ぴよその2 はち
遅れました。
暖かい場所を求めて。
ぼくは歩いていた。
さっきピンクのうねうねを食べて少しだけ膨れたお腹は、すでにすききっている。
次のご飯を見つけないと、動けなくなっちゃう。
ぼくはどこまで続くとも分からない真っ直ぐに続く道を歩いていた。
分かれ道は、無い。
その時だった。
………ゥー
ん?
遠くの方で、何かの音が聞こえた。
………ウー
近付いてくる。
その音は段々と大きくなってくる。
………ウウウウウウウ
ぼくは身構えた。何かが、やってくる!
ブブブブブブ
そいつは、ぼくの目が届く距離まで来ていた。
黄色と黒のしましまを持ったそいつは、爆音を立てながらぼくに向かって突っ込んできていた。
ブウウウウウン!
そいつはぼくに気づいた。そして、一度空中で止まった。
ぼくとほとんど同じくらい大きいそいつは、ぼくを見つめている。
なんだこいつ。
喰えるかな。
心の中でぼくが黄色いしましまを食べようかと思った瞬間だった。
ブブブブブブウウウ!!
そいつが勢いよく飛びかかってきた。
うわっちゃ!
ぼくは狭い通路の中でなんとか身をよじり、黄色いしましまの攻撃を避けることに成功した。
ぼくの横を通り過ぎた黄色いしましまは、ゆっくりと振り返り、そのお尻についている危なそうな針をこっちに向けた。
光植物の光を受け、その一本の針がギラリときらめいた。
ブウン! ブウゥン!! ブブブブブウウウウ!!!
そいつはもう一度ぼくに向かって突進して来た。
速いー!
ぼくはさっきと同じように横に飛び退いた。
さっきみたいに、横を通り過ぎると思ってたらく、と空中で黄色いしましまが曲がった。
針は、ぼくの方に向けられてる。やば
ズグッ
深々と、ぼくの左の羽を貫通して、ぼくの身体に針が刺さった。
「ぴぎゃあああああっ?!」
あああああああっ!
いだいいだいいいああああ!
こいつ………………! こいつううううあああ!!
ぼくはぼくに針を刺している黄色いしましまの首もとにかじり付くと、その首を黄色いしましまの胴体から切り離した。
ビグンと一回震えると、黄色いしましまは動かなくなった。
ぼくは黄色いしましまの針をくちばしを使って引っこ抜いた。
いたいなんてことしてくれんだいたいいたいいたい。
テテテテン
〈ひよこは 20 の経験値を手に入れた〉
テテテッテ テッテッテテテテ
〈ひよこの レベルが 2 に上がった〉
〈ひよこの ステータスが それぞれ上がった〉
〈身体能力+1 守備力+1 精神力+1〉
うるさいな、今ぼくは痛いんだよ。
ぼくは憎悪を込めて動かなくなった黄色いしましまを蹴り飛ばした。
こいつ、本当に嫌い。
でも。
食べなきゃ。
グチッ、ブチブチ、バリッ、ごくん
グチュ、バリバリ、ジュルッ、ごくん
危なそうな針を除き、ぼくは黄色いしましまを完食した。
大きかったから、お腹はいっぱいだ。
ぼくは自分の左の羽を見た。
真っ赤な液体が流れている。
痛い。本当に痛い。
ずきずきする。
そういえば、けがしたの生まれて初めてだな………
ぼくはそれでも歩き始めた。
今ぼくにこのけがは治せない。せめて、水で流す事が出来れば。
ひよこのぼくは、進む。
暖かい場所を求めて。
ひよこ
合計経験値:21