【偽物のアイドル】
私にも、すっごく仲良しのアイドルがいるんだ。
『蛍乃アカリ』ちゃんっていう子なんだけどね。
私と同じ時期に地下アイドルになって、お互いソロで活動している、同い年の子なの。
それでね、この前ライブで対バンした時に、今度のお休みに一緒に遊びに行こうって約束したんだ。
そんなわけで、今日は久しぶりにアカリちゃんと原宿デートだよ。
普段制服かアイドルの時の衣装にパーカースタイルとかばっかりだから、私服が着られるのってこういう時だけなんだよね。
ちょうどこの前メル○リで可愛いワンピを買ったから、今日はそれにヒール高めのリボンパンプス合わせてオフモード全開。
あ、でも私はアイドルだから(全然無名だけど)、ちゃんとマスクとだてメガネをして変装は忘れないようにしているよ、一応。
とりあえず2人で気になるお店を回って、可愛いアクセとかコスメとか見て、アイドルの衣装の参考になりそうなお洋服や古着も見ながら満喫。
イン〇タとかSNS用に写メも撮りまくったし、今夜のブログ更新が楽しみ☆
しばらくお店回って、ちょっと疲れてきた頃、
「ひなちゃん、このお店知ってる? この前友達に教えてもらってね、めっちゃ可愛いから行きたいんだぁ」
アカリちゃんがスマホの画像を見せてくれた。
めっちゃポップで可愛いカフェっぽい。
いい感じ!
「えー、なにココ。行ってみたい!」
「ねー、疲れてきたし行こっか」
「行こ、行こー」
即決して、アカリちゃんと手を繋ぎながら、お店に向かった。
っていうかアカリちゃん、めっちゃ良い匂いする。
店内は想像よりは小さめだったけど、写真通りオシャレで可愛いお店だった。
混んでるかなって思ったけど、ちょうど並ばずに入れたので、早速アカリちゃんにオススメしてもらったパンケーキを注文。
「やっぱり原宿楽しいね、アカリちゃん」
「うん……」
でも、これまですごく盛り上がっていたのに、席について注文を終えた辺りから、アカリちゃんの様子が突然変になっちゃって。
「……んっ、どうしたの? アカリちゃん、大丈夫?」
アカリちゃんはなんだか、少しだけ寂しそうな、何かに怯えるようなそんな表情で、私の方を見ていた。
最初は疲れて体調悪くなっちゃったのかな、って心配したんだけど、どうやらそういうわけでもなさそう。
「……あのさ、ずっとひなちゃんに聞きたいなって思ってたことがあって」
「うん、どうしたの?」
何か、大切で重要な話をするんだって、そんな風に感じたから、私も真剣な表情で見つめ返す。
「えっとね……ひなちゃんのその……トイレのこと、なんだけど」
「えっ……うん……」
まさかの、う○ちの話?
「えっと……お話、聞きたいなって思って」
「えぇ……」
ちょっと待って。
私たちアイドルなのに、こんな場所で、話していいのかな。
一応私は周りをキョロキョロ見渡す。
(なんかみんな静かだし、話しづらいなぁ)
サイゼとは違って、割と静かな雰囲気だし、たぶん小声で話しても聞かれちゃう感じだった。
アカリちゃんも分かってるはずだけど。
「……ここだと、ほら、ダメじゃない?」
「えっ……?」
私が言うと、アカリちゃんは不思議そうに首をかしげた。
あれ?
私、今おかしいこと言った?
「……だめなの?」
「えっ、だって……」
そもそもこんな所で話したら恥ずかしいし。
それに、誰かに聞かれちゃうかもしれないし、ね。
この前ミナコちゃんに「自覚が足りない」って怒られてしまったばかりだから、私がちょっと気にし過ぎなだけなのかな。
うーん、でも……。
私が言葉に詰まってると、アカリちゃんの方も分かってくれたみたいで、納得したような表情を見せると肩を落とした。
「そっか、ダメなんだ……」
「う、うん……」
アカリちゃんの反応は、ちょっと引っかかる言い方だった。
あれ? だってアイドルのトイレ事情は絶対『ひみつ』なわけだし、いくら店内に女の子のお客さんしかいないからって、アイドル以外の子に聞かれたり、知られたりするのはいけないことだもんね。
「……」
なんか、ちょっと微妙な空気になっちゃったなぁ。
会話、会話。
何か喋らなきゃ。
「えっと……アカリちゃんはさぁ、ステージの衣装とかって――――――」
「―――――ひなちゃん、私ね……ずっと隠していたことがあるの」
私の言葉を遮るように。
アカリちゃんがそんな風に切り出してきた。
いつにもまして真剣なトーン。
思わず私も言葉を詰まらせて、アカリちゃんの方を見つめる。
いつもステージの上でも、ステージの裏でも笑顔でキラキラしてて、可愛いアカリちゃん。
そんな「アイドルのアカリちゃん」がどこか遠くへ行ってしまったかのように。
目の前に映る女の子は、暗くて、陰鬱で、寂しげで、泣きそうな顔をしている。
(えっ、誰……?)
そんな風に思えるくらい、今のアカリちゃんには、元気も、キラキラも、何にもなかった。
そんな中で、私も何も言えずにいたら、アカリちゃんはとうとう自分から、口を開いた。
「私、本当はアイドルじゃないの」
「――――――え……」
意味がわかんない。
意味がわからなすぎて、何も考えられなかった。
「ひなちゃんも知っているでしょ? 『最近、偽物のアイドルが混ざっている』って話」
「……あ、あぁ……あれ、ね」
確か、この前ユイナさんが言っていた話だよね。
「最初はね、私もその噂を聞いた時、何の話だろう? って疑問に思っていたのだけど……色々なアイドルの子達の話を聞いている内に、私知っちゃったんだ」
「……」
私は、何も言えない。
とりあえず、アカリちゃんの話を聞かなきゃ。
「アイドルって、トイレに秘密があるんだ、ってこと。そして、それを知らない私は、アイドルじゃないんだ、って……」
「そ、そうなんだ……」
「さっきの感じだと、きっとひなちゃんもアイドルだから、その秘密のことを知っているんだよね」
「うん……でも、それは誰にも言っちゃいけないこと、だから……」
私が申し訳なさそうに返すと、アカリちゃんは少しだけ表情を歪めた。
泣いちゃうかも。
そんな風に心配になるくらい、悲しそうな、悔しそうな眼を向けている。
「そっかぁ……でも、やっと確信した……最近、噂になってた『偽物のアイドル』って、やっぱり私のことだったんだ……私が、ずっと疑われて、いたんだね……」
「アカリちゃん……」
「ごめんね、こんな話……ひなちゃんにしか、できないと思ったから……」
「ううん、私こそ……ごめん」
何が「ごめん」なんだっけ?
自分で言ってて、混乱しちゃう。
何も教えてあげられなくてごめん?
私だけアイドルでごめん?
今まで気が付いてあげられなくてごめん?
言葉が見つからなくてごめん?
助けてあげられなくてごめん?
……わかんない。
「ひなちゃんから見て、私ってやっぱり、アイドルとは違う?」
アカリちゃんからそんな問いかけ。
私はすぐに、ハッキリと首を振った。
「ううん。アカリちゃんはステージでも控室でも、いつでもキラキラしてるし、誰からみても、みんなに好かれるアイドルだよ」
「……アイドルから見ても、私が偽物だって、気が付かない?」
「うん、私だって、言われなかったら分からなかったし」
それは本当のこと。
それに、『偽物』っていう言い方にすごく違和感がある。
だって、アカリちゃんはどこからどう見てもアイドルだもの。
「だから、偽物だなんて言わないで」
私が言うと、アカリちゃんは少しだけ驚いた瞳で、私を見てくる。
カラコン越しに分かる、涙ぐんだキレイな瞳。
「……私、もう少しだけ、続けてもいいのかな? アイドル……」
「当たり前だよっ、アカリちゃん」
「でも、もし偽物だってバレたら……」
「それでも、続けたいんでしょ?アイドルで、いたいんだよね?」
「うん」
アカリちゃんはほとんど泣きながら頷いた。
う〇ちが普通だからって、アイドルでいちゃいけない、なんてことは無いと思う。
だってアカリちゃんは、こんなに『アイドル』に対して真剣なんだもの。
誰も責めたりしないよ、きっと。
「アカリちゃん、負けないで。応援するから」
「うん……ありがと。ひなちゃん、この話……みんなには内緒にしてね」
「当たり前だよっ」
アカリちゃんが私にだけ話してくれたんだもん。
絶対誰にも話すわけないよ!
ちょうどそのタイミングで、店員さんが注文していたパンケーキを運んできてくれた。
美味しそうなパンケーキっ。
「えー、すごーい♪」
アカリちゃんも切り替えたみたいで、少し元気を取り戻して、イ〇スタ用にスマホで撮影。
それから二人でSNSでつぶやく用に2ショ撮って、何気ないいつも通りのお話をして。
アカリちゃんも帰る頃にはすっかり笑顔になってくれたから、とりあえずホッと一安心。
今日も途中でお腹痛くなって、う〇ちが出てくるんじゃいかなってビクビクしていたけど、そんなこともなかったし、色々衝撃の事実はあったけど、楽しい1日だったなぁ。
さてと、帰ったらブログも更新しなきゃ☆
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