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銃拳士の少女

ヒロシ一行以外の8組の戦闘試験は恙無く終わった。

全8パーティ合格である。この戦闘試験の質が低いというわけでは決してない。

きちんと法律で定められた規定に基づいて行われている。

それゆえ、皆が皆、しっかりと戦闘訓練を積んでくるので、落ちる方が珍しいと言われている。


そしてヒロシ一行のパーティでは、ヒロシとフィオナがどの様に戦闘試験を受けるか相談が行われていた。

「どうしましょうか?私はヒロシの戦いを少し見ただけで、ヒロシの戦いに息を合わせられるとは思えませんし」

「1人づつなんてのは可能なのかな?レティコルカさんだっけ?

あの姉ちゃんは僕がゴブリンロボットをぶっ壊すと思っているみたいだし。もし可能ならフィオナが先に受けた方が良いと思うぜ」

「ヒロシ、そういう事を自業自得と言うのでありますよ」

「まあ、ヒロシならしそうな質問だったけどね」

「分かりました。とりあえず聞けるだけ聞いてみましょう」

フィオナが真面目な表情でそうヒロシ達に宣言する。


「113番のパーティ、前へ」

「あ、すみません。1人づつ戦闘試験を受ける事は可能でしょうか?」

フィオナの質問に修練場全体がざわつく。基本的にこの戦闘試験はパーティを想定した戦闘試験である。


自分1人だけでは出来る事なんてたかが知れている。だからこそ、冒険者はパーティを組んでお互いの弱点を補うのである。

1人だけで活動している冒険者もいるにはいる。そういう冒険者は他とは隔絶した強さを持っている。

だからこそ、1人で活動が出来るのである。とはいえ、のっぴきならない事情で1人で活動する者もいる。

そういった冒険者も他とは隔絶した強さを持っている。


つまり言外にフィオナは言っているのだ。パーティが前提の戦闘試験を1人でやってのけると。

それだけの強さが自分にはあるのだと。

合格した新人冒険者パーティは、信じられない物を見る目でフィオナを見ている。観客席の先輩冒険者達はヒロシはともかく、フィオナがそんな事を言い出した事に少なからず驚いている。


「可能です。ですがその場合は、冒険者ギルドは貴方がどの様な大怪我をしても責任はとりません。それでもよろしいですか?」

レティコルカはフィオナに説明する。その表情はなんともいえない表情である。

困惑、心配、そういった感情がない交ぜになっている。

「大丈夫です。師匠との修行は1人で戦う事を前提とした物でしたから」

フィオナはこの戦闘試験を舐めてかかっているわけではない。きちんとした自信に裏打ちされての発言である。

その表情は至極真面目な物だ。


「分かりました。そこまで言うのであればこちらからはもう言う事はありません。では貴方の戦闘試験を開始したいと思います」

レティコルカがそうフィオナにそう宣言する。


「わがままを聞いて下さりありがとうございます。それではいきます」

フィオナはライフルを右手にやや前傾姿勢をとる。その瞬間、突風がフィオナの後方に吹き荒れた。自身の後方に圧縮された風を解き放ったのである。

フィオナは一気にゴブリンロボットの群れに肉薄する。

手近に迫ったゴブリンロボットの1機の頭に、ライフルを思いっきり叩きつけた。

ライフルを叩きつけられたゴブリンロボットの頭は大きくへこんで地面に倒れる。


(まずは1機・・・!)

迫る2機のゴブリンロボットの木刀と棍棒を、右手のライフルと左腕は風の魔法を纏わせて受け止める。

ライフルはゴブリンロボットの頭をへこませ、木刀を受け止めたのに傷1つ付いていない。

左腕の風の魔法は、圧縮された風が盾になって棍棒を受け止めている。


(まだまだここから!!)

残り2機のゴブリンロボットが矢をつがえてフィオナを狙っている。

ここからどうフィオナは動くのであろうか。ヒロシも含め修練場全体が固唾を飲んで見ている。

フィオナの後方にまた突風が吹き荒れる。木刀と棍棒のゴブリンロボット2機はそれに巻き込まれて吹き飛ばされる。


(師匠の教え!!遠距離攻撃役を真っ先に殺す!!)

矢をつがえたゴブリンロボットに近づきながら、1機にライフルの狙いを定めて風を圧縮した弾丸を放つ。

弾丸はゴブリンロボットの胴体に命中して大きな風穴を空ける。

もう1機の矢をつがえたゴブリンロボットには、左腕から圧縮した風の塊をぶっぱなす。

風の塊を受けたゴブリンロボットは胴体が大きくひしゃげる。

それぞれ風の弾丸と風の塊をぶつけられたゴブリンロボットは、ほぼ同時に地面に倒れる。


(あと2機!!)

3度フィオナの後方に突風が吹き荒れる。今度は右手のライフルにも圧縮した風を纏わせる。勿論、左腕にも圧縮した風を纏わせる。

ゴブリンロボットに肉薄したフィオナは、ライフルと左腕をラリアットの要領でぶちかました。

首に致命的なダメージを受けたゴブリンロボット2機は、首が変な方向を向き地面に倒れた。

「合格です。113番のパーティのお嬢さん」

レティコルカが静かにそう告げる。その表情は少しだけ動揺の色が見てとれた。


「やった、やりましたよヒロシ!!合格です!!」

フィオナはヒロシ達に満面の笑顔を向ける。

「お、おう。良かったな、僕も嬉しいぜ。それとフィオナって銃拳士だったんだな・・・」

「おめでとうであります、フィオナ殿。いつもと雰囲気が全然違うので少し驚いたであります」

「や〜ん。可愛い顔してやるじゃないフィオナちゃん!!おめでとお〜!!」


銃拳士。それは銃と格闘術を組み合わせた職業である。よっぽど良い高級素材で造られた銃を用意できなければ、銃がすぐに使い物にならなくなるので、なる者が少ない職業でもある。

なので金持ちの道楽なんて揶揄される職業でもある。


「まさか貴方がゴブリンロボットを全機破壊するとは思いませんでした。普通に銃で遠距離攻撃をするものだと思っていました。予備のゴブリンロボットを直ぐに用意させましょう」

レティコルカはすでに落ち着きを取り戻している。だが修練場全体は依然としてざわついている。

ヒロシではなく、銃拳士という珍しい職業の少女がゴブリンロボットを全機破壊したのである。

さもありなん。致し方なしの状況であった。


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