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ひよこ転生  作者: 音坂 里尾 (おとさか さとお)
ひよこの目覚め
2/7

ぴよその1 みみず

 てち………てち………


 薄暗い洞窟に、小さな足音が反響する。

 ひよこの小さなかぎづめが岩に当たり音を立てている。


 ずっと代わり映えのない景色。

 ずーっと岩岩岩。

 所々土の壁が見えたり天井から根が垂れてたりするけど、ずっと何にもない道。


 暇だなー。


 でも、今のぼくにとって退屈なんて敵じゃなかった。


 おなかすいたなー。


 さっきからどれだけ歩いただろう。

 途中何度か寝て、それでも同じ方向を目指してきた。それなのに、出口が見える気配がない。

 そして、何よりぼくは今まで感じた事がないくらいお腹が減っていた。

 いつもは空から小さいつぶつぶのご飯がたくさん降ってくるのに、どんだけ歩いてもご飯は降ってこない。

 これは、空から降ってくるご飯はあまり期待しない方が良いかな。

 だってここ、上がすぐ壁だしね。

 だからぼくは生まれて初めて自分から動いてご飯を探している。


 そうしてずっと歩いていたときの事だった。

 ぼくが進んでいる先の道の真ん中に、なにかうねうねと動く物があるのが見えた。


 ぼくはそれに近づいてみた。

 それは道を横切るようにして動いていた。

 ピンクがかった細い糸みたいな物。

 ぼくはそれを右足でそっとつついてみた。

 すると、ピンクのうねうねは触られたことを嫌がるようにびちびちと激しく動いた。


「ぴよっ!?」


 思わずぼくはそう叫び、足をもつれさして後ろに転んだ。

 ああびっくりした。


 ぼくは起き上がって、もう一度恐る恐るそいつを見た。


 ピンクのうねうねはさっきよりも速くうねうねし、地面に頭を突っ込んだ。

 どうやら、逃げるみたいだ。


 どうする? こいつを、逃がす?

 なんかさっきびちびち動いたし、はっきり言って怖い。


 それとも、喰う?


 喰う。このピンクのうねうねを?


 いやだなー………


 でも。


 こいつを逃がしたら、次があるかはわからない。もしかしたら、こいつが毒を持っていて、最初で最後のご飯になるかもしれない。

 でも。


 ぼくは半分ほど地面に潜りかけているピンクのうねうねのお尻を加えて、引っ張り出した。

 あと少しで逃げられたうねうねが、最後の抵抗にとびちびち暴れた。


 ぼくはピンクのうねうねの身体を脚で地面に固定し、くわえていたお尻を上に引っ張った。

 ブチブチと生々しい音を立て、うねうねの身体が真ん中で2つに裂けた。ぼくはその内1つを、首を上に向けて飲み込んだ。

 どろっとした内容物と、ぷちゅぷちゅとした感触が喉を滑らかに滑っていく。


 ゴックン


 …………おいしい


 ぼくはたまらずまだ小さくうねうねしてる残りのうねうねも裂き、食べやすいサイズにして1つ1つ飲み込んだ。


 おーいーしー!


 ぼくはうねうねを1つ残らず食べきると、ちっちゃなベロで口の周りを拭った。

 けふっ。

 お腹がちょっと膨れた。まだいっぱいじゃないけど、これでまた歩ける。

 そうしてぼくが歩き出そうとしたときだっった。


 テテテテン


 そんなリズムが耳元で流れた。


〈ひよこは 1 の経験値を手に入れた〉


 うん? なんだこれ。

 そんなメッセージが、ぼくの目の前に現れた黒い板に浮かび上がった。

 経験値?

 聞いたことのない言葉だな。経験した値?


 その瞬間、ぼくは自分のその考えに違和感を感じた。


 ……………言葉………って、なんだ?


 いつもの場所では、そんな物は無かった。存在しなかった。

 今、ぼくは物を考え、黒い板に浮かぶ文字を読み取った。白い文字は何も応えない。

 この冷たい場所に来てから、ぼくの中で何かが変わった。

 ぼくは言葉を覚えた。これはどういうことだろう。

 ぼくはそう思いながら目の前に浮かぶ黒い板に触れようとしたが、すり抜けた。

 この板は触れるような物ではないようだ。


 わからないことは考えていても仕方がない。

 ぼくは再び道を歩き始めた。

 この先には何が待っているのだろう。何も待っていないかもしれない。だけど、ひよこのぼくは進む。


 暖かい場所を求めて。

一週間に一回って割とじれったい。

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