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見せかけのテント

フィオナは鎧を着けたまま寝袋の中で眠っている。

装備品をそこいらに置くという事ができないというのもあるが、寝袋が見た目よりも大きいのである。

中はフワフワの生地でとても暖かい。鎧のない部分で存分に堪能していた。

フィオナの右側ではダイコク、左側ではスセリが丸まって眠っている。

フィオナは寒空の下とは思えない程、快適に眠っていた。


やがてだんだんと東の空が明るくなってくる。そろそろ朝の6時くらいだろうか。

テントの中で目覚まし時計の音が鳴り響く。目覚まし時計の音を止めるとヒロシがテントから顔を出した。

「・・・・・」

何も言わずに眠っているフィオナの顔を見る。幸せそうな寝顔を見てヒロシはなんとなく可笑しくなった。

うり坊と白兎と一緒に眠っているフィオナを見て自分の小さい頃を思い出していた。


「おい、朝だぞフィオナ」

「はうっおはようございます」

「おう、おはよう」

「おはようであります」

「おはよ〜う」


1人と2匹を起こしたヒロシは、朝食の準備に取りかかろうかと思った。

だが、ここでフィオナの行き倒れていた期間を聞いていなかった事に気づく。

「なあ、フィオナってどのくらい行き倒れていたんだ?」

「えっと、3日くらいですかね」

「成る程、その間は風呂にも入っていないわけだ」

「うう、お恥ずかしながら」

「なら、テントの風呂を使えばいい」

「は?テントの風呂?」

「中に入れば分かる」


ヒロシはテントの中にフィオナを招き入れた。

「えっちょっ、これって・・・」

「そうだ。空間魔法のテントだ」


この世界には魔法が存在する。手から火を出したり氷を出したり、雷を落としたり風の刃を敵にぶつけたりできる。

その中でも特殊な魔法が空間魔法だ。空間を広げる事ができる魔法で、これがあれば狭いテントも広々とした空間で快適に過ごせる。

この空間魔法を用いたテントや車は売られてはいるが値段は高い。空間魔法をテントや車に付与する事は出来るのだが、空間魔法を覚えるのも使うのもかなりの技術を要する。簡単に言えば手間賃が凄くかかるのである。


「ちなみにフィオナの使っていた寝袋も空間魔法が付与されているぞ」

「え、ああ、だから鎧を着たままでも眠れたのですね・・・」

フィオナはヒロシがとんでもない金持ちなのではと思い始めていた。


テントの中は普通の家の天井の様になっており、入り口からのフローリングの床は一段高くなっている。

「靴はそこで脱いでくれ」

「これって東方からの移民の文化ですよね」

「そうだ。家の中まで泥を持ち込まれたらたまったもんじゃないからな」

「分かりました」

フィオナは素直に靴を脱いで靴下姿になる。ヒロシも同じだ。

ダイコクとスセリは入り口、いや玄関の隅に置いてあるお湯の張った洗面器で足を洗っていた。

「足を洗っていると悪い事をした気分になるであります」

「それもう何度も聞いたわよ」

2匹は足を洗い終わると玄関マットで足を拭い始める。


「んじゃまあ、ようこそ我が家へ」

「お、お邪魔します」


テントの中は明るく電気も点いている。入ってすぐの廊下の右側にはトイレがある。

「トイレはそこだから」

「は、はい」

ヒロシが説明しながら廊下の奥の扉を開ける。


そこは広々としたリビングが広がっており、中央に4人がけのテーブルと椅子がある。右側にはキッチンがあり、その側には大型の冷蔵庫も完備されている。

左側にはラグの敷かれた床の上に大きなソファーがあり、テレビの方を向いている。

フィオナは確信した。(ヒロシってとんでもないお金持ちです!!)

「あ、一応テントの中だから窓は無いぞ。換気扇で空気の入れ替えはできるけど」

フィオナの考えている事を気にせずヒロシは説明を続ける。


「そんでリビングの奥の扉の先に風呂がある」

ヒロシがリビングの奥の扉を開ける。右側には個室が5部屋あり、左側に脱衣所と風呂がある。

「ここが風呂だ」

ヒロシが脱衣所の扉を開ける。部屋には大きな鏡の洗面台があり、さらに洗濯乾燥機と鎧専用洗濯乾燥機が置いてあった。

鎧専用洗濯乾燥機は、洗濯槽が希少金属のオリハルコンでできており、硬い鎧にも耐えられる設計になっている。当然値段はお高い。

(鎧専用洗濯乾燥機まであるなんて・・・)

「フィオナー、おーいフィオナー」

「はっ すみませんとても驚いていました」

「まあ無理もねえよな」

ヒロシも納得する。


「それじゃあ僕は朝メシを作っているから、フィオナは風呂に入ってくれ。 タオルとバスタオルはそこの棚に入っているから」

「分かりました・・・・」

そう言うとヒロシは脱衣所を出ていった。


「ねえ、フィオナちゃんって何カップくらいあるの?」

「わあ!スセリちゃん!!」

フィオナはテントの事ですっかりダイコクとスセリの事を忘れていた。

だが、ダイコクはいない。何故だろうか?


「ダイコクならフィオナちゃんの下着のサイズを聞かない様にってヒロシと一緒に出ていったわよ。気遣いのできるオスうり坊なのよ」

「という事は着替えがあるんですか?」

「あるわよお。ワンピースからドレスまで多種多様な女物の服と下着が」

「なんでそんな物があるんですか? ヒロシの1人旅ですよね?」

「うふふ。それはねヒロシのお姉ちゃんがヒロシに持たせたのよ」

「なんでまたその様なことを?」

「それはね、貴方の様な行き倒れを確実に助けるだろうと思ったからなの」

「とても・・・とてもありがたいです」

改めてヒロシの優しさに感謝するフィオナであった。






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