ぴよその3 へび
遅れたのでお詫びとしてもう1話。
「ぴい、ぴい…………」
いたいいたいいたいいたいいたいいたい。
ぼくの左の羽とその下のわき腹がズキンズキンと痛む。
見てみると刺された所の周りの皮膚が、紫色に変わっていた。怪我ってこんなに痛いのか。
赤い液体は止まってくれた。あれが流れ続けるのは良くない。そうぼくの本能が警告していた。
だから、止まってくれたことは嬉しい。
だけど、痛い。
ぼくは激痛に襲われている身体を引きずりながら歩いていた。
お腹はまだ減っていない。
眠くなってきた。
寝ちゃおうかな。
ぼくはおしりを冷たい地面に下ろした。
まぶたを閉じる。
寝よう。
…………シュルシュル……………
ん?
ぼくは不思議な音で寝る前に起こされた。
なんの音だろう。でも嫌な予感しかしないな。
ぼくは立ち上がり、どっちからその音が近付いてくるか、よく聞いた。
左だ。
今までぼくが歩いてきた道だ。
不思議な音は黄色いしましまより速い速度で大きくなってくる。
逃げなきゃ。
てってってってってって
まだ黄色いしましまの針が刺さったままみたいに痛いぼくの左半分は、走るな、限界だと言っている。でも逃げなきゃ駄目だ。今度の音は、確実にぼくを殺す。こんだけ走ってるのに、少しずつ、確実に近づいてきている。
シュルルルルシュルシュル
走った。ぼくは頑張った。
でも、音はすぐぼくの真後ろに来ている。
振り向くな。振り向いちゃだめだ。
シュルルルルルルル シュルル
真後ろ。すぐそこにいる。
ぼくは、その恐怖に打ち負けて、振り向いてしまった。
二つの光る目。それがぼくを見つめていた。
大きく裂けた口からは、ぼくの羽から流れた液みたいに真っ赤なべろが見え隠れしている。
緑色の、大きなうねうねは、ぼくに口を開いた。
がばりと大きな口が開く。
そこには、黄色いしましまの針なんて比べものに鳴らないくらい大きく、鋭い歯が2つ突き出ていた。
あれに噛まれたら、絶対死ぬ。
その死の歯は、一気に襲いかかってきた。
ぼくは全力で地面を蹴り、それを回避する。
バクン! とぼくのお尻を掠めて口が閉じられた。
ぜんそくぜんしーん!
ぼくは小さな両脚を思いっきり動かす。
てててててててててて
少しずつ大きなうねうねから離れる事が出来ている。
このまま走ればなんとか逃げ切る事が出来る!
このまま走れれば。ぼくの体力はすでに無くなりそうだ。このままでは、追いつかれ、ぼくが食べられる。
死ぬ。
そう覚悟を決めたとき、ぼくの目の前に分かれ道が現れた。初めての分かれ道であり、最高のタイミングの分かれ道だ。
迷ってる暇なんてないから、ぼくは右を選んだ。
ぼくの背後で大きなうねうねが分かれ道の真ん中の壁に激突した音が聞こえた。
よっしゃ。
でもすぐにうねうねは追ってくるだろう。
ぼくは体力の限り走った。
シュルシュルという不気味な音がまた後ろから近付いてきた。
ああ、ぼくはもう無理かもしれない。
そう希望を捨てかけたぼくの前に、また分かれ道が現れた。
でも、さっきとは違う。
片方の道はそのまま真っ直ぐ。もう片方の道は今までの道より細く、上に伸びている。
ぼくが上に伸びる道を覗くと、だいぶ上の方まで伸びているようだ。
ぼくは頑張ってその道に向かって跳んだ。
すっぽりとはまったあと、羽を動かしその道の中へと身を隠す。
左の羽が壁にこすれ激痛が走った。声を出してはならない。ぼくは悲鳴を押さえ込み、さらに上に登った。
シュルルルルルシュルルシュルシュル…………………
音はぼくの下を通り過ぎていった。
恐怖は、去った。
でもこのまま大きなうねうねと同じ通路に降りるわけには行かない。
ぼくは痛みをこらえながら、通路を上に抜けていった。
その通路にはきちんとした出口があった。
出たところはさっきよりも広い通路。
大きなうねうねが4匹くらい横に並べる幅だ。
その大きな通路には風が吹いていた。
さっきいた場所より、全然暖かい風。
風は片方から吹いてくる。
そっちには、暖かいものがあるはずだ。
ぼくは風が吹いてくる方向に向かって歩くことにした。
暖かい場所を求めて。
ひよこ
合計経験値:21