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王道とは「やりがい搾取」の物語

 本来「やりがい」や「達成感」と言った感情は、「生存や、子孫を残すなどの行為に対して、その過程で脳から与えられる報酬」というお話しを前回させていただきました。


 ただこれらの報酬は本来「おまけ」であり、本当の目的はあくまでも「生存すること」だったはずです。


 その例として、やりがいや達成感だけが与えられても、食料がなければ人間は生存できない、という主旨の話をしました。


 さて、この感情は他者との関わりのなかでも発生します。


 おそらく昔は、一人では狩猟できないような獲物(私の貧困なイメージだとマンモスのような大型の動物)を、人々が集まって一丸となって狩猟したとします。


 大型の動物の狩猟に成功すれば、その集団にそれなりの長期に渡って食料が供給されるということもあるでしょうし、狩りそのものの成功率を上げることにもなるでしょう。


 つまり群を形成し、その一員となることは生存や子孫を残すなどに効率的です。


 そしてその一員として仲間を助けたり、協力することによって、群を維持、あるいは拡大する、その過程にやりがいや達成感が発生するのも至極当然と言えます。


 ただ人類はその「想像力」で、「群」をどんどん拡大させていきました。


 最少単位である個人、そして家族だけではなく、村、国、そして人類全体、さらには「先祖」やまだ見ぬ「子孫」に対しても仲間意識を持つに至りました。


 もちろん敵対する個人同士や、国同士などもありますが、あくまでも人間は本来自分に関わりのない集団に対しても認識できる、という意味です。


 人間以外で例えば犬が自分の所属する群のことは認識できても、「俺は犬という種族全体の一員だ」と認識することは難しいでしょう。


 こうして人間は群の拡大を行いながら、自然界に存在しない、独自のルールを制定していきます。


 それは宗教であったり、価値観であったり、法律であったりします。


 そしてそれぞれの群が制定するルールを守ることにもやがて「やりがいや達成感」を感じるようになり、いつしかそれは本来「生存するため」であったやりがいや達成感といったものを「やりがいや達成感を感じるために生存する」といった転換を起こしました。


 例えば「武士は食わねど高楊枝」という言葉があります。


 当たり前ですが、食わないと死にます。


 ただ、食べることよりも自分の信じる規範、つまり価値観を守ることを重視する人々が現れたのです。


 そう、人間は「やりがいや達成感」に対して命をかけるようになったのです。


 ここで、ある物語について話してみたいと思います。


 その男は英雄の子孫で、仮に「とらこう」と名付けます。


 とらこうはある日、王様に呼び出されます。王様は英雄の子孫であるとらこうに、「人類の脅威」となる存在を倒すことを依頼します。


 そしてその資金をとらこうに渡しますが、それは僅かばかりのお金です。なんとそのお金では城の兵士が装備しているような武器や鎧すら買えません。人類の脅威に対するにはなんとも心もとない資金です。


 しかしとらこうは文句も言わず旅立ちます。彼に待ち受ける余多の試練……いつしかとらこうはその命を失ってしまいます。


 しかし彼には今風に言えばチート能力がありました。


 その能力は「所持金を半分にすることで、生き返ることができる」というとんでもないスキルです。


 彼は冒険の中で、誰にも支援を受けることなくこつこつ貯めたお金を半分失いながらも、なんとか生き返ります。


 しかしそこで王様から非情ともいえる一言「とらこうよ、死んでしまうとは情けない……」を浴びせられます。


 とらこうはろくな支援も受けていないのに、仕事をミスすると嫌味すら言われてしまうのです。とらこうの仕事の環境は間違いなくブラックです。


 しかし彼はついに、「人類の脅威」を排除することに成功します。

 そんな彼に、やっと王様は報酬の話をします。


 「私の代わりに、この国の王とならないか」


 そうか! とらこうは「この国の王」という報酬があるから文句も言わず頑張ってたのか! と思うのも束の間、彼は珍しく重い口を開いてこう切り出します。


「いいえ王様、私は、自分の治める国を自分自身で探す旅に出ます」


 そう、彼は、報酬など求めていなかったのです。


 現実的に彼に与えられた報酬は、旅の途中で助け出したお姫様と宿屋に泊まった時に、その日の夜楽しんだことくらいでしょうか。


 そう、これは皆さんもよく知る国民的RPGとも言われる「ドラゴンクエスト」のストーリーです。


 この物語で主人公(あなた)に与えられる報酬は「やりがいや達成感」以外にはありません。


 そしてこの物語は「王道」と言われます。


 そう、王道とは、英雄を「人々を救う」というやりがいや達成感で搾取する物語とも言えるのです。


 さて次回は「搾取されていることに気がつきはじめた人々」ということでまた別の作品をもとに色々語ってみたいと思います。


 タグにあるように所詮はたわごとなので、きびしいツッコミなどはご容赦頂ければ幸いです。


 

おまけ


もしファミコン版のドラクエをお持ちの方がいらっしゃれば

「おおくげいら ひばむななね ぐすだふまれ わお」

という復活の呪文で、レベル30に成長した「とらこう」に会えますよ!

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