呑気な質問
修練場は地下とは思えない程、天井が高かった。
壁は木製で床は土が敷き詰められていた。
内部はとても広く、一度に100人を収容しても余りある広さであった。
中央の地面が修練の為に戦う場所なのだろう。左右には階段型の観客席があった。
観客席には先輩冒険者が大勢座っていた。新人冒険者になれるかどうかがこの戦闘試験で決まるのである。
実力のある新人は是非とも仲間にしたい思惑があっての事である。
「こちらが修練場になります。戦闘訓練の際の騒音対策の為に地下に作られるのが通例になっています」
レティコルカは冒険者予定者達に説明を始める。冒険者予定者達は修練場の広さに圧倒されながらも、レティコルカの説明をきちんと聞いている。
(ひっろ!!寂れたロサキクの修練場でこれかよ)
(ふむ。実家の修練場の方が広いですね)
(各地の冒険者ギルドで修練場の広さに違いはあるのでありましょうか?)
(思いっきり走り回れそうね)
ヒロシ一行は説明を聞きながらそんな事を考えていた。
「では早速、戦闘試験を開始したいと思います。今は夜の戦闘試験の時間なので冒険者達は戦闘訓練をしていません。なので存分に戦闘試験を受けても問題はありません。
そして貴方達が戦うのはタカヤマ電機製のゴブリンロボットです」
修練場の奥からガショガショという音を鳴らせながらゴブリンに似たロボットが歩いて来た。
ゴブリンロボットは全部で5機で木刀やこん棒や鏃の丸い弓矢等を手にしている。
「こちらのゴブリンロボットと今から戦ってもらいます。ゴブリンロボットはセンサーが内蔵されており、ダメージを数値化する事ができ、切り傷、刺し傷、打撃、骨折、致命傷等の擬似的なダメージを与えて、ゴブリンロボットに設定されている体力をゼロにすれば戦闘試験をクリアになります。」
「すみません。質問なのですが、このロボットを破壊したりしたら弁償しなければいけないのでしょうか?」
ヒロシがレティコルカに問う。
「弁償の必要はありません。戦闘試験で破壊される事を想定して製造されているので、そこそこ頑丈な装甲になっています。それに破壊する事を前提でそんな質問をしてきた方は今回は貴方が初めてです」
ゴブリンロボットはよく見ると細かい傷が無数に刻まれており、ちょっとやそっとでは破壊されなさそうであった。
「万が一破壊されたとしても国から予算が下りるので、心配ご無用です」
レティコルカは涼しい顔でヒロシの質問にそう答える。
「分かりました。ありがとうございます」
冒険者予定者達はヒロシを奇異の目で見ていた。まるでゴブリンロボットを破壊する事を前提の質問をしたから当然である。
このゴブリンロボットの戦闘試験は子供でも知っている様な事で、破壊する冒険者予定者なんて滅多に出ないはずというのが、共通認識であった。
一方、先輩冒険者達は、ヒロシに怒りの視線や冷たい視線や面白げな物を見る視線を向ける者等、様々であった。
先程の漫画の一件からヒロシは懲りてないというのが、先輩冒険者達の共通認識であった。
「ただ、破壊する程のダメージを与えれば良いという事ではありません。きちんと適切に攻撃を避けられるか、防御できるか。そこも戦闘試験に含まれます」
レティコルカは冒険者予定者達に説明を続ける。
「それでは111番のパーティから戦闘試験を開始したいと思います。ですが今回は113番のパーティは最後に戦闘試験を受けてもらいたいと思います。113番のパーティがゴブリンロボットを破壊してしまっては、それ以降のパーティが試験を受けられなくなるので」
レティコルカの言葉にヒロシが「えっ」と声をもらす。
「ヒロシ、どうしてあんな質問をしたんですか?明らかに目を付けられましたよ」
フィオナが困惑顔でヒロシに聞く。
「まあまあ、フィオナ殿。ヒロシは気にしいなのでありますよ」
「実際に破壊しちゃうかもしれないしねえ」
2匹の契約獣はあまり気にしていない様だった。
いよいよ戦闘試験が始まる。




