準備とは時間が掛かるもの
「とりあえず、フィオナの洗濯物を片付けなきゃな」
「あっえーと、そ、そうでしたね」
フィオナが顔を赤くして頬をかく。
「ヒロシ、フィオナ殿は女の子なのでありますから、そういったデリカシーの無い事は言ってはダメであります」
「ヒロシ、今、貴方のお姉ちゃんと同じ感覚で発言したでしょ」
「あ、すまなかった」
契約獣達から注意を受けてヒロシは素直に謝った。
「いえ、良いんです。服と鎧を脱ぎっぱなしだったのは事実ですし」
「ちょっと待ってろ。取ってくる物がある」
そう言ってヒロシはリビングを出ていった。1分もしない内に戻ってきたヒロシの手には、大きめの洗濯ネットが2枚握られていた。
「これになんだ、その、下着とか痛ませたくない服を入れてくれ」
「はい。あ、もしかしてこれって「ハタオリメ」の洗濯ネットですか?」
「お、よく分かったな。姉ちゃん愛用の高級ブランドで、乾燥機にかけても型崩れ無しの代物だぜ」
「ハタオリメ」は服飾関係の高級ブランドでコートやドレス等々を扱っているが、中には赤ちゃんの涎掛けやこういった洗濯ネットを出している。
「ありがとうございますヒロシ。それでは洗濯物を回してきますね」
フィオナは脱衣所に洗濯ネットを持ちながら向かった。
「さて、まずは下着と服をネットに入れてと」
ヒロシの持ってきた洗濯ネットはかなり大きめで、下着と服、バスタオル類も難なく全部入った。
「こちらの方には鎧を入れろって事ですかね」
フィオナは鎧をもう1枚の洗濯ネットに入れていく。
それぞれの洗濯機に洗濯物を入れて洗剤を投入、洗濯乾燥コースにセットして洗濯機を回し始めた。
「どうだった? 全部入ったか?」
フィオナがリビングに戻ると、開口一番ヒロシにそう聞かれた。
「はい、問題なく入りましたよ」
「大きめの洗濯ネットを渡して正解だったぜ」
「ありがとうございます」
洗濯の問題が片付いたので、ヒロシはフィオナにこれからの事を語り始める。
「空間魔法はこの空間が固定されているから、テントを片付けてもこのままの空間が維持されるんだ。だからそろそろ近くのロサキクの街に行きたいと思う」
「分かりました。その街ではヒロシは何をするのですか?買い物とか?」
「それもあるけど、冒険者ギルドに登録しようと思う」
「それでは私も冒険者ギルドに登録をしたいです」
「ヒロシはともかく、フィオナちゃんって冒険者じゃなかったのね」
「少し驚きであります」
冒険者ギルド。ギルドに冒険者として登録しなければ魔物を討伐した際の依頼金や懸賞金の受け取り、魔物の牙や内臓等の武器や薬になる部位の買い取りは行えない事が法律で決まっている。
これは個人間の依頼のやり取りでは問題が発生するのが目に見えているからである。
「よし、決まったな。あ、それとフィオナってどのくらい戦えるんだ? ライフル持ってたよな?」
「それなりには戦えると思います。風の魔術が得意でそれをライフルから放ちます」
「成る程、俺も刀でそれなりには戦えるぜ。じゃなきゃ薬剤士やってられないからな」
「あ」とヒロシが声を漏らす。
「よく考えたらフィオナの服と鎧が洗濯し終わらないと出発できないじゃん」
「そうでした。流石に鎧無しで街道を歩くのは危ないですもんね」
「クッキー、食べるか?」
「はい、いただきます」
「自分達も食べるであります」
「私も私も〜」
「では紅茶は私が準備しますね。紅茶のある場所を教えて下さい」
フィオナの装備の洗濯が終わるまで出発は先送りになるのであった。




