【夢じゃなかった】
アイドルの妖精こと、喋るピンク色う◯ちが私のカラダに宿った、次の日。
朝も特に体調悪くないし、便秘だったカラダがスッキリしたから、むしろ元気なくらい。
そんなことよりも、もう私は学校の授業中でも、『これからのアイドル活動』のことで頭がいっぱいだった。
「う~ん……アイドルって言っても、まずはどうしたらいいのかなぁ?」
実際、ずっと何となくなりたいなぁ、っていう夢はあったけど、いざいきなり「今日からアイドルだ」って言われると困るよね。
アイドルってなったら、まず何をすれば良いんだろ?
とりあえず好きな曲のカバー(?)を練習して、振りコピして、衣装用意して……。
(あれ……そう言えば、アイドルになったはいいけど、ライブとかってどうやったら出られるんだろ?)
私、アイドルのこと何にも知らない。
誰からに訊いたり、相談したりしたいけど、アイドルをやっている知り合いもいないし、どうしよう……。
そんな風に思った矢先―――――。
それは突然訪れて。
「――――ひぐぅっ!?」
いたいっ、いたいっ!
出会い頭にお腹をグーパンされたみたいな鈍痛。
お腹が捩れるような痛みが急に私を襲い掛かってきたのだった。
(うぅ……授業中なのに……やだ、お腹痛い……!)
―――ゴロロロ……ッ!
痛いっ、やばい、これ。
さっきからお腹から、漫画みたいな音出てるし、とにかく我慢できそうにないほど、痛い。
生理は終わったばかりだからあり得ないし。
食当たりかな、なんて思ったけど、昨日の夜は菓子パンしか食べてないし、賞味期限も大丈夫だったはず。
「う……くぅっ……!」
でも、これはとても授業に集中できるレベルじゃないし、本当にちょっとヤバいかも。
(じ、時間は……!?)
バレないように必死に耐えながらお腹を丸めて、チラっと教室の時計を見上げる。
時計の時間を確認した瞬間、私は終わった、って思った。
(ふえぇっ!? あと20分もあるのぉ……っ!?)
たぶん、無理。
っていうか、絶対無理だコレ。
5分が限界かもしれない。
(うぅ、どうしよ……でも、恥ずかしい……)
授業中にトイレに行くのは、みんなの視線も集中するし、「あいつ生理か?w」なんて思われたらイヤだし、あー最悪、死ぬほど恥ずかしい。
「あんぅ……!?」
――――けど、もう限界!
こんなところで出すよりは――――しょうがないよね!
「――――せ、先生っ!」
ガタッ、と勢いよく椅子を引き、私は勇気を出して立ち上がった。
もう勢い任せの自暴自棄。
「ん?」「なんだ、なんだ」みたいな感じで、クラス中の視線が集中する。
カーッ、と顔が燃えるように熱くなるのを感じた。
「……ト、トイレ…行ってきます…」
うわー、死にたい。
掠れるような声を何とか出して、それから私は教室の後ろへ回りこんで、小走りで教室を飛び出した。
(お腹痛い! お腹痛い!)
心の中で泣きそうになりながら、私は女子トイレへと駆け込みダッシュ。
トイレは扉を入って左右に4つ。
全部空いていたので、私は1秒でも早く座れるように左手前のトイレに入り、勢いよく扉を閉めた。
「はぁ……はぁ……」
スルッ、とショーツを降ろし、スカートを捲りあげて便座に座りこむと、一気に排泄が押し寄せてきた。
あ、スマホ教室のカバンの中に置いてきちゃった。
まっ、いっか。まだ授業中だし。
―――プッ……スー……
体内の空気が少し抜けた後。
――――ポンッ!
すごく変な音と共に、カラダの中から何かがスッポリと出たみたい。
(な、何……いまの……?)
違和感バリバリの音がしたけど、なんかどこかで聞いたような……。
お腹の激痛から解放されてホッと胸を撫で下ろした私は、その音と感覚を不審に思って、自分のう◯ちを太ももの間から覗き込んで確認してみる。
そうしたらね、
「―――――ひっ!?」
また、あのう◯ちが出てた。
ピンク色の、ツルツルした、喋るう◯ち。
(えっ、やだっ、またピンクのう○ち……それじゃあ、今回もまた……)
「――――がぼっ、ぶへぇっ!」
「や、やっぱり喋った!?」
「がばっ、がばっ、おいてめぇ! また便器の中でしやがったな、汚ねぇ! クソッ!」
昨日と同じ口調の、昨日と同じう◯ちだった。
えっと確か呼び方は、『ウンP』。
――――絶対呼ばないけど。
っていうか、昨日間違いなく流したはずだよねっ!?
「がばっ、ごぼっ、次また便器でしやがったらウンコぶっかけるからなっ! クソぉっ!」
「そんなっ、だ、だって、う◯ちはトイレでするものじゃ……」
「うるせぇ! ――――ゴボッ! 俺はウンチじゃねぇ! ウンコだ!」
「私からしたらどっちも一緒だよぉ!」
「とにかく早く引き上げやがれ! 学校のトイレとかマジ汚ねぇ!」
「えええぇっ!? いやぁっ、無理無理っ!」
「ガタガタ言ってねぇでさっさとしろ! がばっ、ごぼごぼっ、俺が汚物になっちまう!」
私のお尻から出たものなんだから、汚物だよね!?
え、ちょっと待って、違うの?
思わず訊こうとしたんだけれど、目の前のう◯ちは怒りまくるばかりで、とても私もツッコミなんてできない状況だった。
「おらぁ! 俺が動けないからってナメてんだろ! 水で溶けたカラダをぶちまけるぞ!」
「ひぃぃぃっ、やります、やりますっ!」
学校のトイレで制服にう◯ち付くとか絶対イヤだ。
え、っていうか水に溶けるんだ……やっぱり絶対汚物だよね!?
とにかく制服を汚されるのとか怖すぎるので、私は気が引けながらも急いでカラカラッとトイレットペーパーを手に巻いた。
「おい、あとで手を洗えばいいだろうが! ってか俺は汚くねぇって言ってんだろうが!」
「す、素手はいやだよぉ!」
素手でう◯ちを触る?
しかも便器の中の?
無理無理無理無理。
私は分厚くトイレペーパーで巻いた手で、恐る恐る便座の中へと手を入れた。
そして渦巻き状のう◯ちのてっぺんの部分をちょん、と摘む。
「よしいいぞ、そのまま引き上げてくれ」
ムニッ、という弾力のある嫌な感触だった。
「……これ、引き千切れたりしない?」
「わからん! 早くしろ!」
「いやぁ、怖いよぅ……」
だからと言ってしっかり握って持ち上げるとかNGなので、そのまま先っぽを引き上げた。
「よしよし―――― ったくやりゃできんじゃねぇか! ってなんで鼻摘んでるんだ?」
「ご、ごめんなひゃい、ふい……」
あ、いけない。
臭いわけじゃなかったんだけど、自分のう○ちを掴んでるって思ったら、つい鼻を摘んじゃってた。
すかさず摘み上げた目の前のう○ちが、怒りの表情を露わにする。
表情ないけど――――。
「―――てめぇ! 俺のこと臭そうとか思ってやがるな! 俺を誰だと思ってやがる!」
ぷるんっ、ぷるんっ!――――――――
「いやあぁ! ごめんなさいごめんなさい! 揺れないでぇっ! 制服についちゃうぅ!」
「つかねえよっ!」
そんな風にう◯ちを持ちながら必死にう◯ちから逃げていると、ドンッ、と扉の開く音が聞こえてきた。
「――――っ!?」
(うそっ、誰か来たっ!?―――――)
ハッとなって、私は慌てて黙りこんだ。
耳をすませてみると、足音が近づいてくる。
どうしよう……。
授業中だからって油断してたけど、聞かれてない、よね?
すごくドキドキしたけれど、入ってきた生徒は特に何事もなく、普通に私の隣の扉に入ったみたいだった。
(……ふぅ、気付かれてないみたい)
胸を撫で下ろしながら、私はふとさっき驚いた拍子に何かを「ぎゅっ」と抱き締めたような気がしたことを思い出す。
(……えっ?)
――――むぎゅっ、むぎゅっ!
柔らかいものが、私の腕の中で潰れてる。
(あれ、なんだっけ、この柔らかいの……)
もちろん、私の胸なはずない。
(……ってことは……?)
そこでようやく私は思い出した。
―――思い出しちゃった。
今さっきまで、何を持っていたのかを。
(……っ!?)
ガタガタ、ぶるぶる……―――――。
恐る恐る腕で潰れてるものを目で確認。
そこには、ムニュリと潰れ、ほとんど首に触れそうになっている、桃色の物体。
「え……え……」
サーッと血の気が引いて行く感覚。
私の胸に抱き寄せられて潰れているのは、まさか……う、う、う……ん……!?
「―――――ぐへっ♡」
「―――いやああああああぁぁぁぁぁっ!」
思わず悲鳴をあげてしまった。
だってショックだったんだもの。
ビックリした拍子に、私自分のう◯ちを胸元でギュッと潰しちゃったんだよ。
その事実だけで、気絶していてもおかしくなかったと思う、うん。
「―――――な、なにっ!? どうしたの!?」
すると、隣から驚いたような声が当然のようにあがる。
(ひぃぃぃっ、やばっ、ば、ば、バレちゃうっ!?)
こんなのがバレたら――――。
私みたいなちょっと地味なJKが授業中にトイレで自分のう、う◯ちと喋ってるなんてことがバレたら……。
もう色々人生終わっちゃうよぉ。
バッドエンド確定じゃん。
(と、とりあえず、えっとえっと、どうしようっ)
っていうか、まずはとりあえず証拠隠滅だよねっ!?
そうだよね、ナイス閃きっ、私。
「………えいっ」
―――――ポチャンッ
「―――あ、てめぇ!」
私は何も言わずに便器の中にウンPを放り捨て、光の速さで「大」の方へとレバーを捻った。
「――――ごめんね、でも学校で出てくるからいけないんだよ」
「クソッ! 許さねぇ! またすぐに出て来てやるからなっ、クソっ、クソォォォォォ……―――――」
いや、できれば二度と出てこないでよ。
っていうか、あの人…あ、人じゃないか。
えーっと、あの……う◯ち。
あのう◯ち、どういう仕組みで私の中から出てくるんだろ?
考えると、ちょっと怖くなってくる。
だって、お腹の中にあの喋る桃色う○ちが入っているってことでしょ?
―――――ホラーじゃん、そんなの……。
でも、彼はアイドルの妖精さんなんだもんね。
う◯ちだけど。
「アイドルって、こういうもんなんだよね」
改めて、アイドルって大変なんだなぁって思った。
夢、だったんだけどなぁ。
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