有言実行?
(もう、どうしたもんかな〜)
フィオナがゴブリンロボットを全機破壊したので、新人、先輩冒険者達の視線がヒロシに突き刺さっていた。
「あの銃拳士の少女の仲間なら、こいつもまたゴブリンロボットを全機破壊するかもしれない」といった考えがあっての事である。
はっきりいってヒロシはこんな状況は大の苦手である。
なるべくなら、こんな状況にはなってほしくはなかった。
「あ〜、周りの視線が痛い〜」
「ヒロシ、その、すみません。私としては自分の戦い方ををしただけのつもりだったんですが・・・」
「問題無いであります、フィオナ殿」
「そもそもゴブリンロボットを破壊する様な事を言ったヒロシの自業自得だしね」
「お前らそれでも僕の契約獣か。もっと僕を労れよ」
「そもそもあんな質問をした時点でもうアウトであります」
「そうそう。ダイコクの言う通りよ」
「まあでも、いつも通りにやれば大丈夫でありますよ。ヒロシ」
「ヒロシって無駄に緊張するのよね。普通にやったらヒロシならバッチリよ」
「そうかなあ。僕ってこんな大勢の前で戦った事なんてないし」
「故郷ではいつもこんな感じであったであります」
「そうそう。一族の皆か他人かってだけよ」
「えと、ヒロシなら大丈夫です!!」
「根拠はあるのかよ」
「根拠はありません!!」
それは2人が初めてあった夜の会話の再現であった。
言っている人物は逆転しているが。
フィオナは狙って言ってはいない。至って真面目である。ヒロシは苦笑する。
「分かったよ。やるだけやってみるよ」
あ、とフィオナはヒロシの背中を見やる。ヒロシは山登り用のリュックサックを背負ったままである。
「ヒロシ、リュックサックを預りますよ」
「あ、そうだな。リュックサックを背負ったままの戦闘試験だと、更に目をつけられるかもしれないしな」
「まあ、リュックサックを背負ったままでも問題無いでありますけど」
「さすがにこれ以上、悪感情を抱かれるのは避けたいわね」
「じゃあ少しの間、預かってくれ」
「はい。ご健闘を」
フィオナはヒロシのリュックサックを預かる。見た目がゴツいので重いとフィオナは思ったが、そうでもなかった。
「113番のパーティの少年、前へ」
実はレティコルカはとある事情があって、ヒロシがゴブリンロボットを全機破壊すると思っていた。いや、確信していた。
(はあ、そういう事ですか・・・絶対面倒くさい事になる)
レティコルカは思いを馳せる。なんともいえない感情が彼女の中で渦巻いていた。
ヒロシはゴブリンロボット5機の前に立った。
冒険者達の視線が否応なしにヒロシに刺さる、刺さる。
(やるしかないか)
ヒロシは腹をくくった。
刀を抜き右手で持つ。特になんという構えでもない。そのまま走り出した。
だが、その速度が尋常ではない。フィオナ程ではないにしても速い。
駆ける。駆ける。駆ける。あっという間にゴブリンロボットの群れにたどり着く。
「ふっ!!」
ヒロシは目の前のゴブリンロボットを頭から唐竹割りにした。ゴブリンロボットは綺麗に左右に別れて破壊される。右手一本でそれをやってのけた。
ヒロシの両側面から木刀と棍棒が迫る。
「はぁっ!!」
右側のゴブリンロボットの脳天に刀を突き刺す。
左側のゴブリンロボットは手刀で首を刎ねた。
間を置かず残り2機のゴブリンロボットの矢がヒロシに迫る。
それを刀の一振りで打ち払う。左右のゴブリンロボットを蹴り飛ばし、矢を放つゴブリンロボットに向かって走る。
ヒロシは刀を両手で握り、刀を横向きにする。
「せえのっ!!」ヒロシは勢いよく叫び、刀を振り抜く。
しかし、ゴブリンロボットまではまだ距離がある。どう見ても刀の刃は届いていない。
すると、刀の刃が伸びた。およそ2メートルくらいだろうか? なす術なくゴブリンロボット2機の胴体は上半身と下半身が泣き別れになった。
「そこまで。113番のパーティの少年、合格です」
冒険者達は呆気にとられていた。図らずもヒロシが有言実行した事に、ただただ驚くばかりである。
手刀でゴブリンロボットの首を刎ね、刀が伸びるなんて想像もしていなかったであろう。
「はあ、なんとか合格だな」
「やりましたね、ヒロシ!!これで2人共合格です!!」
「やはり大丈夫でありましたな」
「ヒロシはやれば出来る子って私達は分かっていたしね」
喜ぶヒロシ達一行。和やかな雰囲気が彼らに流れる。
一方、戦闘試験官のレティコルカはというと。
(ゴブリンロボット10機破壊。いくら予算が下りるとはいえ、上に説明するのに面倒くさくなりそうですね。)
レティコルカは人知れずため息を吐いた。




