとした向きで被り直す。
「うぁああああ!!!!」
360度視界に広がる宇宙空間に、方向感覚を失い、思わず声を上げてしまう。だがそれも束の間。マイは意識を失った。