行き倒れの少女
ここはプラム王国の辺境。かつては栄えたロサキクの街。
そこへ続く街道のど真ん中。
冬の寒空の下、まっ昼間からオレンジ色の髪のショートヘアーの女の子が行き倒れていた。
「うう、お腹すいた」
少女はかれこれ3日間は食べ物を食べていない。諸事情ありで家出してきたのだ。
胴体に鎧、両肩当てに籠手と脛当てという騎士の姿をしているが剣は帯びていない。
代わりに右腰に大きめのライフルを下げている。
「行き倒れでありますなー」「本当ね、どうするの?」
少女の頭の上から声が降ってくる。少年と少女の声で、現状を確認されるオレンジ色の髪の少女。
「・・・・すっごく嫌だけど助けようかな」3人目の少年の声が聞こえた所でオレンジ色の髪の少女の意識は途絶えた。
何か良い匂いがする。それにとても暖かい。オレンジ色の髪の少女が目を覚ます。
自分の身体を見てみると、寝袋の中に入っていた。そしていつの間にか夜になっていた。
近くにはテントが張ってあり少女はその横で寝ていた様だ。
焚き火がたかれ、その回りに4本の支柱が斜めに立てられており、支柱の頂点が合わさりそこからフックが垂れている。
そこに持ち手の付いた鍋が引っかけられていて、良い匂いを放っている。
「あの、私って行き倒れてましたよね?」
鍋の前に座り不機嫌そうな表情をしている少年に話しかける。
「ああ、そうだよ行き倒れさん」
少年は嫌味を込めて言う。黒い髪で黒い目をしている、その少年はプラム王国ではそんなにいない容姿だ。
目付きは悪く怒りながらも静かに鍋をかき混ぜている。
行き倒れ少女は自分が寝たままで話している事に今さらながら気づいた。
(助けてもらった人になんて無礼を!!)
急いで立ち上がろうにも寝袋なので上手く起き上がれない。
もぞもぞしていると少年が寝袋のチャックを下ろしてくれた。
(こいつって結構美人なんだよな、行き倒れのくせに)
少年はそんな事を考えながら、チャックを下ろし終わると元いた場所に座る。
「まずは助けていただき本当にありがとうございます。私の名前はフィオナ
貴方の名前は?」
「ヒロシ・・・」
少年はそれだけ言って黙りこむ。なんとも言えない気まずい時間が流れる。
「そろそろかな」ヒロシがそう呟きお椀に鍋の中身をよそう。鍋の中身は玉子粥だった。鶏で出汁をとったのか塩だけではない美味しそうな匂いがお椀に満ちる。それをフィオナに差し出してきた。
「食べていいんですか?」
「じゃなきゃ助けねえ」
フィオナはお椀と匙を受けとると猛然と食べだした。お粥の熱さを考慮せず。
「あっちーーーーー!!」
「ほれ、冷たいお茶」
ヒロシが間髪入れずに緑茶の入ったコップを渡す。フィオナは受けとると一気に飲みほした。
「はあはあ、ありがとうございます」
「ねえ、フィオナって馬鹿なの?」
「何故、いきなりそんな事を言うのですか!?」
「行き倒れだし、熱々のお粥を一気に食おうとするし」
2人はそこでお互いの容姿をまじまじと確認した。ヒロシは残念美人を見たくて。見るだけならセクハラにはならないはずである。
フィオナはオレンジのショートヘアーで、目は二重で大きく鼻筋は通っており美人の中でも可愛い系に入る部類である。後、胸が大きい。ヒロシ的にはそこは重要だった。
フィオナもヒロシを観察する。ヒロシは黒髪黒目で目付きが悪く、もう少し目付きをよくしたら女の子からアプローチされそうなイケメンである。
自分と同じ様に胴体に鎧、両肩当てと籠手と脛当てを着けている。
腰の左側には刀が下げられていた。
たが、騎士には見えない。どちらかというと戦士の雰囲気がある。
行き倒れを助けるとは、自分の物資をわざわざ分けるという事である。
善意で助ける人もいるだろう。ただ、ヒロシの態度からは嫌々感が満ち満ちていた。
(もしかして、そのせいで目付きが悪いのかな?)
フィオナはそんな風に考える。
「いい加減、我々も紹介して欲しいであります」「そうね、待ちくたびれたわ」
フィオナの足元の左右から声がする。見ると右にうり坊、左に白兎がいた。
というか普通に喋っている。
「うわーー!!喋ったーーー!!!」
「うるせえっ、喋る魔物くらいいるだろ」
驚くフィオナにうり坊が自己紹介をする。
「自分はダイコクであります。ちなみにオスであります」
白兎も自己紹介をする。「私はスセリ。ちなみにメスよ」
この世界には、魔物と契約を結び使役する魔物使いがいる。向き不向きはあるものの、魔力さえあれば練習次第で契約を結べる。
中には強い魔物と契約を結び自分の身を守る者もいる。
しかし、喋る魔物となるとよほど長く生きて知性を得たものに限られ、数は少ないとされる。
そんな魔物を2匹、側に置いておけるのは魔物使いに他ならない。魔物はわざわざ人間の側で暮らす道理なんてないからである。
「ヒロシ殿、貴方は一体?」
「殿はいらねえ、ヒロシでいい。 僕もフィオナって呼び捨てしてるだろ」
「あ、そういえばそうですね」
「で、僕が何者かって話だったよな」
「はい」
「僕はただの薬剤士だ」




