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冒険者の仲間入り

「なあ、なんかさっきから視線が僕達に集中しているんだけど・・・」

「ヒロシも感じていましたか・・・。私もさっきからジロジロと見られています」

「ま、仕方ないでありますな」

「ゴブリンロボットを2人合わせて10機破壊したんだから当然よね」

ヒロシ一行は、新人、先輩冒険者からの視線の集中砲火にさらされていた。

これはなにもゴブリンロボットを破壊した事だけではなく、ダイコクとスセリという喋る魔物がいるのも関係している。


「皆様、戦闘試験お疲れ様でした。それでは1階の登録受付に向かいましょう。そこで皆様は晴れて冒険者の一員になれます」

レティコルカの声に促されて新人冒険者達は、修練場をぞろぞろと退場していく。先輩冒険者達も同様である。

そしてヒロシ一行に視線を向けるのも忘れない。ヒロシとフィオナにとっては、なんだか罪人になった気分で居心地が悪かった。


そして先に階段にさしかかった先輩冒険者達は、皆が皆、手摺を持って階段を上がって行く。

新人冒険者達も戦闘試験前にレティコルカに言われた事を思い出した様で、それに習い手摺を持って階段を上がって行く。

勿論、ヒロシとフィオナも手摺を持って階段を上がって1階に戻ってきた。


そこで先輩冒険者達とはお別れである。彼ら彼女らは、今回はただの見物人なので当然である。

冒険者が守る法律の1つに、戦闘試験が終わった直後の新人冒険者にはパーティ勧誘の声を掛けないというのが、決まりになっている。


これはまだ正式に冒険者として登録されていないというのもあるが、青田買いで自らのパーティに誘う為の勧誘合戦から、戦闘試験で疲弊した新人冒険者達を守るという観点からである。

疲労というのは判断力を鈍らせる。新人冒険者は先輩冒険者のパーティに入る、入らないという重大な決断は疲労がしっかりとれた状態で判断させるという決まりなのだ。

ちなみに慣例として3日後には勧誘して良いという風潮が冒険者達にはある。3日もあれば疲労もとれているだろうという事だ。


「皆様、戦闘試験合格本当におめでとうございます。それでは番号順に登録受付に並んで下さい。皆様のこれからの働きに冒険者ギルドは期待しています」

レティコルカは微笑みながらそう言って冒険者ギルドの奥に去って行った。


111番のパーティから冒険者登録を済ませていくので、113番のパーティであるヒロシ一行の番はすぐにくると彼らは思っていたのだが違うらしい。

冒険者登録にあたり各種説明や用紙に記入等があるので、そこそこの時間が掛かっている。

そしてしばらくの間、ヒロシ一行は大人しく順番を待った。


『113番のパーティの方、登録受付にお越し下さい』

スピーカーから声がかかりヒロシ一行は登録受付に向かう。

登録受付の若い女性がレティコルカと同様に「戦闘試験合格おめでとうございます」と笑顔でヒロシ一行に言う。

そして冒険者とはどういう物かの説明に入る。


「ご存知かと思いますが、冒険者は下からブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナとランクが設定されています。これは薬草採取、魔物討伐、護衛等の仕事をこなしていけばランクが上がっていくシステムになっています。しかし、簡単な薬草採取や魔物討伐をやっていけばランクが上がる訳ではありません。

今現在の自分のランクよりも、ランクが1つ上の仕事を50件連続で成功させる必要があります。

ブロンズから始まる皆様はシルバーランクの仕事を50件連続で成功出来たらシルバーランクに成れるというわけです。

ランクが上がればそれだけ仕事も難しくなりますが、依頼料や討伐報償金が上がります。

それ故に皆様はランクアップに日々邁進しています。

また、仕事を3ヶ月以内に1件もしなければ冒険者としての資格は失効になります。ご注意下さい。

また、その他の法令も当然の事ながら遵守して下さい。何かしらの犯罪行為をしたら即冒険者の資格は剥奪されます。これは過去に犯罪を犯していても同様です。ご注意下さい。

以上の説明で何か分からない事があれば質問して下さって大丈夫です」


「すみません。大怪我や病気で3ヶ月以内に仕事を受けれない場合はどうなるんでしょうか?」

ヒロシが受付の女性に問う。

「その様な事態になっても大丈夫な様に『冒険者ギルド保険』というものがあります。

こちらは冒険者に登録すると自動的に登録されるもので、仕事の報酬額から一定額をこちらで自動的に天引きする仕組みで、大怪我や病気が治るまでの間の医療費、治療費の7割を出すものになります。

また、治るまでの間に仕事を受けられなくても冒険者の資格は失効されない仕組みになっています」

「良かったあ。それを聞けて安心しました」

「そうですよね。冒険者は基本的には戦う職業ですもんね。私も安心しました」

「福利厚生は大事でありますからな」

「生き物がいつでも健康なんてわけないものね」

ヒロシ一行も保険があると知れて安心である。


「それではこちらの用紙に、ご自分の生年月日、名前、年齢、電話番号、実家の住所と電話番号を記入して下さい」

冒険者は仕事をこなす為に方々を移動するので、自宅を持たない者が多い。高ランクの冒険者は自宅を持っていたりするのだが、ブロンズランクの者達は当然、実家意外の家は無い。

そしてここで言う職業は冒険者の事ではない。自分の戦闘職業である。ヒロシは剣士兼魔物使い。フィオナは銃拳士と記入した。

受付の若い女性はヒロシとフィオナから記入済みの用紙を受け取った。


「はい、確かに記入されていますね。こちらで問題ありません。それでは冒険者ギルドカードを発行しますので、少々お待ち下さい」

冒険者ギルドカードとは冒険者としての身分証明書みたいな物である。ランクによって色分けされ、ブロンズは赤銅色、シルバーは銀色、ゴールドは金色、プラチナは白金色となっている。


「お待たせしました。こちらが冒険者ギルドカードです。こちらを各受付に見せる事によって仕事を受ける事が出来ます。もし、盗難や紛失されましたら直ぐに冒険者ギルドにご連絡下さい。これは成り済ましを防ぐ為に重要な事です。そして冒険者ギルドカードは再発行には100000ラエンが必要になります。ご注意下さい」

2人は赤銅色の冒険者カードを受付の女性から受け取った。

「よし、後がつかえているからさっさと順番を譲ろうぜ」

「はい」

「スタコラサッサであります」

「別に何かから逃げてるわけじゃないでしょ」

ヒロシ一行はとりあえず空いているソファーに腰掛けた。

「いよっし!これで僕とフィオナは冒険者の仲間入りだな」

「はい!とても嬉しいです」

「良かったでありますなあ、2人とも」

「でも、気を抜いちゃだめよ。サボっていたら冒険者じゃなくなるんだから」

「分かってるって、スセリ。でも今は素直に喜びたいんだよ。って・・・あ」

「どうしました?ヒロシ」

「魔物も泊まれる宿の事を聞くのを忘れてた・・・・」

「あっ!確かに聞くのを忘れていましたね」

ヒロシ一行は冒険者ギルド内を見渡す。しかし、どの冒険者ギルド職員も忙しそうに働いていて、宿を聞けそうな雰囲気ではない。

「う〜ん。これは野宿決定でありますかな?」

「まあ、あれを野宿と言うのは語弊があると思うけどね」

「それでは私がオススメする宿はどうでしょうか?」

いきなり後ろから声を掛けられたヒロシ一行は振り返る。

そこには冒険者ギルドの奥に去って行ったはずのレティコルカが立っていた。









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