【アイドルは私の夢☆】
私と「う◯ち」との、その馴れ初めの話をするね。
私のう◯ちが喋るようになったのは、確か高校二年の夏休みの頃だった。
いつもみたいに便秘気味で、それでお腹が張って痛くなって、ママにもらった便秘薬を飲んだ時。
便秘薬ってスゴいんだよ。
ものすごい勢いでトイレに行きたくなって、慌てて駆け込んで。
一瞬で出そうと思ったら、便座に腰掛けた瞬間にもう、いきなりポンッ! って出てきて。
やったー便秘薬すっごーい♪ ってなってたんだけど、
「―――おっす! 俺、ウンコって言うんだ、アイドルに宿る妖精だ!」
「―――っ!? きゃあぁぁぁぁっ!」
最初は怖すぎて絶叫しちゃった。
だって、いきなり喋り出すんだもん。
それに、色もこれまでとは違う、綺麗でツルツルなピンク色だったし。
そりゃ、最初は誰だってビックリするよね。
「うるせぇ! 静かにしろ! 誰かにウンコ見られてぇのか!?」
「――――ひっ!?」
う○ちにそう言われてハッとなった私は、慌てて口を手で覆い、ブンブン、と首を横に振った。
こんなう◯ち、家族に見られたらやばいし。
絶対に弟とかに見られたくなかったから。
「いいか、俺の話をよく聞け」
「は……はいっ」
う◯ちが喋ってるよぉ。
当時はそんな感じで、すごく頭の中、混乱してたと思う。
だって、普通ありえなくない?
私が出したう◯ちが、私に向かって命令してくるんだもの。
「てめぇに俺が宿ったってことは、今日からお前はアイドルだ」
「ア、アイドル…?」
その時は本当に何を言っているのか、わからなかった。
っていうかまぁ、今でもあんまりよく分かってないんだけど。
でも、アイドルに憧れていた私は、何となく嬉しくて、とりあえず流さずに話を聞いてみることにしたの。
あ、流さなかったのはトイレじゃなくて話の方ね、なんちゃって。
「そんで俺がてめぇを担当するプロデューサーだ」
「えぇ、う◯ちがプロデューサー!?」
「うんちじゃねぇ! ウンコだ! 『ウンP』って呼んでくれ」
「絶対イヤだよっ」
全然、意味わかんないう◯ちだった。
せっかく恥ずかしいから伏字にしてるのに、勝手に伏字取って言われちゃってるし!
「ったく面倒くせぇな……Pが嫌なら『ウンA』でいいぜ」
「『ウンA』さんじゃなくて、アイドルなら『運営』さんでしょ!?」
このう◯ち、さっきから私にウ、ウ◯コって言わせようとしてるだけだよね、立派なセクハラだと思う。
「っていうか、さっきからあなた、誰なんですか!?」
「だーかーらぁ、ウンコだって言ってんだろうが! 耳クソ詰まってんじゃねぇのか、クソ野郎が!」
「クソでも野郎でもないよぉ! ヒドいこと言わないでっ!」
ピンクでツルツルのう◯ちだから、顔があるのかよく分からないけど、さっきから口調が怖過ぎて泣きそう。
ちっ、と目の前のう◯ちは、舌打ちみたいな音を出した。
ものすごく機嫌悪そうで怖い。う◯ちだけど。
「とにかく今日からてめぇはアイドルだからな、分かったか」
「全然わかんないよ! なんでう◯ちが決めるの?」
「『うんち』じゃねぇ、『ウンコ』だっつってんだろうがぁ!」
「ひぃぃっ、ごめんなさいごめんなさいっ!―――――」
あまりの気迫に、私はトイレのドア、ギリギリまで後ずさって頭を下げた。
このう◯ち、本当に怖いよ……。
「はぁ~……」
う◯ちがため息吐いてる。
一瞬臭いが気になったけど、特に臭くはなかった。
う◯ちなのに不思議。
「さっきも言ったが、俺は『アイドルに宿る妖精』だ」
「それがおかしいよ! アイドルは可愛くてキラキラしてるはずなのに、なんでこんな妖精さんなの!? イメージと違いすぎるよぉ!」
「こんなとはなんだ! てめぇの物差しで勝手に勘違いしていただけだろうが!」
そう言ってう◯ちは、少し落ちついたようにコホン、と咳払いした。
破裂しちゃうんじゃないかと思って「ひっ」ってなったけど、大丈夫みたい。
「いいか、じゃあ教えてやるが……」
「うん……」
「ウンPだっ! 勝手に呼び捨てにしてんじゃねぇ!」
「えぇっ!? い、今のはただの相槌だよぉっ!?」
え、ちょっと待ってヤバくない!?
このう◯ち、すごく面倒くさいんですけど……。
「てめぇは、アイドルってのは、トイレで汚ねぇもん出したりすると思うか?」
「ううん」
トイレに行かない、とまでは思ってないけど、やっぱりアイドルのトイレってキレイなイメージだよね。
「―――だろっ? それは何故か、俺たちウンコが宿っているからだ」
えっ、なにそれ。
それじゃあ、もしかして。
「アイドルは、みーんなこういう、う◯ちをするってこと?」
「そうだ」
自信満々な表情で踏ん反り返るう◯ち。
表情作る顔も、反る体もないけど。
「だからアイドルは皆、汚ねぇ汚物を出したりしねぇんだ」
「え、でもだって……あなた、う◯ちでしょ。汚物じゃん……」
「ふざけんなっ! 汚物はウンチだろぉがっ! いいか、俺たち妖精は『ウンコ』だ、一緒にすんなっ!」
そう言って怒りながら、いきなり目の前のう◯ちがブルブルッと震え出した。
―――――もしかして、飛び上がってくるの!?
「ひぃぃぃぃぃっ、ごめんなさい、ごめんなさいっ! お願いだからこっち飛んで来ないでっ!」
「なんだその汚ねぇもん見る目はっ!」
「汚いじゃん!」
「汚なくねぇって言ってんだろが! てめぇ、いい加減クソまみれにすんぞ!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ! ホントやめてくださいっ!」
う◯ちが顔や服に付くとか絶対本当の本当に無理。
「とりあえず、俺をここから出してくれ。話はそれからだ」
「出す……?えっ、だってさっき私の中から出てきたんじゃ……」
「違うっ! 俺をこんな汚い便器の中に出していいと思ってんのか!? さっさとここから持ち上げやがれ」
「い、いやだよっ!?」
便器に出したう◯ちを取り出す?
っていうか持ち上げろって言った?
無理無理、そんなのできるわけないよ。
「なんだと、まさかお前、俺のことまだ汚ねぇウンチと一緒にしてんじゃねぇだろうな?」
「だ、だって……」
『う○ち』じゃないにしろ、結局ウ○コなんでしょ?
汚くないウ○コだったとしても、持ち上げるなんてできるわけないよね。
だいたい私は女子だしっ!
女の子だしっ!
ウ◯コでテンション上がる男の子じゃないんだから。
うん、そうだね。
やっぱり、ウ◯コは流さないとね。
「とりあえず、私は今日からアイドルって言うのは分かったから、私頑張るね」
「おう、飲み込みは早ぇな。早く俺を持ち上げろ」
そんな風にウン……『う◯ち』が言うのを無視して、私はトイレの『大』のボタンに手をかける。
一瞬、このまま流したら下水になってどこかで大問題になるかも、って不安が過ぎったけど、この時の私はもう冷静じゃなかったし、許してください。
「……流すね」
「あっ! おいっ、てめっ――――」
―――――ピッ
ジャアアアァァァァァ……ッ!
「やめr――――――ゴボボボボボボォォォォっ!」
物凄い声をあげながら、私のう◯ちはぐるぐる、ぐるぐる回って最後に一瞬だけ詰まりそうになりながらも、なんとかそのままパイプの中へと吸い込まれて行ってくれた。
――――ふぅ~……。
思わず深いため息。
「はぁ……な、なんだったの……?」
正直、最悪な気分。
昔からアイドルになりたいとは思っていたけど、まさかこんな汚いう◯ちが、アイドルの妖精で、プロデューサーだったなんて…。
ア◯マスやラブ◯イブで見てた夢がぶち壊しだよぉ。
――――でもっ。
「私がアイドルかぁ」
ちょっとだけ喜んでいる自分もいた。
「あ、そうだっ! 衣装とか考えなきゃっ♪」
それが、私と喋るう◯ちの出会い。
私がアイドルになったきっかけです。
え、話が意味不明すぎて、全然よく分からない?
そう、だよね。
アイドルのトイレ事情を知らない人は、たぶんそうだと思う。
だからこそ、私たちアイドルは、わざわざずっと隠してきているわけだから。
でも、アイドルの『ひみつ』はね、まだまだたくさんあるから、もう少しだけ私の話に付き合ってください☆
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